神社の前の米俵(こめだわら)
ある日、太郎とチロは遊びつかれて、海岸の草原の上に寝ころんで、うっとりしていました。日の光がやわらかくさして、海がさーっ、さーっと、優しい音をたてていました。 白い波が巻きかえしてる砂浜が、ずーっと続いてる、その向こうの、松林から、何か黒いものが二つ、ぽつりと出てきました。それが、だんだん、非常な早さで、こちらへやって来ます。 それを、太郎はぼんやりながめていました。二つの黒いものは、しだいに大きくなって、海岸の草原をつたって、なおやって来ました……。二頭の馬でした。馬に乗った人達でした。太郎は、夢を見てるような気持ちがしました。もう近くへ来ました。二頭とも立派な、栗毛の馬で、先のには、女が乗り、後のには男が乗っていました。ふたりとも、黒っぽい洋服を着、長い靴をはき、細い鞭(むち)を持っていました。鞭や手綱(たづな)には、何かきらきら光るものがついていました。 馬は足をゆるめて、たったったっ……と、ゆっくり、太郎のそばを通りかかりました。すると、先の女は、そんなところに太郎が寝そべってるのに、初めて気がついて、びっくりしたようすで、ぴたりと馬を止どめました。そして、じろじろ見ていましたが、ふいに、馬から飛び下りて、太郎のそばにやって来ました。 「まあ……」 チロの方を、じっとのぞき込みました。 「まあ、かわいい猫……」 女は後を向いて、何か合図をしました。男も馬から下りて来ました。 太郎はそれまで、ぼんやりそのふたりをながめていました。これまで見たこともないような、立派な馬、よその人らしい男と女、その美しいみなり、ことに、洋服を着てる女……。そのふたりが今、じっとチロのほうをのぞきこみましたので、太郎はびっくりして、そこに座ってチロを抱きかかえました。 「ほんとにかわいいこと。まっ白で、そして、金目銀目(きんめぎんめ)で……」 太郎は、なおしっかり、チロを抱きしめました。ふたりの男と女は、何かささやきあって、そして太郎とチロとを見くらべました。しばらくそのままで、誰も黙っていました。馬はのんきに草を食べています……。 やがて、見知らぬ女は、なおのぞきこんできました。 「それ、あなたの猫ですか」 太郎は黙ってうなずきました。 「それでは、ねえ、坊ちゃん、お願いがありますの……。それを、私にくださいませんか。お礼は、どんなにでもしますから……」 太郎はびっくりして、強く頭をふりました。 「私にくださいね。どんな[#「どんな」は底本では「どんで」]お礼でもしますから」 女はポケットから、手にいっぱい銀貨を取り出して、差し出しました。太郎は頭をふりました。女は次に、きらきら光るナイフを差し出しました。次には、金の鎖のついてる万年筆……次には美しい金時計……。 「いやだ、いやだ、いやだ」 そう叫んで、太郎はいきなり立ち上がって、チロをかかえて、逃げ出しました。 一生懸命に走りました。しばらくして、振り返って見ると、あの男と女が、遠く、海岸の上に、馬の手綱(たづな)をひかえて、まだこちらを見送っています。太郎はまた走りだしました。 うちに帰って、ほっと息をつくと、太郎はチロの頭をなでてやりました。 「だいじょうぶよ、ねえ、チロ……誰が来たって、どんなことがあったって、ぼくはおまえを、よそにやったりなんかしないよ。おまえも、人に盗(ぬす)まれたりなんかしちゃあいけないよ、ねえチロ……」 チロは頭をすりつけて、ニャーオ……と鳴きました。 けれど、誰も、チロを盗みに来る者もなく、たずねてくる者もありませんでした。
それから、三日目の朝不思議なことが起こりました。家のそばの神社の前に、美しい米俵(こめだわら)が十四―五、三角形に積み重ねてあります。米がいっぱい詰まって、きれいにくくりあげられてる、ま新しいものです。 それを見つけて、太郎は、おじいさんを呼んできました。 「ぼく、びっくりしちゃった。誰がしたんでしょう」 「なるほど、奇特(きとく)なことだ。いまに、その人がやって来るかもしれない……」 神主をしているおじいさんは、手をたたいて、丁寧(ていねい)に拝んで、戻って行きました。 いつの間にか、チロも出てきて、米俵を駆けのぼったり、駆けおりたりして、遊び始めました。それを見てると、太郎も、おもしろくなりました。俵と俵とのすきまからのぞくと、望遠鏡でのぞくようです。俵の山の上にのぼると、いい気持ちで、遠くまで見渡せます。朝日の光が差してきて、新しい俵の匂(にお)いがします……。 太郎はチロといっしょに、俵の山を乗り越えたり、周りをぐるぐる廻ったり、隠れんぼうをしたりして、遊びました。 近くの木には、雀(すずめ)がたくさん来ていました。太郎とチロが、俵の陰に隠れていますと、やがて、一匹の雀(すずめ)が、俵の上に飛んできて、チッチッと鳴きます。と、すぐに、後から後から、ほかの雀も下りて来ます。時をはかって、チロをさっと放してやると、チロは俵(たわら)の上に飛び上がりますが、雀の方が早く、ぱっと逃げたあとです。 遊び疲れると、太郎とチロは、俵の上に寝そべって、うとうととしました。それから、また雀の声に目を覚しては、いろんなことをして遊びました。
「太郎や、太郎や……」 呼ばれて、気がついてみると、おじいさんが、向こうから手招きをしていました。 太郎はチロを抱いて、家に戻って行きました。すると……せんだって、チロをねだったあの女の人が、今日は、しとやかな和服(わふく)姿で、おじいさんの前に座っています。 おじいさんは話してきかせました。 「この方が、しばらくチロを借りたいとおっしゃるんだよ。お宮に米を供(そな)えてくださったのは、この方だ。その気持ちがわしの気に入った。いろいろお話を聞いてみると、チロを借りたいと言われるのも、もっともだ。そして、チロを借りている間、おまえも一緒に来てくれとおっしゃるんだ。チロをやってしまうのではない、貸して上げるんだよ。どうだい、おまえ、一緒に行ってあげますか」 太郎は、おじいさんの顔と女の人の顔とを見くらべて、しばらく考えこみました。 「チロと一緒なら、行ってもいいけれど……なんでも、好きなことをしていいの?」 女の人の目が、ぱっと大きく光りました。 「ええ、よろしいですとも、なんでも、好きなようにしてください。では、来てくださいますね、チロちゃんと一緒に……ね、来てくださいね」
金銀廟(きんぎんびょう)の話
太郎とチロが行った家は、さほど遠くではありませんでした。 海岸に沿った広い道を、自動車は飛ぶように走ります。岬(みさき)を二つまわって、その向こうの町のはずれ、小高い山のふもとに、二階建ての家がありました。 大きな家で日本室や洋室が、いくつもありました。主人の松本さん夫婦のほかに、下女(げじょ)や下男(げなん)や馬……そして、一番奥の洋室に、変なふたり……。 ほんとに、変な人達でした。太郎はそこに連れて行かれた時、びっくりしました。 かたすみに、立派な長椅子(いす)の上に、十歳(とお)ばかりの女の子が座っていました。肩のあたりまでの長さの髪を、宝石のついた、留金でとめ、空色の洋服をつけ、白い絹の靴下をはいていましたが、全体が、ほっそりしていて、口もあまりきかず、からだもあまり動かさず、まるで人形のようでした。 反対のかたすみには、支那(しな)服を着た、大きな男がいました。顔は平たく、長い口髭(くちひげ)をはやしていて、頭がひどく禿(は)げていました。 その男が、チロを抱いてる太郎を見ると、つかつかと立ってきて、低くおじぎを[#「おじぎを」は底本では「おじきを」]しました。 「おう、よく来ました」 そしてチロの方へ、大きく開いた両手を差し出しました。 「おう、白いきれいな猫……金の目……銀の目……おう、よく来ました」 それからチロを抱きとって、部屋の中を歩きだしました。 「これ、名前、何といいますか」 「チロです」と、太郎は答えました。 「チロ……チロ……よい名前だ……チロチロ……」 そして彼はもう、チロだけしか相手にしませんでした。 部屋の中には人形や毬(まり)や汽車や、馬や猿(さる)や熊(くま)など、いろんなおもちゃがありました。彼はそれをとってきて、チロに見せました。チロはテーブルの上にじっとしていましたが、赤い人形の絵が描いてある大きなガラス玉を見ると、ひょいと片手を出し、それから匂(にお)いをかぎ、またちょっと片手を出しました。ガラス玉は、テーブルから落ちてころがり、チロも跳(と)び下(お)りてその玉にじゃれ始めました。 男はひどくうれしがって、ほかのガラス玉やゴム毬などを、いくつも転がしました。 チロはあっちこっち駆けまわっています。 女の子は、やはりじっと座ったまま、チロを見ていました。その長椅子の前に、毛皮のついた小さなスリッパがぬぎ捨ててありました。それに、チロがとびついてじゃれかかりました。 「こら、お嬢さんのスリッパを、なんだ」 男はそう叫んで、追っかけました。チロは逃げました。男はなお、追っかけました。四つばいになって、テーブルの下をくぐったり、椅子(いす)の下に頭をつっ込んだりしましたが、チロのほうがすばしこくて、つかまりません。男はいきりたってきて、ぱっととびつこうとしますと、それがちょうど、小さなテーブルの下で、つまずいて転び、テーブルはひっくりかえり、上にのってた花瓶(かびん)が、大きな音をたててこわれました。 とび起きた男は、ものすごい顔をしていました。チロはもうスリッパも打ち捨てて、部屋のすみっこにちぢこまっていましたが、男はその方をにらみつけて、獣(けもの)がほえるような声をたて、両の挙(こぶし)を握りしめ、ぶるぶる震えて、今にもとびかかりそうです。 はっとして、太郎はチロの前に立ちふさがりました。じっとしていた女の子も、とんで来ました。 男の顔はしだいにゆるんできました。それから、彼は、がっくりと椅子(いす)に腰(こし)をおろしました。 「ああ、私悪い、私悪い。チロ悪くない。私悪い」 そして彼は、しょんぼりした目つきをして、何度も頭を下げました。 女の子がにっこり笑って、太郎の方を見ました。太郎も笑って見せました。二人はチロをかばうつもりで、一緒にくっついて立っていたのです。そしてなんだか、急に親しい友達になったような気がしました。 「おじさんの、悪い癖(くせ)よ、またかんしゃくをおこして……」と、女の子が言いました。 男は何度もうなずきました。そしてチロの方を優しい目で見やって、きまり悪そうに微笑(ほほえ)みました。
太郎は、支那(しな)服の大きな男と、洋服の少女と、大変仲よくなりました。 ただ、その二人がどういう身分の人か、さっぱりわかりませんでした。松本さんの奥さんにきいても、よく教えてもらえませんでした。ふたりとも中国人だが、日本名前で、男の方はキシさん、少女のほうはチヨ子と、言われていました。 そのうちにお話してあげます、と、奥さんはそう言うきりで、意味ありげに、微笑(ほほえ)むのでした。 二人とも、あまり外に出ませんでした。それを、太郎はよく誘い出しました。 広い松林(まつばやし)が、庭にとりこんでありまして、そこで気持ちよく遊べました。チロも一緒に遊びました。三人ともチロを大変かわいがりました。 それにまた、太郎はキシさんから、馬に乗ることを教わりました。厩(うまや)に馬が二頭(とう)いまして、キシさんはその一頭を引き出しては、いろんなことを教えてくれました。何でも知っていました。えらい人のようでした。 ところが、ある日の夕方、松の梢(こずえ)に小鳥の巣を探しながら太郎が歩きまわっていますと、向こうの、椿(つばき)の茂みの陰から、彼を呼ぶものがあります。行ってみると、キシさんでした。 「太郎さん、これ、よくできた、ね」 どこから取ってきたのか、ねばねばした赤土で、大きな猫をこしらえてるのでした。手を泥だらけにして、にこにこ笑っていました。金貨と銀貨とが一枚ずつ、両方の目に入れてあります。 「金の目……銀の目……ね、よくできた」 そして彼は、さも大事らしく、声をひそめて言いました。 「あなたとチロのおかげで、お嬢さん元気になった。私うれしい。これから、だんだん、願いごとかなう」 「願いごとって、なあに?」 と、太郎はたずねました。 「それ、大事なこと……まあ、見ていてください。この猫、生かしてみせます」 そして彼は、赤土の大きな猫の前に屈んで、両手を胸に握り合わして、何か口の中で唱えました。しばらくすると、急に立ち上がって、両手を頭の上にさし上げ、それからまた屈んで、頭を垂れ、両手を組み、そんなことを何度もくり返し、そしてじっと猫の方を見つめました。 「それ、生きた、動いた。ね、動いた」 太郎は、ばかばかしくなりました。赤土の猫が生きて動く……そんなばかなことがあるものですか。 「動きなんかしないよ」と、太郎は言いました。 「よろしい。今度は動く」 キシさんはまた、前のようなことをくり返しました。禿(は)げた頭が赤く、顔も赤くなって、一生懸命にやっています。もう、うす暗くなりかけていて、松林の中はしーんとしています。じっと見ていると、赤土の猫が……じりじり、前のほうに動きだして……。 太郎は目をみはりました。すると、それはやはり、赤土の猫でした。彼は頭を振りました。無理に言いました。 「明日、明るい時でなくっちゃ、わからないや」 「よろしい、明日、します」 二人は約束しました。太郎はびくびくした気持ちであくる日を待ちました。 ――あんな人だから、何か魔法でも知ってるのかもしれない。いや、赤土の猫が動く、そんなばかなことがあるものか。でもさっき、少し動いたような気もした……。 太郎はいろいろ考えあぐみました。キシさんの禿(は)げた赤い頭が、大きく大きくなっていくようなのを、何度か夢に見ました。
あくる朝、太郎はキシさんと一緒に、庭の奥にやって行きました。松林の中は、すがすがしく、朝日の光が差していました。 ところが、まあ……赤土の猫は、むざんにも、何度かに踏みにじられて、ぺしゃんこなひとかたまりの泥となり、金貨と銀貨とが、その中で光ってるだけでした。 キシさんは、呆然(ぼうぜん)とそれを眺(なが)めました。そして、よろよろと松の木にもたれかかり、今にも泣き出しそうでした。 太郎もぼんやりたたずんでいました。 そこへ、チヨ子がチロをあやしながら、やって来ました。キシさんは両手を差し出しました。 「おう、お嬢さん、いけないことある。私悲しい」 「どうしたの」 「これ、これ、この猫……」 キシさんは、踏みつぶされてる赤土の猫を指し示しました。 「それが、どうしたの」 「これ、わたくし作って、金銀廟(きんぎんびょう)にかけて、占(うらな)いました……」 「まあ、これがそうなの?」 チヨ子は、じっとキシさんの顔を見ておりましたが、ふいに、わっと泣きだして、キシさんの胸にすがりつきました。 「おじさん、ごめんなさい。ああ、あたしどうしよう……おじさん……。あたしね。さっき、チロをあやして遊んでいるとき、それにつまずいて、それから、踏みつけてみると、赤土でしょう、しゃくにさわったから、踏みつぶしてやったの……。なんにも知らなかったのよ。ごめんなさい。ねえ、ごめんなさい」 「それでは、あなた、踏みつぶしたですか。この猫、ほんとに、あなた、踏みつぶしたですか……。おう、いけない。そんなこといけない。金銀廟の猫……」 「だって、あたし、なんにも知らなかったの。ああ、どうしよう」 キシさんはそこにしゃがみこみ、チヨ子はその膝にとりすがり、そして二人とも泣いています。 太郎には、さっぱりわけがわかりませんでした。赤土の猫じゃないか……それを。 「金銀廟の猫って、なんですか」 キシさんは、初めて太郎に気がついたかのように、びっくりしたようすで太郎を眺め、それから深くため息をついて、そして話してきかせました。
満州(まんしゅう)に近い蒙古(もうこ)の山奥に、玄王(げんおう)という偉い人がいました。その地方を平和に治めて、立派な国をうち建てようと思っていました。その玄王(げんおう)に、ひとりの小さなむすめがありました。玄王は、まずむすめによい教育を受けさせたいと思って、かねて知りあいの日本人で、大連(だいれん)に大きな貿易店をひらいてる人に、むすめを頼み、李伯将軍(りはくしょうぐん)といわれる強い人をつけてやりました。その日本人の世話で、玄王のむすめと李伯将軍とは、東京で勉強することになりました。 それから二年たって、玄王のところへ、非常に強い匪賊(ひぞく)が襲(おそ)ってきました。激しい戦がありました。玄王は打ち負けたらしい……というだけで、なにしろ蒙古(もうこ)の山奥のことですから、はっきりしたことはわかりません。がとにかく、そういう知らせが、九州の北海岸の別荘に来ていた日本の貿易商のところに、長くたってからとどきました。そして東京から、玄王のむすめと李伯将軍とは呼びむかえられました。けれど、玄王はどうなったかさっぱりわかりませんし、匪賊がばっこしているという蒙古へ帰られるかどうかも、わかりませんでした。 その玄王のむすめというのが、チヨ子で、李伯将軍というのが、キシさんで、大連の貿易商は、この家の主人の松本さんです。 「そして、金銀廟(きんぎんびょう)の猫というのは?」 と、太郎はたずねました。 「おう、金銀廟の猫!」 と、キシさんは叫びました。 玄王の城の中に、金銀廟という宮(みや)がありまして、白い塔が建っていて、そこには、金目銀目(きんめぎんめ)の猫がまつって[#「まつって」は底本では「まって」]あるのです。それが、城の護(まも)り神です。何か願いごとがある時には、その猫に祈ればきっとかなうと、言い伝えてあります。 「私、その猫に、一心(いっしん)に祈った。そして、金目銀目(きんめぎんめ)の猫、見つかった。それで、私、なお祈った。無事に蒙古(もうこ)へ帰られるかどうか、赤土で猫を作って、占(うらな)いした。おう、それを、お嬢さん悪い、踏みつぶしてしまった。もう望みない。だめです」 キシさんがうなだれると、チヨ子はまた泣きだしました。 太郎は、どう言ってなぐさめてよいかわかりませんでした。そんなことは、迷信(めいしん)だと言っても、聞きいれられそうにありません。そして、そんな迷信にとらわれてるキシさんが、こっけいでもあるし、泣いてるチヨ子が、かわいそうでもあるし、また二人の身の上が気の毒でもあるし、なんだか胸の中がむずむずしてきました。 「ばかだなあ、きみたちは、泣いてばかりいて……」 と、太郎は言いました。 「チロは雪の中から出てきたんだよ。金銀廟(きんぎんびょう)から、とんで来たのかもしれない。そうだよ、きっと……だから、チロを連れて、蒙古に行こうよ。ぼくも行ってやろう。みんなで行こうよ。匪賊(ひぞく)なんか、退治(たいじ)しちまやいいんだろう。だいじょうぶだ。みんなで行こうよ」 キシさんと、チヨ子とは、チロを抱いてつっ立っている太郎を、びっくりして見あげました。 「赤土の猫なんか、だめだよ。チロは生きてる猫で、金目銀目だ。これを連れて行こう。ぼくも行ってやるよ。みんなで蒙古に行こう」 キシさんとチヨ子とは、目を輝やかして、太郎の手を握りしめました。
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