電気鳩
「ねえ、兄ちゃん。どっかのお家の鳩が、うちの鳩とあそびたいって、それでおりてきたのよ、ねえ」 「うん――」 高一はなまへんじをしました。だって、つかまえようとすれば、ゆびさきがぴりぴりしびれる鳩なんてあるものでしょうか。 そのときでした。飛行列車がついらくをはじめたのは。 でも、ずっとはなれた高い空の上のことですから、二人はあとで、村の人から話をきくまで、気がつきませんでした。 ミドリは鳩舎をあけてやりました。するとお家の屋根にとまっていた鳩は、大よろこびで鳩舎の中へかえってきました。 しかしそのとき、きょうだいは意外なことに気がついて、目をみはりました。 きょうだいのおどろいたのもむりはありません。十羽いた鳩が九羽しかいないのです。さあ、一羽はどこへ行ってしまったのでしょうか。きょうだいは血眼で家のまわりをさがすうちに、うらの竹やぶのなかに、つめたくなっている鳩の死がいをみつけました。 「かわいそうに。お前はどうして死んだの」 「これはきっと、あの電気鳩のせいだよ」 「えっ電気鳩? 電気鳩ってなあに?」 そこで高一はミドリに、さっきの青い鳩にさわろうとすると、ゆびがぴりぴりしびれたことを話してきかせました。それで電気鳩、電気鳩と名をつけたんですが、ほんとうに電気鳩が、うちの鳩をころしたのでしょうか。まったく、きずひとつないのに鳩は死んでいるのです。 「ようし、一つ工夫をして、あの鳩をつかまえてやろう」 そのつぎの日の夕方、高一とミドリとが見はっていると、はたして、その電気鳩が空からおりてきました。お家の九羽の鳩は大さわぎして、屋根の方ににげてしまいました。しかし鳩舎の上には、まだ一羽の鳩がじっととまっていました。 電気鳩はひらりと飛びおりて、そのじっとしている鳩の方へ足をひきながらちかづきました。 すると、どうでしょう。かちっと音がして、電気鳩は高一のしかけたわなに、足をはさまれてしまいました。しかし、電気鳩はたいへんな力をだして、そのまま空へまいあがりました。足にながい赤い紙テープを目じるしにして、電気鳩をおいかけてゆきましたが、ざんねんにも見うしなってしまいました。 それにひるまず、つぎの日、高一はまたべつの工夫をして、まちかまえていました。 その夕方、やはり電気鳩は下りてきました。そして、昨日とおなじように、鳩舎の上におりて、よちよちと二、三歩あるいたかとおもうと、たちまち、かちっと音がして、電気鳩は足をはさまれました。が、やっぱりにげてしまいました。そのとき鳩の足には、長い赤い紙テープのほかに、小さなガラスびんがさかさまにつりさがっていました。びんの口からは、とてもいやなにおいがしました。 電気鳩が飛びだしたと見るや、高一は愛犬マルという、よくはなのきく犬をつれて、いっしょに電気鳩のあとをおいかけました。電気鳩は昨日とおなじように村ざかいの山の方にとんでゆきます。赤い紙テープをながくひきながら、ぐんぐんとんでいって、やがて、すがたがみえなくなりました。 でも、高一は、べつにあわてるようすもなく、しきりに、はなをならして走るマルのあとについて、どんどん山の中にわけいりました。 先にたって走っていたマルは、そのうちに人の出入りができるほどのほら穴の前までくると、ほら穴の入口の草をしきりにかいで、急にうごかなくなりました。高一は、 「うむ、このほら穴にはいったのだな」 と、ほら穴をにらんで、おもわずひとりごとをいいました。
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