公園と犬と人間。古くからのトラブルのテーマに、最近の飼い犬の急増で新たなスポットが当てられている。犬専用運動場「ドッグラン」が各地に相次いで登場する一方、マナー違反を理由に犬を締め出す公園も目立つ。「人犬分離」が進む現状に、「ヒトと犬との共生の理想からはほど遠い」と嘆く声もある。
東京都杉並区の都立善福寺川緑地。小さな子らがボール遊びを楽しむ子供広場は午後6時を境に愛犬家に独占される。「放し飼い禁止」の看板を背に、集まった10人近い飼い主は次々と愛犬の引き綱(リード)を放す。土ぼこりをあげて駆け回る大型犬の群れに、サッカーを続けていた親子はあわてて逃げ出した。
遊び足りない長男をなだめながら、父親(37)は「なぜこっちが譲るのかと思うが、跳びかかられて息子がけがしたら大変」と話す。
厚生労働省によると、02年度末の全国の飼い犬の登録数は約630万匹で、10年前の1.5倍以上に急増。放し飼い、フンの始末……。公園をめぐって東京都に寄せられる苦情の半数は犬にまつわるトラブルだ。
都は昨年11月、都立公園2カ所にリードなしで犬を遊ばせることができるドッグランを本格オープンさせた。愛犬家と犬が苦手な人を「分離」することで、公園に「共存」してもらおうという試みだ。
約1200平方メートルをフェンスで囲った駒沢オリンピック公園は、休日には100匹以上が集まる人気スポット。ある飼い主は「夕方や早朝にこっそりリードなしで遊ばせてきたが、ここなら肩身が狭くない」と喜ぶ。
都は「犬のための施設は公共性に欠けるという意見もあったが、結果的に犬嫌いの人のためにもなる。今や犬の数も増え、犬連れを『一部の利用者』とは言えない」。都は新たに都立公園6カ所に設置を検討しているほか、すでに国営など都内3カ所の大型公園が導入。北海道や埼玉県、横浜市など公園内ドッグランは全国に広がっている。
一方、これまでリード付きで立ち入りを認めていた公園が犬の締め出しに動く例もある。総面積24ヘクタールの神奈川県立相模原公園は昨年秋に児童公園、今春からは芝生広場の半分を立ち入り禁止とした。県は「愛犬家との懇話会を経て、子供の安全や衛生面を優先させた。部分禁止はあくまで犬との共存が目的」と説明する。
東京23区内で犬を飼う世帯の割合が最も多い杉並区は、区立公園約300カ所が犬禁止。愛犬家の強い要望で6月から4カ所だけ立ち入りを認めたが、広さ3ヘクタールの桃井原っぱは禁止のままだ。同区は「せめてリード付きでというが、あの広さでは放し飼いの横行は目に見えている」。
02年に平和の森公園を拡張させた中野区は、テニスコートほどの犬専用ゾーンを設けた代わりに、芝生広場を立ち入り禁止とした。同区は「犬の急増にマナーが追いついていない」。 (08/01 15:45)
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