王子さまの
わたしはマンデに着くまえにもむろんマチアを
わたしはかれの手をとって強くにぎりしめた。
「マチア、もう死ぬまではなれないよ」とわたしは言った。
「ぼくはとうからそれはわかっていた」とかれはあの大きな黒い目で、わたしににこにこ
なんでもユッセルでさかんな
わたしたちは二人とも、なにを
マチアはにせもののしっぽだけならなにも心配することはないと言った。なぜなら売り手といよいよ
ユッセルに着いたのは五、六年ぶりであった。あれはヴィタリス親方といっしょで、ここで
わたしたちは町に着いて、あのときヴィタリスや犬ととまったことのある
「でもぜんたいおまえたち子ども二人で、
わたしたちはそこで、どのくらい金を持っているか、それをどうしてもうけたかということ、それからわたしが子どものとき世話になったシャヴァノン村のバルブレンのおっかあにおくり物をしておどろかせるつもりだということを話した。かれはするとひじょうに親切らしい
そのあくる日夜明けから町はごたごたにぎわっていた。わたしたちのとまっている
わたしたちはいきなり頭から着物をひっかぶって、六時には市場に着いた。
なんという美しい
でもわたしたちは
「ぼくはこれがいいと思います」とマチアは白い雌牛を指さしながら言った。
「ぼくはあのほうがいいと思います」とわたしは赤い雌牛を指さして言った。
「これがおまえさんたちのお
まったくこれはすばらしかった。マチアとわたしは、今度こそなるほどこれがいちばんいいと思った。
「三百フラン」とその男は答えた。
わたしたちのくちびるは下に下がった。ああ三百フラン。わたしは
そうなるとわたしたちは心配になり始めた。マチアもわたしも、ではろくでもない牛にちがいないと思った。
「もっとほかのを見ましょう」とわたしは
そのあいだにマチアは
「二百十フランで買おう」わたしは
「おまえさん、つなを持って来たか」と
「おまえさん、なわを持っているか」と
それで
これで
きょうは町に市場があるので、ひどくにぎわって、ほうぼうから人が集まってもいたから、マチアとわたしは
その夕方、マチアは四フラン。わたしは三フランと五十サンチーム持って帰った。七フラン五十サンチームのお金で、わたしたちはまたお金持ちになった。女中にたのんで
わたしたちは
そのあくる朝、わたしたちは太陽といっしょに起きて、シャヴァノン村に向かって出発した。わたしはマチアがあたえてくれた助力に、どれほど
わたしはその
この村にはいるまえにわたしたちはきれいな青い草の生えた所に来た。荷物をほうり出してわたしたちはそこで休むことにした。わたしたちは
「すこし待ってやりたまえ」とマチアが言った。
「だってきみ、雌牛は一日だって食べているんだぜ」とわたしは答えた。
「まあ、しばらく待ってやりたまえ」
わたしたちはもう
「ぼくは牛のためにコルネをふいてやる」と、じっとしていられないマチアが言った。「ガッソーの曲馬には、音楽の
かれはゆかいなマーチをふき始めた。
牛はとうとうわたしたちが通って来た
わたしたちがそこへ着いたとき、おおぜいの人間がもう集まっていた。そしてわたしたとが考えていたように、すぐに牛をわたしてはくれないで、どうして牛を手に入れたか、どこから牛をとって来たかをたずねた。
かれらはわたしたちが牛をぬすんだこと、そして牛は持ち主の所へかけて帰ろうとしたのだということを
役場を
「ぼくをぶってくれたまえ」とわたしたちだけになると、マチアが
「ぼくの耳をぶつか、どうでも気のすむようにしてくれたまえ」
「ぼくも
「ああ、ぼくはそれをずいぶん悪いことに思っている」かれはおろおろ声で言った。「かわいそうな雌牛、王子さまの雌牛」とかれは
そのときわたしはかれに、これはそんなにむずかしいことではないわけを話してなぐさめようとした。
「ぼくたちは
「でもそれを買った金までもぬすんだものだと言われたら」とかれは言った。「わたしたちはそれをもうけた
これはまったくであった。
それにさしあたりだれか牛を
「まあ、みんなが牛は養っていてくれるだろうよ」
「あしたたずねられたら、なんと言うつもりだ」とマチアが聞いた。
「ほんとうのことを言うさ」
「そうなれば、あの人たちはきみをバルブレンの手にわたすだろう。バルブレンのおっかあが一人きりだったら、あの人に向かってわたしたちの言うことがうそかどうか聞こうとする。そうなればもうあの人の
「おやおや」
「きみはバルブレンのおっかあとは長いあいだ
このおそろしい考えだけはついぞこれまでわたしも起こしたことがなかった。でもヴィタリス
「なぜきみはそれを先に言わなかった」とわたしは言った。
「だってつごうのいいじぶんには、そんな考えは起こらなかったからさ。ぼくはきみの
こう何事につけても悪いはうばかり見るのは、この暗い
「それから」とマチアはとび上がって、両うでをふり上げながら言った。「バルブレンのおっかあが死んで、あのこわいバルブレンのほうが生きていて、そこへぼくたちが行ったら、きっと
午後おそくなって、ドアが開かれ、白いひげを生やした
「こら
「それでよろしい」と
こう言ってかれは指でわたしをさし
「きみはもう一人の子を
わたしは
わたしはかれに
「それは調べることにしよう」とかれは答えた。「さてなんの
わたしは、それを
「その女の名は」とかれはたずねた。
「シャヴァノン村のバルブレンのおかみさん」とわたしは答えた。
「ああ、五、六年まえパリで
「まあでも……」
わたしはすっかり
けれどこんなことでまごまごしている
だがどうして
わたしはパリからヴァルセまで、それからヴァルセからユッセルまで、一スー一スーとこれだけの金を
「でもおまえ、ヴァルセではなにをしていた」とかれはたずねた。
それからわたしは、いやでもかれに
「ではおまえたち二人のうち、どちらがルミだ」とかれは声を
「ぼくです」とわたしは答えた。
「それがほんとうなら、おまえはその
わたしはかれがわたしたちに対してひじょうに
話をしてしまうと、わたしはほとんど優しくなっていたかれの
「わたしはユッセルへ、おまえの話の
「それから
「おまえたちに返してやる」
「ぼくの言うのはそうではないんです」とマチアが答えた。「だれか
「まあ、心配しなさんな」と
マチアは
「ああ、では
「それはいいとも」
わたしたち二人だけになると、わたしはマチアに、ほとんど自分たちが
「バルブレンのおっかあは生きているし、バルブレンはパリへ行っている」とわたしは言った。
「ああ、では『王子さまの
かれはうれしがっておどりをおどったり、歌を歌いだした。かれの元気につりこまれて、わたしはかれの手をつかまえた。カピはそのときまですみっこに
どうして、こうなると