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白髪小僧(しらがこぞう)

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006/11/9 9:26:15 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语


 藍丸王が何気なく、クリクリ坊主から振り子の無い木の鈴を受け取ると、こは如何いかに、急に唇や舌がしびれて仕舞って声さえ出なくなった。次に瘠せ女から白紙の書物を受け取ると、今度は眼が見えなくなった。赤ん坊から月琴を受け取ると鼻が利かなくなってしまった。じじから笛を受け取るととうとう耳までつんぼになって、どっちが西やら東やら、自分がどこに居るのやら、全く解からなくなってしまった。
 このていを見た四人の魔者は、又もや嬉しそうに藍丸王の周囲まわりを踊り廻わって――
「藍丸王はとうとう死んだ。
 生きていながら死んで終った。
 この世に居ながらこの世に居ない」
 面白面白面白い。
 俺等おいらの主人の石神様は
 眼も見え耳も聞こえていたが
 広い荒野あれののその只中に
 見るもの聞くもの何にも無くて
 たった一人の淋しさつらさ
 こらえ切れずに天地を恨み
 吾が身を怨んで死んでしまった」
 残る怨みのその一念が
 眼玉に移って女に化けて
 口に残って坊主になって
 鼻に移って赤児に化けて
 耳に残ってじじいになって
 今はこの世で藍丸王に
 昔の主人の淋しさつらさ
 思い知らせる時が来た」
 花が咲いても紅葉もみじをしても
 風が吹いても時雨しぐれが来ても
 見えもしなけれあ聞こえもしまい。
 えも渇きもせぬその代り
 どんな御馳走ごちそう貰ったとても
 味もわからず香気においまい」
 鞭にたれて血がみ出ても
 痛くもなければ悲しくもない。
 音もも無い不思議な身体からだ
 この世に居ながらこの世を知らぬ。
 夜か昼かは愚かな事よ
 我が身の在り家も我が身に知らぬ
 世にも淋しいあわれな生命いのち
 世界の初めの石神様が
 闇へと生れて闇へと帰る
 たった一人の淋しい心
 思い知ったか。思い知れ」
 と口々に唄って踊っていたが、やがて赤ん坊が一声ギャッと叫ぶと一所に、四人は一度に燃え立つ火の中へ飛び込んでしまった……と思う間もなく燃え上る火の中から、一人の少年が髪毛かみのけの色から衣服きものまで藍丸王そっくりの姿で、藍丸王の眼の前に踊り出した。見ると今までの藍丸王はいつの間にか見すぼらしい乞食の白髪小僧の姿に変ってしまって、緑色の房々した髪の毛も旧来もとの通り雪のように白くなっていた。
 この有様を見た新規の藍丸王は、忽ちカラカラと笑って、直ぐに傍の焚火の中へ右手を突込んで掻きまわしながら、高らかに呪文を唱えた――
「世界中の何よりも赤い
 世界中の何よりも明るい
 世界中の何よりも美しい
 火の精、血の精、花の精――
 その羽子はねが羽ばたけば
 またたく間に天の涯
 すぐに又土の底
 一飛びに駈け廻る――
 そのあかい眼の光りは
 夜も昼も同様に
 千里万里どこまでも
 居ながらに皆わかる――
 声という声、音という音
 皆聞いて皆真似る――
 声の精、言葉の精、歌の精――
 赤い鸚鵡出て来い」
 と叫びながらその手を火の中から引き出すと、そのこぶしの上には一匹の赤い鳥が乗っかっていた。その赤い鳥は藍丸の王宮から逃げ出して今大勢の兵隊に一日がかり探されているの赤鸚鵡と寸分違わなかったが、只その眼玉ばかりは今までと違って、紅玉ルビーのように又は火のように、あたりを払って輝やいていた。
 それを左の手に据えて、新規の藍丸王はつかつかと白髪小僧に近寄りながら――
「どうだ、藍丸王。見えたか、聞こえたか、解かったか。ハハハハハ。見えまい、聞こえまい、解かるまい。併し無駄だろうが云って聞かせる。云うまでもなく俺は最前の四人の魔者が化けたのだ。石神の怨みの固まりだ。今まで赤鸚鵡を種々いろいろに使って、やっとお前をここまで連れ出して来たのだ。気の毒だがお前の姿は俺が貰った。只生命いのちだけは助けてやるから、その代りいやしい乞食姿になって、何も見ず、何も聞かず、食べず云わずがずに、世界中をうろ付いておれ。そのに俺は王に化け込んで、勝手気儘きままな事をるのだ。
 ああ、東の山に月が出かかったようだ。どれ。そろそろ出かけようか」
 と二足三足踏み出したが、又引きかえして来て――
「待て待て。ここでは顔付きがまるで同じだからどっちが本物か解からない。ついでにこうしておいてやる」
 と云いながら傍に消え残った真赤な燃えさしを取り上げて、ニコニコ笑っている白髪小僧の顔へいきなりぐっと押し付けて、大きな十文字の焼けあとを付けた――
「ハハハハ。こうしておけば、よもや本当の藍丸王と気付く者はあるまい。おお。馬よ、来い来い」
 と招き寄せると、不思議やすくんで石のようになっていた筈の馬が、今は易々やすやすと動き出して直ぐに王の傍へ来た。王はそれにヒラリと飛び乗って、赤鸚鵡の眼の光りを便りに、森の外へと駈け出した。あとに残った盲目めくらの唖の白髪小僧は、最前の焼けどは熱くも何ともなかったと見えて、赤くれ上ってひっつった顔のまま、ニコニコ笑いながら四ツの道具を抱えて、どこをあてともなく、この森を彷徨さまよい出た。
 話し変って、最前四方にわかれて、赤鸚鵡を探しに行った紅矢や兵隊達は、何も見つからぬ内に日が暮れてしまったので、急いで約束の樫の木の森に来て見ると、今度は他の者は皆揃ったが肝要かんじんの王様が居ない。これは大変だと皆一度に馬に飛び乗って、口々に藍丸王様藍丸王様と叫びながら暗い山の中を駈け出すと、そのうちに南の方の立木の間から、真赤に光る松明たいまつが見えて来た。
 ところが不思議や四十人の騎馬武者が乗っている馬は、この光りをチラリと見るや否や一度に立ち竦んで一歩も前へ進まなくなった。打ってもたたいても動かない。蹴ってもあおってもどうしても、石のように固くなっている。
 皆は驚き慌てて、これはどうした事と騒ぎ立てたが、中にも紅矢は吃驚びっくりして――
「皆の者、気を付けよ。あの光りは怪しい光りだぞ。事にると魔者かも知れぬぞ。皆馬から降りて終え。弓を持っている者は矢をつがえよ。剣を持っている者はさやを払え。あれあれ。だんだん近付いて来る。皆紅矢にいて来い。相図をしたらば一時に矢を放して斬りかかれ」
 と叫んだ。声に応じて四十人の武者さむらいは、一度に馬から飛び降りて、二十人は弓を満月のように引き絞り、あとの二十人は剣を構えて眼の前に近付いて来た光る者にあわや打ちかかろうとした。ところがこの時遅くの時早く、紅矢は又もや一声高く――
「待て。粗相するな。王様だぞ」
 と叫んだ。それと一所に、向うから来る者は赤い鳥を左のこぶしに据えて馬の上でニコニコ笑いながら帰って来る藍丸王だという事がわかって、兵隊共は皆一度に矢を外し剣を納めて、地面じべたの上にひれ伏した。中にも紅矢はホッと一息安心すると一所に、今までと打って変った鸚鵡の眼の光りに驚いて、どういう訳かと怪しんだ。
 その時に王は皆の前に馬をとどめて、左の拳を高く差し上げながら――
「皆の者。よく見よ。これが今まで探していた赤鸚鵡という鳥だぞ。今までこの山の神様の使わしめで有ったのだぞ。自分は今までの谷底の杉の森に行って神様にお目にかかって、この鳥がいろいろの不思議な役に立つ事を教えてもらっていたのだ。皆の者、よく見ておけ」
 と云いながら鸚鵡に向って――
「ウウウウ。月が出たぞ」
 と云い聞かせると忽ち今までの赤いまばゆい光りが消え失せて、四方が真暗になった。その代り東の方の林の間には、黄色い大きなお月様が、まんまるくさし昇っていた。
 皆の者は夢に夢見る心地がして、互にその不思議な術を驚き合いながら、この時やっと動くようになった馬に乗って、王のうしろに従って、月の光りを便りに王宮へ帰って行った。

     八 象牙ぞうげの机

 せ藍丸王は狩場から宮中へ帰って、晩の御飯を済ますと直ぐに、家来に云い付けて、自分のへやに新しい椅子を四ツ運ばせて、象牙の机の周囲まわりに並べさせた。それからお傍の者を遠ざけて自分独りになると、入り口の扉を固く閉めて、かんぬきを入れて、真暗になった中で一声高く――
「鸚鵡。鸚鵡。赤鸚鵡」
 と叫んだ。
 その声の終るか終らぬに、忽ちへやの隅から真赤な光りが輝き出して、赤鸚鵡はさも嬉しそうに羽ばたきをしながら、へやの真中の机の上に来たが、その眼の光りでへやの中を見るとこは如何いかに……。今までこのへやには藍丸王唯一人しか居なかった筈なのに、今見ると最前の森の中に居た四人の化け物――じじと、女と、赤んとクリクリ坊主とが、四ツの椅子に向い合って、ちゃんと腰を掛けていた。
 その中でお爺さんが真先に皺枯しゃがれ声で口を利いた――
「どうだ、赤鸚鵡、嬉しいか。嬉しいか。いよいよこの国は俺達おらたちのものになった。これから何でも見たい、聞きたい、話したい、嗅ぎたい放題だ。ところでこれからどうすれば、この国に大騒動を起させて、珍しい事や面白い事に出会でっくわす事が出来るか。赤鸚鵡よ、考えてくれ。お前は今の事ばかりでなく、行く末の事までも少しも間違わずに考える事が出来るのだから。先ず俺は石神の耳から現われたのだから、何でもかんでも聞くのが役目だ。何卒どうか面白い話を沢山聞かせてくれい」
 と云った。するとその横に座っていた青い瘠せ女は直ぐにその言葉を打ち消した――
「イヤ。わたしは石神の眼から生れたもので、何でもかでも見るのが役目です。何卒どうぞ早く面白いものが見たい。赤鸚鵡よ、早く面白い珍らしいものを見せておくれ」
 瘠せ女がこう云い切ってしまわぬうちに、今度は向側むかいがわに居た、赤膨れの赤んが甲走った声で――
いやだ。いやだ。イケナイイケナイ。私から先だ私から先だ。私は香気においぎたい。花だの香木だのの芳香においが嗅ぎたい。早く早く」
 と叫んだ。すると直ぐ横に居たクリクリ坊主も負けていず、頓狂とんきょうな声で――
「ドッコイ待った。俺が先だ。石神の舌から生れた俺こそ、真っ先に美味うまいものを頂戴せねば相成らぬ」
 と云い張った。四人はこうしてしばらにらみ合いの姿で黙っていたが、赤鸚鵡はこの様子を見て奇妙な声を出して、ケラケラと笑いながら云った――
「耳の王。眼の王。鼻の王。舌の王。よく御聞きなされよ。よく御味おあじわいなされよ。どなたが先という事はない。どなたが後という事もない。
 皆様一同いっしょにアッと御驚おんおどろき遊ばすものを近い内に御覧に入れます。
 貴方がたはこの世界の初め、石神の身体からだから出た三つの宝物、白銀しろがねの鏡と宝石の蛇と私の役目をお忘れになりましたか。
 私は生れ付いて知っている魔法でもって、世界中の事を見たり聞いたりしまして王様方にお話し申すのが役目で御座います。又兄弟の白銀の鏡は、そんな面白い有様を王様に御目にかけるのが役目で、それから宝蛇奴たからへびめは、そんな面白い出来事の初まるようにするのが役目で御座います。
 今白銀の鏡と宝蛇は、南の国の多留美たるみという湖の底に沈んでおりますが、その中で宝蛇は、貴方方四人が一人の藍丸国王となって、初めてこの国に御出おいで遊ばしたその最初の御慰おんなぐさみに、世にも美しい怜悧りこうな、それこそ王様が吃驚びっくり遊ばすような御妃を一人、御話し相手として差し上げたいと思いまして、私に探してくれと頼みましたので御座います」
 これを聞くと坊さんは横手を打って感心をした――
「成る程、これはよい思い付きであった。わし等の主人の石神様が初めてこの世にお出で遊ばした時に、第一番に御困り遊ばしたのは、一人も話し相手の無い事であった。もしもの時一人でも御話し相手があったならば、あんなに淋しがりは遊ばさなかったであろう。してその妃は見つかったか」
「はい、三人見つかりました」
「してその名は何と云うのだえ」
「年は幾つだ」
 とあとの三人が畳みかけて尋ねた。
「はい。第一番に見つけましたのは、紅木大臣の姉娘で、紅矢べにやの妹の濃紅こべに姫と申しまして、年は十六。温柔おとなしい静かな娘で御座います。この娘はこの間真実ほんとの藍丸王様が御妃に遊ばす御約束を、兄の紅矢と遊ばしたので御座いますが、もし王様がこの娘を御妃に遊ばしたならば、この国はいつでも泰平で、王様はこの世の果までも、御位みくらいに御出で遊ばす事が出来るで御座いましょう」
「何だ、その濃紅姫を妃にすると、この国はいつも静かに治まるというのか。イヤ、そんな静かな温柔おとなしい娘では、話し相手にしてもさぞ面白くない退屈な事であろう。俺達はそんな女は嫌いだ。それにこの国がいつまでも静かでは詰らぬ。何でも何か大騒動おおさわぎが起って、珍らしい事や危ない事や不思議な事が、引っ切りなしに始まらなくては駄目だ」
 とお爺さんは頭からはね付けてしまった。
 これを聞くと赤鸚鵡は、さも困ったらしく首をかしげて黙り込んでしまった。そうしてしばらくの間何か考えている様子だから、四人の者は待ち遠しくなって――
「これ赤鸚鵡。それではあとの二人の娘はどんな女だ」
「早く聞かせておくれな」
「どこにるの」
「何をているのか」
 と口を揃えて尋ねた。
 赤鸚鵡はこうき立てられると仕方なしに答えた――
「はい。それでは申し上げますが、あとの二人は二人共、この世に又とない賢い美しい娘で、一人は紅木大臣の末娘美紅みべにと申し、今一人は南の国に在る多留美という湖のかたわらに住む藻取もとりという漁師の娘で、名を美留藻みるもと申します。けれどもその二人の内どちらが王様の妃になるかという事が私にわかりませぬ。それで考えているので御座います」
「何……どちらか解からぬ」
「はい。その二人は、どちらも顔付きから智恵や学問や背恰好せかっこう、髪の毛の数まで、一分一厘違わぬので御座います。で御座いますから、どちらが王様の御妃になる運を持っておる女なのか、今では全く区別みわけがつかないので御座います」
「フーム。ではしまいになればわかるのか」
「ハイ。けれども王様の御命の尽きる迄はわからずにおしまいになるだろうと思います。何故なにゆえかと申しますと、もし藍丸王様がその娘のどちらかわかりませぬが御妃にお迎い遊ばすと、どうしても王様の御命は来年中に、丁度その御妃の素性がおわかりになる少し前にお果てになりますし、私や鏡の生命いのちも、それと一所に尽きてしまうからで御座います。その代りその間は毎日毎日不思議な話や珍らしい物語の詰め切りで、濃紅姫と千年御一所に御暮し遊ばすよりもずっと面白う御座います」
「ふむ。それは成る程面白かろう。けれどもその面白い出来事の根本もとになるその妃の素性がはっきりわからないではつまらないではないか。折角、今この世に王となって現われて面白い事を見聞きしながら、その事の起りがわからないというのは何にしても残念な事だ。折角の面白い事も楽しみが半分になってしまうであろう。これ、赤鸚鵡。どうかしてその妃の素性だけを知る事は出来ないか。美留藻か美紅かどちらかという事がわかる工夫はないか」
「はい。それは当り前から申しますれば到底出来る事では御座いませぬが、只一ツここに私が世にも不思議な魔法を心得ておりまする。
 その魔法を使う事を御許し下されますれば、王様がこの世を御去り遊ばしてのちの事までもはっきりとおわかりになる事が出来るので御座います。そうすれば王様のお妃が美留藻か美紅かという事もやがておわかりになる事と思います」
なに、俺達がこの世を去っても。それは可笑おかしい話ではないか。俺達がこの世を去れば又もとの森に帰ってこの眼を閉じ、この耳をふさいで、この鼻から呼吸いきずにしっかりと口を閉じて、じっと焚火たきびにあたっていなければならぬではないか。何も見る事も聞く事も出来ないではないか」
「イエイエ。それが出来るので御座います。私もまたこの世では殺されながら、この世の事をくわしく見たり聞いたりして王様に御伝え申し上げる事が出来るので御座います」
「何だ。それではお前も俺達も生きているのと同じ事ではないか」
「はい。死にながら生きているので御座います」
「フム。それは不思議な魔法だ。してその魔法というのはどんな事をるのだ」
「私が今から行く末の事をすっかり考えてお話し致すので御座います。皆様が眼をつむってそのお話しを聞いておいで遊ばせば、本当に御自分がその場においでになってその事を見たり聞いたりしておいで遊ばすのと同じ事で御座います」
 これを聞くと四人は手をって感心をた――
「成る程、それは巧い法だ。お前がたった今の事からずっとあとの事まで考えて、それをすっかりここで話す。それを俺達が聞いていれば、どんな恐ろしい危い事でも安心して面白がっておられる。そんな危なっかしい妃を迎えて生命いのちおとすような事があっても、根がお話しだからちっとも差し支えはない。そののちのちの事までもすっかりわかる。妃の素性もわかるに違いない。成程、返す返すもよい工夫だ。では今から直ぐに話してくれ。四人一所に聞いていようから」
「一体これからどんな事が始まるのか」
「嬉しい事か。悲しい事か」
「楽しい事か。恐ろしい事か」
「早くその魔法を使ってくれ」
「待ち遠しくて堪らない」
 と四人は口を揃えて頼んだ。
 けれども赤鸚鵡は暫くは話しを初めなかった。じっと耳を澄まし眼を光らし、遠くののちの事を考えている様子であったが、やがて羽根づくろいをして静かに奇妙な声で話を初めた。
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   第二篇 水底の鏡


     九 湖の秘密

 この藍丸国は四つの国にわかれておりまして、東の方を日見足国ひみたるこくといい、西の国を夜見足国よみたるこくといい、北を加美足国かみたるこくといい、南の方を宇美足国うみたるこくといって、それぞれその国の名を名前にした王様が治めているので御座いますが、藍丸王はその四人の王の上の王様で、四ツの国を合わせて一つの藍丸国と称えているので御座いました。
 又藍丸国の北と西は、はてしない沙原さばくで囲まれていて、南と東側はどこまでも続いた海になっていますが、中にも南の宇美足国には湖や河が沢山あって、商売の盛んな処で御座います。その湖のうちで一番広い、多留美という湖のかたわらに住んでいる漁師で、名を藻取もとりという爺さんがおりました。お神さんと小供二人を早く亡くして、今では末の一人娘の美留藻みるもというのが大きくなるのを、何よりの楽しみにして仕事に精を出していましたが、美留藻はまことに美しい娘で、その上に村一番の水潜りの名人だと近郷近在の評判になっておりました。そうして誰がその婿むこになるだろうと、方々で種々いろいろ噂をしていましたが、やがて美留藻が年頃になると、その噂は一ツになって、隣り村の宇潮うしおという漁師の二番目の息子で、これは水潜りも上手だが、取りわけて横笛が名人で、お母さんの身体からだの中から鉄の横笛を握って生れて来たという評判の、香潮かしおという若者が、一番似合った婿であろうという事にまりました。
 この噂はすぐに本当になりました。両方の間に或る世話好きの男が這入りまして、相談をしますと、両方の両親も、本人同志も喜んで、承知をして、はや今年の秋の末には、婚礼をするという事にまりました。
 両方の親達や親類や又は香潮や美留藻の喜びは申すまでもありませぬ。村同志の人々も皆その婚礼の日が来るのを楽しみにして今か今かと待ちかねていましたが、最早もはやその日まで三週間しかないという時になって、大変な御布告おふれが藍丸王の御言葉だといってこの湖の岸に伝わりました。その御布告はこうでした。
「王様はこの頃世に珍らしい赤い鸚鵡おうむという鳥をおとらえになった。その鸚鵡という鳥の話で、この多留美の湖の底に白銀しろがねで出来た大きな鏡という宝物が沈んでいるという事が解かった。その鏡というものは自由自在に人の姿を写し取るもので、大昔世界の初めに出来た石の神様の胸から現われ出たものだが、今度王様が是非その鏡が御入り用だとおおせ出された。だからこの湖の縁に住む者のうち誰でも、水潜りの上手な者が水底みずそこの鏡を取って差し上げねばならぬ。その鏡は湖の真中の一番深い処に沈んでいるのだからもとより並大抵の者では取れぬが、併し首尾よくこの役目をつとめて水底の鏡を取って来たものには、男ならば金の舟、女ならば銀の舟を一そう御褒美ごほうびに下さるとの事だ。誰でもよい、王様のためにこの鏡を取りに行く者は無いか」
 この御布告おふれを、美留藻と香潮が住んでいる村の間の、丁度中程に在る魚市場で、役人が大勢の人々を集めて申し渡した時に真先に――
「それはわたしが取って参りましょう」
 と願い出たものは誰あろう、水潜りにかけては村一番と評判の美留藻でした。そうしてそれと一緒に、美留藻の許嫁いいなずけの香潮も美留藻と共々に鏡を取りに行きたいと申し出ました。
 これを聞いた役人は躍り上らんばかりに喜んで、今までこの湖のふちをぐるりと布告ふれてまわったが、まだ二人のような勇ましい青年わかもの少女むすめは一人も居なかったと千切ちぎりましたが、とにかくそれでは今から直ぐに支度をして、明日あすにも取りに行くようにと申し渡して、やがて都の方へ帰りました。村の者の喜びも一通りではありませぬ。何しろこの大きな湖のふちで、この二ツの村より他にこの大役を引き受ける処が無く、しかもその引き受けた者は、村第一の立派な青年わかものと、村第一の美しい少女むすめですから、皆は最早自分達が取りに行くよりもずっと勢い付いて、直ぐに支度に取りかかりました。その中でも美留藻のお父さんは取りわけ大威張りで――
「どうだ。俺の娘と婿殿を見ろ。えらいもんだ。二人で行けばどんな深い海に沈んだ者でも、直ぐに見つけるに違いない。又どんな恐ろしいうおが来ても大丈夫だ。二人共魚よりよく泳ぐのだから。ああ嬉しい。俺の娘と婿を見ろ。えらいもんだ。豪いもんだ」
 と無性に喜び狂うておりました。
 村人は先ず沢山の湯をかして、二人の身体からだきよめました。それから髪を解かして、身体からだと一所に新らしい布で包みました。そして新らしく作った喰べものを喰べさせて、新規に作った布団ふとんの中に、静かに二人を寝かしました。そうしてあくる朝、まだ太陽の出ないうちに種々いろいろ準備したくをすっかり整えまして、一ツの船には布で巻いた二人の潜り手、それからもう一ツの船には長い綱を積み、それから村中有りりの船を皆、沢山の赤や青の藻で飾り立てまして、おかの方から吹く朝風に一度にさっと帆を揚げますと、湧き起るときの声と一緒にへさきを揃えて、沖の方へと乗り出しました。
 折柄風は追手おってになり波は無し、舟は矢のようにはやく湖の上をすべりましたから、間もなくおかは見えなくなって、正午ひる頃には最早十七八、丁度湖の真中程まで参りました。そこで皆帆を巻き下して、船と船とをすっかり固く繋ぎ合わして、どんな暴風雨あらしが来ても引っくり返らないようにして、二人の潜り手が乗っている船と、綱を積んでいる船とを真中に取り囲みました。この時二人は身体からだに巻いてあった布を取って、各自てんでに綱を一本ずつ身体からだに結び付けますと、船の両側から一時に、水煙みずけむりを高く揚げて、真青な波の底に沈みました。
 その中で美留藻は香潮よりも余程水潜りが上手だったと見えまして、香潮よりもずっと先に水を蹴って、銀色の泡を湧かしながら、底深く沈んで行きましたが、沈むにつれて四周まわりが次第に暗くなって、今まで泳いでいたうおは一匹も見えず、その代り今まで見た事もない、身体からだ中口ばかりのうおだの、眼玉に尻尾しっぽを生やしたようなうおだのが泳いでいます。しまいにはとうとう真暗闇になってしまって、遠くから蛍の火のように光る者が見えて来て、だんだんはっきりと傍へ寄るのを見ますと、人間の頭や、鳥の足や、狼の尻尾のような種々いろいろの形をした魚で、それが方々で青い提灯ちょうちんのように光ったり消えたりしまして、何だか様子が物凄くなって来ました。美留藻は恐ろしさの余り、よっぽど引き帰そうかと思いましたが、又考え直しまして――
「こんなに気が弱くては仕方がない。あたしはこの間の夢が本当ほんとか嘘か、たしかめに来たのではないか。わざわざお役人様に願って、の石神の胸から出た鏡が、本当にあるのか無いのか、見に来たのではないか。もし鏡が本当にこの湖の底にあって、その上にの石神の歌の通り、宝蛇が見付かれば、いよいよこの間の夢は本当の夢で、妾は夢の中の美留女姫の生れ変りで、行く末は女王になれるのではないか。
 そうしてあの面白い、石神の話しの続きがわかるのではないか。このまま止めて引っ返しては何にもならない。妾は矢張りもとの漁師の娘になって、面白い事、楽しい事は一ツも見る事も聞く事も出来なくなるではないか。妾は死んでも引き返す事は出来ない。そしてもし妾が女王になるならば、ここでうおに喰われるような事はあるまい。もし女王になれないのならば、一層いっその事喰われて死んでしまった方がいい。何でもでも運だめしだから、このまま行けるだけ行って見よう」
 と勇気をふるい起こしてなおも底深く沈み入りました。すると又あたりの様子が変って来て、何の影も見えなくなり、水は死んだ人の肌のように冷たく、静かに、動かなくなりましたから、その恐ろしさ、気味の悪さ。かえって最前の怖い形をしたうおが居た方が、余程淋しくなくていいと思った位でした。
 けれどもそのうちにそこも通り越したと見えまして、はるかの底に、何か美しく光るものが見えて来ましたから、嗚呼ああ嬉しい、あれこそ鏡の置いて在る処に違いないと、なおも水をき分けて潜って行きますと、やがてそこら中が眼のめる程美しく、明るくなって来ました。見ると湖の底の深い、き通った緑色の水の中に、なめらかな光沢つやを持った藻が、様々の色の花を着けて茂り合っていて、その間をまぶしい光りを放つ魚が、金色銀色の泡を湧かしながら、右往左往にヒラヒラと泳ぎまわり、中には不思議そうに眼玉を動かしながら、美留藻の顔をのぞきに来たり、または仲よさそうに身体からだをすり付けて行くのもあります。
 そのうちに湖の底と見えて、沢山の宝石が一面に敷き並んで、色々の清らかな光りを放っている処へ来ました。
 何しろ美留藻は生れて初めて、こんな不思議な美しい処へ来たのですから、感心のあまり暫くは夢のように、恍惚うっとりと見とれていましたが、又鏡の事を思い出しまして、斯様かような美しい処に隠して在る鏡というものは、どんな美しい不思議な宝物であろう。早く見付けたいものだ、と思いながら、又もや長い深い藻を掻き分け、魚を追い散らして、宝石の上を進んで行きますと、間もなく向うの一際美しい藻の林の間に、チラリと人間の影が見えました。さては香潮さんが最早来ているのかと思いまして、急いでその方へ足を向けますと、向うでも気が付いたと見えて、このほうへ急いで来る様子です。そのうちにだんだん近寄って参りますと、香潮と思ったのは間違いで、の夢の中で見た美留女姫に寸分違わぬ、凄い程美しいお姫様ひいさまがたった一人、静かに歩いて来るのでした。美留藻は今更にその美しさに驚いて思わず立ち止まりますと、向うも美留藻の姿を見付けて、驚いたような顔をして歩みを止めました。美留藻はこれは屹度きっと夢の中の美留女姫が現われて、妾に鏡のを教えにお出でになったに違いない。そうして妾は矢っ張り旧来もとの通りの美留藻で、お姫様でも何でもなかったのだと思いまして、あまりの恥かしさに顔を手で隠しますと、先方むこうでも顔に手を当てました。自分の真似をされて、美留藻はいよいよ恥かしくなって、宝石の上にペタリと座りますと、先方も亦ペタリと座ります。オヤと思いながら立ち上って向うを見ますと、向うも矢張り立ち上ってこのほうを見ていました。試しに両手を動かして見ますと、向うでも動かします。足を踏みますと先方むこうも踏みます。
 さてはと思って近寄って見ますと、これがまぎれもない白銀の鏡で、今まで美留女姫と思ったのは自分の姿が向うに映っているのでした。
 美留藻は驚いた余りに、我れを忘れて、あっと叫ぼうとしましたが、その拍子ひょうしに冷たい水が口の中に這入りましたので、又やっと自分が湖の底に居るのに気が付きました。そうして手足をぶるぶると震わせながら、眼の前の不思議に見惚みとれて、恍惚うっとりとしてしまいました。美留藻は今までいやしい漁師の娘で、自分の姿なぞを構った事は一度も無く、殊にこの国では昔から、鏡というものを見た者も聞いた者も無く、つまり自分の姿を見たのはこれが初めてでしたから、驚いたのも無理はありませぬ。
 扨はこれが妾の姿か。妾は矢張り美留女姫であったのか。妾はこんなに美しかったのか。こんなに気高い女であったのか。漁師の娘なぞというさえ勿体もったいない。女王と云った方がずっとよく似合っているこの美しさ、気高さ、優しさ。まあ、何というあでやかさであろう。そうして妾は矢張りの夢の中の書物で見た通りに、女王になるのであったかと思うと、最早嬉しいのか恐ろしいのか解からずに、そのまま気が遠くなりまして、宝石の上に座り込んで、一生懸命気をしずめました。
 扨やっと気が落ち付いてから、又もや鏡の傍へ差し寄って、つくづくと自分の姿に見とれましたが、見れば見る程美しくて、とてもこの世の人間とは思われませぬ。こんな綺麗な容色きりょうを持ちながら、こんな気高い姿でありながら、もしの夢を見なければ、彼の低い暗い家の中に住んで、あの泥土を素足で踏んで、なまぐさうおを掴むのを、自分の一生の仕事にるところであったのか。姿は美しいとはいえ、又笛は名人とはいえ、どうせ只の漁師のせがれの、の汚い着物を着た香潮の妻になって、つまらなく暮すのが自分の身の上だったのか。嗚呼ああ、勿体ない。勿体ない。この鏡や宝石を海の底に沈めておくよりも、まだずっと勿体ない事だ。どうかして妾は妾に似合ったずっと気高いお方の処へお嫁に行って、の絵の通りに女王になって見たいものだ。藍丸国の天子様の御妃になって、この姿をもっと美しく気高くして、国中の人達に見せびらかしたいものだ。思えばこの鏡は世界中の女のうちで、妾が一番最初に自分の姿をうつしたのだから、もしかしたら妾をそういう身分にするためにここに沈んで、妾を待っていたのかもしれぬ。いや、屹度そうなのだ。それに違いない。そうだそうだと、忽ちの内に気が変りました美留藻は、最早もう女王になった気で腰に結んだ縄も何も解き放して、又もや鏡を覗きながら莞爾にっこと笑ったその美しさ、物凄さ。あたりに輝いていた宝石の光りも、一時に暗くなる程で御座いました。その時に鏡の上からぬらぬらと這い降りて来て、美留藻の髪毛かみのけの中に潜り込んだ一匹の小さい蛇がありました。その蛇は身体からだ中宝石で出来ていて、その眼は黄玉の光明ひかりを放ち、紅玉ルビーの舌をペロペロと出していましたが、この蛇が美留藻の紫色の髪毛かみのけの上に、王冠のようにとぐろを巻いて、きっと頭をもたげますと、美留藻は扨こそと胸を躍らせまして、今はの石神の物語の赤い鸚鵡と、鏡と、蛇の話しはいよいよ夢でなく本当に在る事で、しかも三ツ共妾が誰よりも先に見付けたのだ。つまりは妾が女王になるその前兆まえしらせに違いないと思い込んで、嬉しさの余りに立ち上って鏡のまわりを夢中になって躍りまわっていました。

     十 生きた骸骨

 ところが一方は香潮かしおです。
 香潮は美留藻みるもよりも潜るのが下手だったと見えまして、余程美留藻よりおくれて沈んで行きましたが、そのうちに香潮も亦、最前さっき美留藻が通ったような恐ろしい処にさしかかりました。すると今度は形の恐ろしいものばかりではありませぬ。ふかだのさめだのは素より、身体からだ中に刃物を並べたしゃちだの、とげうろこを持った海蛇だのがたかって来て、烈しい渦を巻き立てて飛びかかりましたから、香潮は一生懸命になって、拳固でなぐり飛ばし、足で蹴散らして、追いつ追われつ底の方へわけ入りましたが、そのうちにやっとこんなうおの居る処から逃げ出した時には、もう身体からだがグタグタになって、胸が苦しくて眼がくらんで、死にそうになっていました。けれどもここで引き返しては、村の人々や、両親や、兄弟や、美留藻に対してもまりが悪いし、第一王様の御命令にそむく事になりますから、ここは一番死んでも行かねばならぬと、固く思い詰めまして、夢中で手足を動かして行きました。その苦しさ、切なさ。その苦しみのために香潮の身体からだは見る見る肉が落ちて、顔は年寄りのようにせこけてしまいました。そうしてとうとう底まで行きつかぬうちに気が遠くなって、手も足も動かなくなったまま、ずんずん沈んで行きまして、やがて鏡の傍の宝石の上に落ち付きました。
 これを見付けた美留藻は、最前さっきならば驚いて直ぐにも駈け寄って助け上げるところですが、今ははやすっかり気が変っていましたから、そんな事はしませぬ。香潮の顔を一目見ると、あまりの変りように愛想あいそをつかしまして、いよいよこんな鬼のような顔をした者の妻となる事は出来ないと思いました。
 そうしてここで香潮に捕まっては、逃げて行く事も出来ぬし、女王になる事も出来ぬ。どうしたらよかろうと鳥渡ちょっと困りましたが、又気を落ち付けて傍へ寄って見ますと、全く死んだように見えましたから、ほっと一息安心をしまして、何かうなずきながらそっと香潮を抱き上げて、鏡の前に寄せかけました。
 それから最前さっき自分が解き棄てた綱の端を見付けて、香潮の身体からだを鏡にグルグル巻きに縛ってしまいますと、その綱を三度強く引いて、上で待っている人々に引き上げてくれと相図をしましたが、自分はそのまま藻を押し分けて、水底みずそこを伝って、どこかへ逃げて行ってしまいました。
 美留藻が引いた三度の相図は、舟の上に両方の綱を持って待っていた、藻取の手にはっきりと伝わりました。それっというのでり抜きの力の強い若者が四五人、バラバラと駈け寄って綱に取り付いて、一生懸命引き初めましたが、こは如何いかに。綱はピンと張り切ったまま、一寸ちょっとも上へ上がって来ませぬ。これではいかぬと又四五人綱に取り付きましたが、それでも綱は動きませぬ。それではというので今度は船の上に、かねて用意の車を仕掛けて、それに綱を引っかけて二三十人の者が力を揃えて巻き上げにかかりましたら、やっと二三寸ずつ綱が上がり初めました。占めたというので気狂きちがいのように勇み立った藻取と宇潮の音頭取りで、皆の者は拍子を揃えてえいや曳やと引きましたが、綱は矢張り二三寸ずつしか上りませぬ。そうして不思議な事には、最早もう鏡を見付けて、綱を結び付けたら用事は済んでいる筈の香潮も、美留藻も、波の上に影さえ見せませぬ。そのうちに短い秋の日は、とっぷりと暮れてしまいました。
 今まで最早もう香潮が上がって来るか、最早もう美留藻が浮き出すかと、一心に海のおもてを見つめていた親や身内の者共は、最早もういよいよ二人共に、死んだものと諦めるより他に、仕方がなくなりました。
 二人の両親の歎きは素より、村の者共の悲しみと驚ろきは一通りではありませんでした。いくら水潜りが上手でも、こんなに長い事水の底に居て生きておられる道理はありません。
 けれどももしや船と船との間に、浮かみ上っているのではあるまいか。又はもしや悪いうおに喰われたとしても、せめて髪毛かみのけ位浮き上がりそうなものだ。いや、死んでいないから浮き上らないのだ。いや、死んでいても浮き上らないのだろう。

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