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人外魔境(じんがいまきょう)08 遊魂境

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数421 更新时间:2006/8/29 7:29:59 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语


   大力女ファティマ[#ルビの「ファティマ」は底本では「ファイティマ」]おのぶサン

 全米に、かなり名の聴えたウィンジャマー曲馬団サーカスが、いまニューヨーク郊外のベルローズで興行している。サーカスの朝はただ料理天幕クッキング・テントが騒がしいだけ……。芸人も起きてこず野獣の声もない、ひっそり閑とした朝まだきの一刻がある。そのころ、水槽すいそうをそなえた海獣のカラルのまえで、なにやら馴育師トレイナーから説明を聴いているのが……、というよりもはなはだしい海獣の臭気に、鼻を覆うていたのが折竹孫七。
「これが、今度入りました新荷でがして」と、海豹あざらし使いのヒューリングがしきりと喋っている。なかには、海豹、海驢あしか緑海豹グリーン・シールなど十匹ほどのものが、ひれで打ちあいウオーウオーとえながら、狭いなかをねかえすような壮観だ。
「じつは、なんです。これは、さるところからまとめて手に入れまして……、さて、訓練にかかったところ、大変なやつが一匹いる。どうも見りゃ海豹あざらしではない。といって、膃肭獣おっとせいでもない、海驢あしかでもない。海馬でもなし、海象ウォーラスでもない。さだめしこれは、新種奇獣だろうてえんで、いちばん折竹の旦那にご鑑定をねがったら、きっとあの不思議な野郎の正体が分るだろう……」
 というところへ「これはご苦労さんで」と、親方のウィンジャマーが入ってきた。ウィンジャマーは、きょう折竹の連れである自然科学博物館の、ケプナラ君とは熟知の仲である。ぺこぺこ頭をさげて折竹に礼をいってから、おいキャプテンと、ヒューリングに言った。
「こりゃね、一つお前さんに仕方ばなしをして貰おうよ。海獣けものの訓練の順序をお目にかけてからでないと、どんなにあの野郎が手端に負えねえやつかということが、旦那がたに呑み込めねえかも知れねえから……」
 と、ヒューリングがまず西洋よろいのような、鉄葉ズボンティン・パンツという足部そくぶ保護具をつける。これを着けないと、いつ未訓練のやつに、がりがりっとやられるかも知れない。おりの戸をあけてそっと内部なかにはいると、見かけは鈍重そうな氷原の豹どもも、たちまち牙をきだし、野獣の本性をあらわしてくる。ヒューリングは、鉄葉ズボンティン・パンツのうえをガリガリやられながら、鉄棒につかまって外側へ声をなげる。
「最初は、生魚食いのこいつらに、死魚を食わせる。ぴんぴん糸で引っぱって躍らせていると、うっかり生きてると間違えて、ガブリとやる。そうして、えさについたら、もう占めたもんで……。まもなく、飾り台パデストールのうえに、ちょこなんと乗る。撞球棒キューのうえへ玉をのせたのを、鼻であしらいあしらい梯子はしごをのぼってゆく。それから、梯子の頂上でサッと撞球棒を投げ、見事落ちてくる玉を鼻面はなづらで受けとめる。
 ――というようになれば、いっぱしの太夫。手前も、給金があがるという嬉しい勘定になる。ところがです、あの“Gori-Nepゴリ・ネプ”の野郎ときたら手端にも負えねえ」
「“Gori-Nepゴリ・ネプ”って?」と折竹がちょっと口をはさんだ。
「つまり、野郎は演芸用海豹ネップ仲間のゴリラですからね。マア、この鉄葉ズボンティン・パンツの穴をみてくださいよ。たいていの海獣けものなら二、三度でみ止みますが、あいつの執念ときたらそりゃ恐ろしいもんで……。ええ、その大将はすぐ参ります。じつは、野郎だけが独房生活で」
 その、通称“Gori-Nepゴリ・ネプ”という得体のしれぬ海獣を、まもなく折竹はしげしげとながめはじめた。身長は、やや海豹あざらしくらいだが体毛が少なく、まず目につくのがおそろしく大きな牙。おまけに、人をみる目も絶対なじまぬ野性。ついに折竹にも見当つかずと見えたところへ「あれかな」と、連れのケプナラを莞爾かんじとなって、ふり向いた。
「ケプナラ君、君はエスキモー土人がいう、“A-Pellahアー・ペラー”を知っているかね」
「アー・ペラー※(疑問符感嘆符、1-8-77) いっこうに知らんが、なんだね」
海豹あざらし海象ウォーラス混血児あいのこだ。学名を“Orca Lupinumオルカ・ルピヌム”といって、じつにまれに出る。その狂暴さ加減は学名の訳語のとおり、まさに『鯨狼』という名がぴたりと来るようなやつ。孤独で、南下すれば膃肭獣おっとせい群をあらす。滅多にでないから、標本もない。マア、僕らは、きょう千載に一遇の機会で、お目にかかれたというわけだ」
「ううむ、そんな珍物かね」と、温厚学究君子のケプナラ君は感じ入るばかり。果して、この奇獣は唯者ただものではなかった。やがて、折竹を導いて「冥路の国セル・ミク・シュア」へと引きよせてゆく、運命の無言の使者だったのだ。えもせず、じっと瞳をえて人間を見わたしている、狡智こうち、残忍というかっとなるような光。これぞ、極洋の狼、孤独の海狼と――なんだかにらみかえしたくなる厭アな感じが、ふとこの数日来折竹にまつわりついている、ある一つの異様な出来事を思いださせたのである。それは、両三度を通じておなじような意味の、次のような手紙が舞いこんできたのだ。

 えて小生は、世界的探検家なる折竹氏に言う。この地上にもし、まだ誰も知らず一人も踏まぬ国ありとすれば、その所在を、ご貴殿にはお買い取りになりたき意志なきや。小生は、それほどのものを売らねばならぬほど、目下もっか困窮を極めおり候。
 明日、午後三時より三時半までのあいだ、イースト二十四番街のリクリェーション埠頭パイアーの出際、「老鴉オールド・クロウ」なる酒場にてお待ち申しおり候、目印しは、ジルベーのジンと書いてある貼紙はりがみの下。

K・M生

 

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