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化鳥(けちょう)

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-8-22 13:20:43 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语


それからまたむかふからわたつててこのはしして場末ばすゑきたなまちとほぎると、野原のはらる。そこンとこ梅林ばいりんうへやまさくら名所めいしよで、そのした桃谷もゝたにといふのがあつて、谷間たにあひ小流こながれには、菖浦あやめ燕子花かきつばた一杯いつぱいく。頬白ほゝじろ山雀やまがら雲雀ひばりなどが、ばら/\になつてうたつてるから、綺麗きれい着物きもの問屋とひやむすめだの、金満家かねもち隠居いんきよだの、ひさごこしげたり、はなえだをかついだりして千鳥足ちどりあしとほるのがある、それははるのことで。なつになると納涼すずみだといつてひとる、あき茸狩たけがり出懸でかけてる、遊山ゆさんをするのが、みんなうちはしとほらねばならない。
このあひだたれかと二三にんづれで、学校がくかうのお師匠しゝやうさんが、うちまへとほつて、わたしかほたから、丁寧ていねいにお辞義じぎ[#「義」に「ママ」の注記]をすると、おや、といつたきりで、橋銭はしせんかないでつてしまつた。
「ねえ、母様おつかさん先生せんせいもづるい[#「づるい」はママ]ひとなんかねえ。」
まどからかほ引込ひつこませた。

     第二

「お心易立こゝろやすだてなんでしやう、でもづるい[#「づるい」はママ]んだよ。余程よつぽどさういはうかとおもつたけれど、先生せんせいだといふから、また、そんなことでわるつて、おまへにくまれでもしちやなるまいとおもつてだまつてました。」
といひ/\母様おつかさんつてらつしやる。
ひざまへちてた、ひとツのはう手袋てぶくろ格恰かくかう出来できたのを、わたしつて、てのひらにあてゝたり、かふうへツけてたり、
母様おつかさん先生せんせいはね、それでなくつてもぼくのことを可愛かあいがつちやあくださらないの。」
うつたへるやうにいひました。
かういつたときに、学校がくかうなんだからないけれど、わたしがものをいつても、こゝろよ返事へんじをおしでなかつたり、ねたやうな、けんどんなやうな、おもしろくないことばをおかけであるのを、いつでもなさけないとおもひ/\してたのをかんがして、すこふさいで俯向うつむいた。
何故なぜさ。」
なに、さういふ様子やうすえるのは、つひ四五日前しごにちまへからで、其前そのさきには些少ちつともこんなことはありはしなかつた。かへつて母様おつかさんにさういつて、何故なぜだかいてやうとおもつたんだ。
けれど、番小屋ばんごやはいるとすぐ飛出とびだしてあそんであるいて、かへると、御飯ごはんべて、そしちやあよこになつて、母様おつかさん気高けだかうつくしい、頼母たのもしい、温当おんたうな、そしてすこせておいでの、かみたばねてしつとりしてらつしやるかほて、なに談話はなしをしい/\、ぱつちりとをあいてるつもりなのが、いつかそのまんまでてしまつて、がさめると、またすぐ支度したくまして、学校がくかうくんだもの。そんなこといつてるひまがなかつたのが、あめ閉籠とぢこもつてさみしいのでおもしたついでだからいたので、
何故なぜだつて、なんなの、此間このあひだねえ、先生せんせい修身しうしんのお談話はなしをしてね、ひとなんだから、なか一番いちばんえらいものだつて、さういつたの。母様おつかさんちがつてるわねえ。」
「むゝ。」
「ねツちがつてるワ、母様おつかさん。」
もみくちやにしたので、吃驚びつくりして、ぴつたりをついてたゝみうへで、手袋てぶくろをのした。よこしはつたから、引張ひつぱつて、
「だからぼく、さういつたんだ、いゝえ、あの、先生せんせい、さうではないの。ひとも、ねこも、いぬも、それからくまみんなおんなじ動物けだものだつて。」
なんとおつしやつたね。」
馬鹿ばかなことをおつしやいつて。」
「さうでしやう。それから、」
「それから、※(始め二重括弧、1-2-54)だつて、いぬねこが、くちきますか、ものをいひますか※(終わり二重括弧、1-2-55)ツて、さういふの。いひます。すゞめだつてチツチツチツチツて、母様おつかさん父様おとつさんと、こども朋達ともだちみんなで、お談話はなしをしてるじやあありませんか。ぼくねむとき、うつとりしてるときなんぞは、みみとこて、チツチツチてママなにかいつてかせますのツてさういふとね、※(始め二重括弧、1-2-54)つまらない、そりやさへづるんです。ものをいふのぢやあなくツて、さへづるの、だからなにをいふんだかわかりますまい※(終わり二重括弧、1-2-55)ツていたよ。ぼくね、あのウだつてもね、先生せんせい、人だつて、大勢おほぜいで、みんな体操場たいさうばで、てんでになにかいつてるのをとほくンとこいてると、なにをいつてるのか些少ちつとわからないで、ざあ/\ツてながれてるかはおととおんなしでぼくわかりませんもの。それからぼくうちはししたを、あのウふねいでくのがなんだかうたつてくけれど、なにをいふんだかやつぱりとりこゑおほきくしてながひつぱつていてるのとちがひませんもの。ずツと川下かはしもはうでほう/\ツてんでるのは、あれは、あの、ひとなんか、いぬなんか、わかりませんもの。すゞめだつて、四十雀しじふからだつて、のきだの、えのきだのにまつてないで、ぼく一所いつしよすわつてはなしたらみんなわかるんだけれど、はなれてるからこえませんの。だつてソツとそばへつて、ぼく、お談話はなししやうとおもふと、みんなつていつてしまひますもの、でも、いまに大人おとなになると、とほくでてもわかりますツて、ちひさいみゝだから、沢山たんといろんなこゑはいらないのだつて、母様おつかさんぼくあかさんであつた時分じぶんからいひました。いぬねこ人間にんげんもおんなじだつて。ねえ、母様おつかさん、だねえ母様おつかさん、いまにみんなわかるんだね。」

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