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権三と助十(ごんざとすけじゅう)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006/8/27 9:22:10 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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雲哲 どうも
願哲 うか/\してゐて、こつちまでが係り合ひになつてはならない。長屋の附合も先づこのくらゐにして置かうか。
雲哲 これから先、何事が起つても、おれたちは知らないぞ、知らないぞ。
(雲哲、願哲は下のかたへ逃げ去る。)
與助 かたき討が濟んだら、わたしもこゝらにゐない方がよささうだ。
(與助も猿をかゝへて、おなじく路地の外へ逃げてゆきかけしが、又引返して來る。)
與助 これ、お役人が來たやうだぞ。
權三 なに、お役人が來た。
助十 そいつはいけねえ。どうしよう。
助八 どうしよう。
(三人はうろたへながら
助十 これだ、これだ。
權三 ちげえねえ、早くしろ、早くしろ。
(三人は繩からげの勘太郎を引摺つて駕籠のなかへ押込み、外から
伴作 左官の勘太郎は確かにこの裏にまゐつてゐるな。
雲哲 長屋の者と喧嘩をして居ります。
伴作 喧嘩をいたしてゐるか。
(伴作はつか/\と進み來る。權三夫婦、助十兄弟は薄氣味惡さうにあとへ退る。)
伴作 豐島町の左官屋勘太郎はいづれへまゐつた。
四人 え。(顏をみあはせる。)
伴作 こゝにまゐつてゐる筈ではないか。
權三 (曖昧に。)いえ、そんな者は……。
伴作 (雲哲等をみかへる)たしかに來てゐると申したな。
雲哲 はい。その勘太郎は……。
助十 (あわてて眼で制す。)その勘太郎は……。もう歸りましてございます。
伴作 (うたがふやうに。)歸つたか。
願哲 でも、たつた今までこゝにゐた筈だが……。
權三 なに、歸つたよ、歸つたよ。この通り、どこにもゐねえぢやあねえが。
(雲哲と顧哲は不審さうにそこらを見まはしてゐると、駕籠のなかにて勘太郎が叫ぶ。)
勘太郎 もし、お役人さま。勘太郎はこれに居ります。
(權三、助十等はぎよつとする。)
伴作 (捕方をみかへる。)それ。
(捕方は駕籠の垂簾をあけて、勘太郎をひき出す。)
伴作 この者にはだれが繩をかけた。
(權三等はだまつてゐる。)
伴作 御用によつて勘太郎を召捕りにまゐつたところ、先廻りをして誰が繩をかけた。
權三 では、勘太郎はお召捕りになるのでございますか。
伴作 昨日一旦ゆるして歸されたは、深い
助十 いや、さうでございましたが。(安心して。)實はわたくしが縛りました。
權三 わたくしも縛りました。
助八 わたくしも手傳ひました。
伴作 おゝ、さうであつたか。委細はあらためて申し聞かせる。(捕方に。)それ、引立てい。
勘太郎 おかまひないと申渡されたわたくしが、どうして二度のお繩を頂戴いたすのでございませうか。
伴作
勘太郎 (強情に。)いえ、恐れながら申上げます。
捕方 えゝ、立て、立て。
(伴作は先に立ち、捕方は無理に勘太郎を引立てて下のかたに去る。一同は
權三 なんだか狐に化かされたやうだな。
與助 やつぱり勘太郎はお召捕りになるのか。それといふのも、おれの大事の猿を殺した
おかん いくら猿だつて無暗にひねり殺すやうな奴だもの、人間だつて殺し兼ねやあしないよ。
雲哲 さうだらうなあ、むやみにあいつに繩をかけて、どうなることかと心配してゐたが、これが
願哲 かうなるとおまへ達はお叱りどころか、却つてお褒めにあづかるかも知れないぞ。
おかん お褒めにあづからないまでも、お叱りがなければ結構さ。お役人が來たと聞いた時には、わたしは本當にぞつとしたよ。
(路地の口より家主六郎兵衞と彦三郎出づ。)
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