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化鳥(けちょう)

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-8-22 13:20:43 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语



     第三

母様おつかさん莞爾につこりなすつて、
「あゝ、それでなにかい、先生せんせいはらをおちのかい。」
そればかりではなかつた。わたし児心こどもごゝろにも、アレ先生せんせいいやかほをしたなトおもつてつたのは、まだモすこ種々いろんなことをいひあつてからそれからあとことで。
はじめは先生せんせいわらひながら、ま、あなたが左様さうおもつてるのなら、しばらくさうしてきましやう。けれども人間にんげんには智恵ちゑといふものがあつて、これにはほかとりだの、けだものだのといふ動物だうぶつくはだおよばない、といふことを、わたし川岸かはぎしまつてるからつて、れいをあげておさとしであつた。
つりをする、あみつ、とりをさす、みんなひと智恵ちゑで、にもらない、わからないから、つられて、されて、たべられてしまふのだトかういふことだった。
そんなことはわたしかないでつてる、朝晩あさばんるもの。
はしさしはさんで、かはさかのぼつたり、ながれたりして、流網ながれあみをかけてうをるのが、かはなか手拱てあぐらかいて、ぶる/\ふるへて突立つゝたつてるうちはかほのある人間にんげんだけれど、そらといつてみづもぐると、さかさになつて、水潜みづくゞりをしい/\五分間ふんかんばかりもおよいでる、あしばかりがえる。そのあし恰好かくかうわるさといつたらない。うつくしい、金魚きんぎよおよいでる尾鰭をひれ姿すがたや、ぴら/\と水銀色すゐぎんいろかゞやかしてねてあがるあゆなんぞの立派りつぱさには全然まるでくらべものになるのぢやあない。さうしてあんな、水浸みづびたしになつて、大川おほかはなかからあししてる、そんな人間にんげんがありますものか。で、人間にんげんだとおもふとをかしいけれど、かはなかからあしへたのだと、さうおもつてるとおもしろくツて、ちつともいやなことはないので、つまらない観世物みせものくより、ずつとましなのだつて、母様おつかさんがさうおひだからわたしはさうおもつてますもの。
それから、つりをしてますのは、ね、先生せんせい、とまた其時そのとき先生せんせいにさういひました。
あれは人間にんげんぢやあない、きのこなんで、御覧ごらんなさい。片手かたてふところつて、ぬうとつて、かさかぶつてる姿すがたといふものは、堤坊どて[#「堤坊」はママ]うへに一本占治茸しめぢへたのにちがひません。
夕方ゆふがたになつて、ひよろながかげがさして、薄暗うすぐら鼠色ねづみいろ立姿たちすがたにでもなると、ます/\占治茸しめぢで、づゝととほい/\ところまでひとならびに、十人も三十人も、ちひさいのだの、おほきいのだの、みぢかいのだの、ながいのだの、一番いちばん橋手前はしてまへのをかしらにして、さかりどき毎日まいにち五六十ぽん出来できるので、また彼処此処あつちこつちに五六人づゝも一団ひとかたまりになつてるのは、千本せんぼんしめぢツて、くさ/\にへてる、それはちひさいのだ。だの、くさだのだと、かぜくとうごくんだけれど、きのこだから、あの、きのこだからゆつさりとしもしませぬ。これが智恵ちゑがあつてつりをする人間にんげんで、些少ちつとうごかない。其間そのあひだうをみんないう々とおよいでてあるいてますわ。
また智恵ちゑがあるつてくちかれないからとりとくらべツこすりや、五分ごぶ五分のがある、それはとりさしで。
過日いつかぢうたことがありました。
他所よそのおぢさんのとりさしがて、わたしとこはしつめで、えのきした立留たちどまつて、六本めのえだのさきに可愛かあい頬白ほゝじろたのを、さをでもつてねらつたから、あら/\ツてさういつたら、ツ、だまつて、だまつてツてこはかほをしてわたしめたから、あとじさりをして、そツとると、呼吸いきもしないで、じつとして、いしのやうにだまつてしまつて、かう据身すゑみになつて、中空なかぞらつらぬくやうに、じりツとさををのばして、ねらつてるのに、頬白ほゝじろなんにもらないで、チ、チ、チツチツてツて、おもしろさうに、なにかいつてしやべつてました。
それをとう/\つゝついてさしてると、さをのさきで、くる/\とつて、まだはげしくこゑしていてるのに、智恵ちゑのあるおぢさんのとりさしは、だまつて、鰌掴どぜうつかみにして、こしふくろなかねぢむで、それでもまだだまつて、ものもいはないので、のつそりいつちまつたことがあつたんで。

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