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化鳥(けちょう)

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-8-22 13:20:43 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语



     第九

一廻ひとまはりくるりとにまはつて前足まへあしをついて、棒杭ばうぐひうへつて、お天気てんきるのであらう、仰向あをむいてそらた。れるといまにくよ。
母様おつかさんうそをおつしやらない。
博士はかせしきりゆびさしをしてたが、くち[#「くち」は底本では「くゐ」]けないらしかつた、で、一散いつさんけて、だまつて小屋こやまへとほらうとする。
「おぢさん/\。」
きびしくんでやつた。追懸おひかけて、
橋銭はしせんいてらつしやい、おぢさん。」
とさういつた。
なんだ!」
一通ひとゝほりこゑではない、さつきからくちけないで、あのふくれたはら一杯いつぱいかたくなるほどみ/\していたこゑを、紙鉄砲かみでつぱうぶつやうにはぢきだしたものらしい。
で、あかはなをうつむけて、額越ひたひごしにらみつけた。
なにか」と今度こんど応揚おうやう[#「応揚」はママ]である。
わたし返事へんじをしませんかつた。それはおどろいたわけではない、こはかつたわけではない。鮟鱇あんかうにしてはすこかほそぐはないからなににしやう、なにるだらう、このあかはなたかいのに、さきのはうすこれさがつて、上唇うはくちびるにおつかぶさつてる工合ぐあいといつたらない、うをよりけものよりむしとりはしによくる、すゞめか、山雀やまがらか、さうでもない。それでもないトかんがえて七面鳥しちめんちやうおもひあたつたとき、なまぬるい音調おんちやうで、
馬鹿ばかめ。」
といひすてにしてしづんで帽子ばうしをゆりあげてかうとする。
「あなた。」とおつかさんがきつとしたこゑでおつしやつて、おひざうへ糸屑いとくづほそい、しろい、ゆびのさきでふたツはじきおとして、すつとまどところへおちなすつた。
わたしをおきなさらんではいけません。」
「え、え、え。」
といつたがぢれつたさうに、
ぼくなんじやが、うゝらんのか。」
だれです、あなたは。」とひやゝかで。わたしこんなのをきくとすつきりする、のさきにえるくわママないものに、みづをぶつかけて、天窓あたまからあらつておやんなさるので、いつでもかうだ、きはめていゝ。
鮟鱇あんかうはらをぶく/\さして、かたをゆすつたが、衣兜かくしから名刺めいしして、ざるのなかへまつすぐにうやうやしくいて、
「かういふものじや、これじや、ぼくじや。」
といつて肩書かたがきところゆびさした、おそろしくみぢかいゆびで、黄金きん指輪ゆびわふといのをはめてる。
にもらないで、くちのなかに低声こゞゑにおよみなすつたのが、市内衛生会委員しないえいせいくわいゐゝん教育談話会幹事きやういくだんわくわいかんじ生命保険会社々員せいめいほけんくわいしや/\ゐん一六会々長いちろくくわい/\ちやう美術奨励会理事びじゆつしやうれいくわいりじ大日本赤十字社社員だいにつぽんせきじふじしや/\ゐん天野喜太郎あまのきたらう
「このかたですか。」
「うゝ。」といつたときふつくりしたはなのさきがふら/\して、で、むねにかけた赤十字せきじふじ徽章きしやうをはぢいたあとで、
わかつたかね。」
こんどはやさしいこゑでさういつたまゝまたきさうにする。
「いけません。おはらひでなきやアあとへおかへンなさい。」とおつしやつた。先生せんせいめうかほをしてぼんやりつてたがすこしむきになつて、
「えゝ、こ、こまかいのがないんじやから。」
「おつりを差上さしあげましやう。」
おつかさんはおびのあひだへをおあそばした。

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