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源氏物語(げんじものがたり)31 真木柱
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-11-6 9:49:13 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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かばかりは風にもつてよ花の
と言って、さすがに忘られたくない様子の女に見えるのを哀れに思召しながら、顧みがちに帝はお立ち去りになった。 すぐに大将は自邸へ 「にわかに と穏やかに了解を求めて、大将はそのまま 「どちらでも私のほうの意志でどうすることもできない娘になっているのですから」 という返事を内大臣はした。源氏は思いがけないことになったと失望を感じたが、それは無理なことのようである。玉鬘も心にない 二月になった。源氏は大将を無情な男に思われてならなかった。これほどはっきりと玉鬘を自分から引き放すこととは思わずに油断をさせられていたことが、人聞きも不体裁に思われ、自身のためにも残念で、玉鬘が恋しくばかり思われた。宿縁は無視できないものであっても、自身の思いやりのあり過ぎたことからこうした苦しみを買うことになったのであると、日夜面影にその人を見ていた。風流気の少ない大将といることを思っては、手紙で、戯れのようにして今日このごろの気持ちを玉鬘に伝えることも気が置かれて得しなかった。雨がよく降って静かなころ、源氏はこうした退屈な時間も紛らすことが玉鬘の所でできたこと、その時分の様子などが目に浮かんできて、非常に恋しくなって手紙を書いた。右近の所へそっとその手紙は送られたのであるが、そうはしながらも右近が怪しく思わないかということも考えられて、思うことはそのまま皆書き続けられなかった。ただ推察のできそうなことだけを書いたのであった。 かきたれてのどけきころの春雨にふるさと人をいかに忍ぶや
私も退屈なものですから、いろいろ恨めしくなったりすることがあるのですが、どうしてそれをお聞かせしてよいかわかりません。
などと書かれてあった。人が玉鬘のそばにいない時を見計らって右近はこの手紙を見せた。玉鬘も泣いた。自身の心にも時がたつままに思い出されることの多い源氏は、感情そのままに、恋しい、どうかして
「書くのが恥ずかしくてならないけれど、あげないでは失望をなさるだろうから」 と言って、 ながめする軒の
それが長い時間でございますから、
とうやうやしく書かれてあった。それを前に
帝もほのかに御覧になった玉鬘の 三月になって、六条院の庭の 思はずも井手の中みち隔つとも言はでぞ恋ふる山吹の花
とも言っていた。「夕されば お逢いできない月日が重なりました。あまりに同情がないというように恨んではいますが、しかし御良人の御同意がなければ万事あなたの御意志だけではできないことを承知していますから、何かの場合でなければお許しの出ることはなかろうと残念に思っています。
などと親らしく言ってあるのである。
おなじ巣にかへりしかひの見えぬかないかなる人か手ににぎるらん
そんなにまでせずともとくやしがったりしています。
この手紙を大将も見て笑いながら、
「女というものは実父の所へだって理由がなくては行って逢うことをしないものになっているのに、どうしてこの大臣が始終逢えない逢えないと恨んでばかしおよこしになるだろう」 こんな批評めいたことを言うのも、玉鬘には憎く思われた。返事を、 「私は書けない」 と玉鬘が渋っていると、 「今日は私がお返事をしよう」 大将が代わろうというのであるから、玉鬘が片腹痛く思ったのはもっともである。 巣隠れて数にもあらぬ
大将の書いたものはこうであった。
「この人が と源氏は笑ったが、心の中では玉鬘をわが物顔に言っているのを憎んだ。 もとの大将夫人は月日のたつにしたがって 「私たちなどもかわいがってくださる。毎日おもしろいことをして暮らしていらっしゃる」 などと言っているのを夫人は聞いて、うらやましくて、そんなふうな朗らかな心持ちで人生を楽しく見るようなことをすればできたものを、できなかった自身の性格を悲しがっていた。男にも女にも物思いをさせることの多い尚侍である。 その十一月には美しい子供さえも 「今まで皇子がいらっしゃらない所へ、こんな小皇子をお生み申し上げたら、どんなに家門の名誉になることだろう」 となおこの上のことを言って残念がった。尚侍の公務を自宅で不都合なく あの内大臣の令嬢で尚侍になりたがっていた 「もう女御の所へ行かないように」 と止められているのであったが、やはり出て来ることをやめない。どんな時であったか、女御の所へ殿上役人などがおおぜい来ていて 「やはり出抜けていらっしゃる方」 とも評していた時に、近江の君は女房たちの座の中を押し分けるようにして 「あさはかなことをお言い出しになるのじゃないかしら」 とひそかに 「これでしょう、これでしょう」 と言って源中将のきれいであることをほめて騒ぐ声が外の男の座へもよく聞こえるのであった。女房たちが困って苦しんでいる時、高く声を張り上げて、近江の君が、 「おきつ船よるべ
『たななし と言った。源中将は異様なことであると思った。女御の所には洗練された女房たちがそろっているはずで、こうした露骨な戯れを言いかける人はないわけであると思って、考えてみるとそれは よるべなみ風の騒がす船人も思はぬ方に
と源中将に言われた。 「そんなことをしては恥知らずです」 とも。 底本:「全訳源氏物語 中巻」角川文庫、角川書店 1971(昭和46)年11月30日改版初版発行 1994(平成6)年6月15日39版発行 ※このファイルは、古典総合研究所(http://www.genji.co.jp/)で入力されたものを、青空文庫形式にあらためて作成しました。 ※校正には、2002(平成14)年1月15日44版を使用しました。 入力:上田英代 校正:kompass 2003年9月3日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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