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化鳥(けちょう)

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-8-22 13:20:43 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语



     第十一

とりなの、母様おつかさん)とさういつて其時そのときわたしいた。
これにも母様おつかさんすこ口籠くちごもつておいでゝあつたが、
とりぢやないよ、はねへたうつくしいねえさんだよ)
うしてもわからんかつた。うるさくいつたらしまひにやおまへにはわからない、とさうおいひであつた、また推返おしかへしていたら、やつぱり、
はねへたうつくしいねえさんだつてば)
それで仕方しかたがないからきくのはよして、やうとおもつた、そのうつくしいはねのはへたものたくなつて、何処どこます/\ツて、せつツママいてもらないと、さういつてばかりおいでゝあつたが、毎日まいにち/\あまりしつこかつたもんだから、とう/\余儀よぎなさゝうなお顔色かほつきで、
鳥屋とりやまへにでもいつてるがいゝ
そんならわけはない。
小屋こやて二ちやうばかりくとすぐさかがあつて、さか下口おりくち一軒いつけん鳥屋とりやがあるので、樹蔭こかげなんにもない、お天気てんきのいゝときあかるい/\ちひさなみせで、町家まちやのきならびにあつた。鸚鵡あうむなんざ、くるツとしたつゆのたりさうな、ちい[#「ちい」はママ]さなで、あれでひとみうごきますね。毎日まいにち々々行つちやあつてたので、しまひにやあ見知顔みしりがほわたしかほうなづくやうでしたつけ、でもそれぢやあない。
こまはね、たけたかい、かごなかしたからうへんで、すがつて、ひよいとさかさはらせて熟柿ぢくしおつこちるやうにぽたりとおりてをつゝいて、わたしをばかまひつけない、ちつともけてくれやうとはしないでママあつた、それでもない。みんなちがつとる。はねへたうつくしいねえさんはないのッて、一所いつしよつたひとをつかまへちやあ、いたけれど、わらふものやら、あざけるものやら、かないふりをするものやら、つまらないとけなすものやら、馬鹿ばかだといふものやら、番小屋ばんごや媽々かゝ此奴こいつうかしてらあ、といふものやら、みんなけだものだ。
はねへたうつくしいねえさんはないの)ツていたとき莞爾につこりわらつて両方りやうはうから左右さいうでおうやうにわたし天窓あたまでゝつた、それは一様いちやう緋羅紗ひらしやのづぼんを穿いた二人ふたり騎兵きへいで――いたとき――莞爾につこりわらつて、両方りやうほうから左右さいうで、おうやうにわたし天窓あたまをなでゝ、そしてひきあつてだまつてさかをのぼつてつた、長靴ながぐつおとがぼつくりして、ぎんけんながいのがまつすぐにふたツならんでかゞやいてえた。そればかりで、あとはみな馬鹿ばかにした。
五日いつかばかり学校がくかうからかへつちやあ其足そのあし鳥屋とりやみせつてじつとつておくはうくらたななかで、コト/\とおとをさしてそのとりまで見覚みおぼえたけれど、はねへたねえさんはないのでぼんやりして、ぼツとして、ほんとうにすこ馬鹿ばかになつたやうながしい/\、れるとかへかへりした。で、とても鳥屋とりやにはないものとあきらめたが、うしてもたくツてならないので、また母様おつかさんにねだつていた。何処どこるの、はねへたうつくしいひと何処どこるのツて。なんとおいひでも肯分きゝわけないものだから母様おつかさんが、
(それでははやしへでも、うら田畝たんぼへでもつてておいで。何故なぜツて天上てんじようあそんでるんだからかごなかないのかもれないよ)
それからわたし、あの、梅林ばいりんのあるところまゐりました。
あの桜山さくらやまと、桃谷もゝだにと、菖蒲あやめいけとあるところで。
しかしそれたゞ青葉あをばばかりで菖蒲あやめみじかいのがむらがつてゝ、みづいろくろ時分じぶん此処こゝへも二日ふつか三日みつかつゞけてきましたつけ、小鳥ことりつからなかつた。からす沢山たんとた。あれが、かあ/\いてひとしきりしてしづまると其姿そのすがたえなくなるのは、大方おほかた其翼そのはねで、ひかりをかくしてしまふのでしやう、おほきなはねだ、まことにおほきつばさだ、けれどもそれではない。

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