一
九月十一日、北緯八十一度四十分、東経二度。依然、われわれは壮大な氷原の真っただ中に停船す。われわれの北方に拡がっている一氷原に、われわれは
船員ちゅうには
その日の午後になって、かれら船員は代理人を出して船長に苦情を申し立てようとしているということを二等運転士から聞いたが、船長がそれを受け容れるかどうかは
スピッツバーゲンの北西隅にあるアムステルダム島は、わが右舷のかたに当たって見える――島は火山岩の
午後九時、私はとうとうクレーグ船長に打ち明けた。その結果はとうてい満足にはゆかなかったが、船長は私の言わんとしたことを、非常に静かに、かつ熱心に聴いてくれた。わたしが語り終わると、彼は私がしばしば目撃した、かの鉄のような決断の色を顔に浮かべて、数分間は狭い船室をあちらこちちと足早に歩きまわった。最初わたしは彼をほんとうに怒らせたかと思ったが、彼は怒りをおさえて再び腰をおろして、ほとんど
「おい、ドクトル」と、彼は言い出した。「わしは実際、いつも君を連れて来るのが気の毒でならない。ダンディ
わたしは別にそれを疑うような様子は少しも見せなかったつもりであったが、彼は突然に怒りが勃発したかのように、こう叫んだ。
「わしも男だ。二十二秒間に二十二頭の鯨! しかも
さて、ドクトル。君はわしとわしの運命とのあいだに
「そうです」と、わたしは時計の鎖についている
「畜生!」と、彼は椅子から飛びあがって、憤怒の余りに
彼は怒りのあまりに、今にもわたしを
取り残された私は、彼の途方もない乱暴にいささか驚かされた。彼がわたしに対して礼儀を守らず、また親切でなかったのは、この時がまったく初めてのことであった。私はこの文を書きながらも、船長が非常に興奮して、頭の上をあっちこっちと歩きまわっているのを聞くことが出来る。
わたしはこの船長の人物描写をしてみたいと思うが、わたし自身の心のうちの観念が
およそ人の外部に表われたところは、幾分かその内の精神を示すものである。船長は
まずこれが彼の性格の一面で、また最も
彼は髪も
それ、船長が明かり窓を降りて来るのが聞こえるぞ。それから自分の部屋にはいって