女侠
唐の貞元年中、
「わたくしは人に仕えることの出来る者ではありません。あなたとは不釣合いです。なまじいに結婚して
それでは
崔はおどろいて、さては他に
「わたくしの父は罪なくして郡守に殺されました。その仇を報ずるために、城中に入り込んで数年を送りましたが、今や本意を遂げました。ここに長居は出来ません。もうお
彼女は身支度して、かの首をふくろに収め、それを小脇にかかえて言った。
「わたくしは二年間あなたのお世話になりまして、幸いに一人の子を儲けました。この住居も二人の奉公人もすべてあなたに差し上げますから、どうぞ子供の養育を願います」
男に別れて
「子供に乳をやって行くのを忘れましたから、ちょっと飲ませて来ます」
彼女は室内にはいったが、やや暫くして出て来た。
「乳をたんと飲ませました」
言い捨てて出たままで、彼女はかさねて帰らなかった。それから時を移しても、
その子を殺したのは、のちの思いの種を断つためであろう。昔の侠客もこれには及ばない。