生きた
いまや
わたしたちは生きながらうずめられて、地の下百尺(約三〇メートルだが、ここでは深いという意味)の
とつぜんわたしたちは手に
「マリウス。ああ、せがれのマリウス」
空気は息苦しく重かった。わたしは息がつまるように感じた。耳のはたにぶつぶついう音がした、わたしはおそろしかった。水も、やみも、死も、おそろしかった。
わたしたちの
みんなはあの小さいリーズにわたしの死んだことを
「どうもおれの考えでは、だれもおれたちを
「おまえさん、
「それはそうだよ」とガスパールおじさんがつぶやいた。
「思いちがいをしてはいけないよ。みんなもこちらへ
人びとはその仕事を仕上げるにどのくらいかかるかというとりとめのない
また
「ポンプが動いている」
これはいっしょの声で言われた。いまわたしたちの耳に当たった音は、電流でさわられでもしたように感じた。わたしたちはみんな立ち上がった。ああ、われわれは
カロリーはわたしの手を取って
「きみはいい人だ」とかれは言った。
「いいや、きみこそ」とわたしは答えた。
でもかれはわたしがいい人であることをむちゅうになって
けれどわたしたちは空に美しい太陽をあおぎ、地に楽しく歌う小鳥の声を聞くまでに、長いつらい苦しみの日を送らなければならなかった。いったいもう一度日の目を見ることができるだろうか。そう思って苦しい
「ルミのほうが身が軽い。あの子に長ぐつを
カロリーの長ぐつがわたされた。わたしはそっと土手を下りることになった。
「ちょいとお待ち」と「先生」が言った。「手を
「おお、でもだいじょうぶですよ。先生」とわたしは答えた。「ぼくは水に落ちても泳げますから」
「わたしの言うとおりにおし」とかれは言い
かれはしかしわたしを助けようとしたはずみに足をふみはずしたか、足の下の石炭がくずれたか、つるり、
たちまちわたしは暗黒の中に投げこまれた。そこにはたった一つの
ヴィタリス親方と
「しっかりおしなさい、先生」とわたしはさけんだ。「首を上に上げていれば助かりますよ」
助かると。どうして二人とも助かるどころではなかった。わたしはどちらへ泳いでいいかわからなかった。
「ねえ、だれか、声をかけてください」とわたしはさけんだ。
「ルミ、どこだ」
こう言ったのはガスパールおじさんの声であった。
「ランプをつけてください」
ランプが暗やみの中から
かれはもうたくさんの水を飲んでいて、半分
このふゆかいな出来事で、しばらくわたしたちの気を転じさせたが、それがすむとまた
わたしはひじょうにねむくなった。この場所はねるのにつごうのいい場所ではなかった。じきに水の中に
わたしが半分目が
「お休み、ぼうや」とかれはわたしの上にのぞきこんでささやいた。「こわいことはない。わたしがおさえていてあげるからな」
それでわたしは
わたしたちは
「先生、おまえの言いたいことを言えよ」とベルグヌーがさけんだ。「おまえ水をかい出すにどのくらいかかるか、
「しんぼうしろよ」と「先生」が答えた。「おれたちは食べ物なしにどれくらい生きられるか知っている。それでちゃんと勘定がしてあるのだ。だいじょうぶ、まに合うよ」
このしゅんかん、大きなコンプルーが声を立ててすすり
「神様の
「あいつを水の中にほうりこめ」とパージュとベルグヌーがさけんだ。
「じゃあ、おまえは
「おれは懺悔する、おれは懺悔する」と
「水の中にほうりこめ。水の中にほうりこめ」とパージュとベルグヌーが、「先生」 の後ろに
「おまえたち、この男を水の中にほうりこみたいなら、おれもいっしょにほうりこめ」
「ううん、ううん」やっとかれらは水の中に罪人をほうりこむだけはしないことにしたが、それには一つの
「そうだ、それが相当だ」と「先生」が言った。「それが公平な
「先生」のことばはコンプルーに下された
「おれはくい
やがてパージュとベルグヌーがさけびだした。
「もうおそいや、もうおそいや。きさまはいまこわくなったのでくい改めるのだ。きさまは一年まえにくい改めなければならなかったのだ」
かれは苦しそうに、ため息をついていた。けれどまだくり返していた。
「おれはくい
かれはひどい
「おれはのどがかわいた」とかれは言った。「その長ぐつを
もう長ぐつに水はなかった。わたしは立ち上がって取りに行こうとした。けれどそれを見つけたパージュがわたしを
「もうあいつにはかまわないとやくそくしたのだ」とかれは言った。
しばらくのあいだ、コンプルーはのどがかわくと言い
「あいつ石炭がらをくずしてしまうぞ」
「まあ、自由だけは
かれはわたしがさっき
水はわたしたちのいる所まではね上がった。わたしは下りて行くつもりでのぞきこんだが、ガスパールおじさんと「先生」がわたしの手を両方からおさえた。
半分死んだように、
時間が
一度こんなこともあった。わたしが半分うとうとしていると、「先生」がゆめを見ているように、ほとんどささやくような声で言っていることを聞いてびっくりした。かれは雲や風や太陽の話をしていた。するとパージュとベルグヌーが、とんきょうな様子でかれとおしゃべりを始めた。まるで
ふと、わたしは明かりをつけようと思った。油を
明かりを見ると、はたしてかれらはやっと
しばらくしてかれらはまたみょうなふうに話をしだした。わたし自身も心持ちがなんだかぼんやりとりとめなく
わたしたちはまたランプをつけた。ベルグヌーがみんなのために
しばらくしてわたしはまた土手をすべり下りた。すると水が
「行っといで、ルミ。おれの時計をやるぞ」とガスパールおじさんがさけんだ。
「先生」はしばらく考えて、わたしの手を取った。
「まあおまえの考えどおりやってごらん」とかれは言った。「おまえは
わたしは「先生」とガスパールおじさんにキッスをした。それから着物をぬぎ
とびこむまえにわたしは言った。
「みんなでしじゅう声を立てていてください。その声で見当をつけるから」
わたしは道をまちがえたのだ。
わたしはちがった
するととつぜんまた声が聞こえた。わたしはやっとどちらの道を曲がっていいかわかった。後へ十二ほどぬき手を切って、わたしは右のほうへ曲がった。それから左へ曲がったが、かべだけしか見つからなかった。レールはどこだろう。わたしが正しい
そのときふとわたしは、レールが
わたしはいやでも引っ返さなければならなかった。
わたしは急いで声をあてに
「帰っておいで、帰っておいで」と「先生」がさけんだ。
「道がわからなかった」とわたしはさけんだ。
「かまわないよ。もうトンネルができかけている。みんなこちらの声を聞いた。こちらでも向こうの声が聞こえる。じきに話ができるだろう」
わたしはすぐとおかに上がって耳を立てた。つるはしの音と、
もうまもなく
とつぜん
もうわたしの正気は
また目を開くと昼の光であった。わたしたちは大空の下に出たのだ。同時にだれかとびついて来た。それはカピであった。わたしが
「ルミ。おお、ルミ」
それはマチアであった。わたしはかれににっこりしかけた。それからそこらを見回した。
おおぜいの人がまっすぐに、二列になってならんでいた。それはだまり返った
二十本のうでがわたしを受け取ろうとしてさし
二日ののち、わたしはマチアと、アルキシーと、カピを