「今晩お
と大臣が言うのを聞いて、それでは宮の御病気もおよろしいように拝見するから、きっと申し上げた祝いの日に御足労を煩わしたいということを源氏は頼んで約束ができた。非常に
内大臣は源氏の話を聞いた瞬間から娘が見たくてならなかった。
十六日の朝に三条の宮からそっと使いが来て、裳着の姫君への贈り物の
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源氏物語(げんじものがたり)29 行幸
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-11-6 9:45:42 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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「今晩お と大臣が言うのを聞いて、それでは宮の御病気もおよろしいように拝見するから、きっと申し上げた祝いの日に御足労を煩わしたいということを源氏は頼んで約束ができた。非常に 内大臣は源氏の話を聞いた瞬間から娘が見たくてならなかった。 十六日の朝に三条の宮からそっと使いが来て、裳着の姫君への贈り物の 手紙を私がおあげするのも不吉にお思いにならぬかと思い、遠慮をしたほうがよろしいとは考えるのですが、
ふたかたに言ひもてゆけば
と老人の 「昔風なお手紙だけれど、お気の毒ですよ。このお字ね。昔は と言って、何度も源氏は読み返しながら、 「よくもこんなに玉櫛笥にとらわれた歌が そっと源氏は笑っていた。 ご存じになるはずもない私ですから、お恥ずかしいのですが、こうしたおめでたいことは傍観していられない気になりました。つまらない物ですが女房にでもお与えください。
とおおように書かれてあった。源氏はそれの来ているのを見て気まずく思って例のよけいなことをする人だと顔が赤くなった。
「これは前代の遺物のような人ですよ。こんなみじめな人は引き込んだままにしているほうがいいのに、おりおりこうして恥をかきに来られるのだ」 と言って、また、 「しかし返事はしておあげなさい。侮辱されたと思うでしょう。親王さんが御秘蔵になすったお嬢さんだと思うと、 とも言うのであった。小袿の袖の所にいつも変わらぬ末摘花の歌が置いてあった。 わが身こそうらみられけれ
字は昔もまずい人であったが、小さく縮かんだものになって、紙へ強く押しつけるように書かれてあるのであった。源氏は不快ではあったが、また 「どんな とおかしがっていた。 「この返事は忙しくても私がする」 と源氏は言って、 不思議な、常人の思い寄らないようなことはやはりなさらないでもいいことだったのですよ。
と反感を見せて書いた。また、
からごろもまた唐衣からごろも返す返すも唐衣なる
と書いて、まじめ顔で、 「あの人が好きな言葉なのですから、こう作ったのです」 こんなことを言って玉鬘に見せた。姫君は 「お気の毒でございます。 と困ったように言っていた。こんな戯れも源氏はするのである。 内大臣は重々しくふるまうのが好きで、裳着の 「今日はまだ歴史を外部に知らせないことでございますから、普通の作法におとめください」 と注意した。 「実際何とも申し上げようがありません」 杯の進められた時に、また内大臣は、 「無限の感謝を受けていただかなければなりません。しかしながらまた今日までお知らせくださいませんでした恨めしさがそれに添うのもやむをえないこととお許しください」 と言った。 うらめしや沖つ
こう言う大臣に悲しいふうがあった。 「
御無理なお恨みです」 代わってこう言った。 「もっともです」 と内大臣は苦笑するほかはなかった。こうして裳着の式は終わったのである。親王がた以下の来賓も多かったから、求婚者たちも多く混じっているわけで、大臣が 弁は、 「求婚者になろうとして、もう一歩を踏み出さなかったのだから自分はよかった」 と兄にささやいた。 「太政大臣はこんな趣味がおありになるのだろうか。中宮と同じようにお扱いになる気だろうか」 とまた一人が言ったりしていることも源氏には想像されなくもなかったが、内大臣に、 「当分はこのことを慎重にしていたいと思います。世間の批難などの集まってこないようにしたいと思うのです。普通の人なら何でもないことでしょうが、あなたのほうでも私のほうでもいろいろに言い騒がれることは迷惑することですから、いつとなく事実として人が信じるようになるのがいいでしょう」 と言っていた。 「あなたの御意志に従います。こんなにまで御実子のように愛してくださいましたことも前生に深い因縁のあることだろうと思います」 腰結い役への贈り物、引き出物、 「陛下から宮仕えにお召しになったのを、一度御辞退申し上げたあとで、また仰せがありますから、ともかくも と源氏は 世間でしばらくこのことを風評させまいと両家の人々は注意していたのであるが、口さがないのは世間で、いつとなく評判にしてしまったのを、例の 「殿様はまたお嬢様を発見なすったのですってね。しあわせね、両方のお と露骨なことを言うのを、女御は片腹痛く思って何とも言わない。中将が、 「大事がられる訳があるから大事がられるのでしょう。いったいあなたはだれから聞いてそんなことを不謹慎に言うのですか。おしゃべりな女房が聞いてしまうじゃありませんか」 と言った。 「あなたは黙っていらっしゃい。私は皆知っています。その人は と令嬢は恨むのである。 「尚侍が欠員になれば僕たちがそれになりたいと思っているのに。ひどいね、この人がなりたがるなんて」 と兄たちがからかって言うと、腹をたてて、 「りっぱな兄弟がたの中へ、つまらない妹などははいって来るものじゃない。中将さんは薄情です。よけいなことをして私を 次第にあとへ 「そんなふうにあなたは論理を立てることができる人なのですから、女御さんも尊重なさるでしょうよ。心を静めてじっと念じていれば、岩だって と微笑しながら言っていた。中将は、 「腹をたててあなたが と言って立って行った。令嬢はほろほろと涙をこぼしながら泣いていた。 「あの方たちはあんなに薄情なことをお言いになるのですが、あなただけは私を愛してくださいますから、私はよく御用をしてあげます」 と言って、小まめに 「尚侍に私を推薦してください」 と令嬢は女御を責めるのであった。どんな気持ちでそればかりを望むのであろうと女御はあきれて何とも言うことができない。この話を内大臣が聞いて、おもしろそうに笑いながら、女御の所へ来ていた時に、 「どこにいるかね、 と呼んだ。 「はい」 高く返辞をして近江の君は出て来た。 「あなたはよく精勤するね、役人にいいだろうね。尚侍にあんたがなりたいということをなぜ早く私に言わなかったのかね」 大臣はまじめ顔に言うのである。近江の君は喜んだ。 「そう申し上げたかったのでございますが、女御さんのほうから間接にお聞きくださるでしょうと御信頼しきっていたのですが、おなりになる人が別においでになることを承りまして、私は夢の中だけで金持ちになっていたという気がいたしましてね、胸の上に手を置いて とても早口にべらべらと言う。大臣はふき出してしまいそうになるのをみずからおさえて、 「つまり遠慮深い癖が とからかっていた。親がすべきことではないが。 「和歌はどうやらこうやら作りますが、長い自身の推薦文のようなものは、お父様から書いてお出しくださいましたほうがと思います。二人でお願いする形になって、お父様のお 両手を 「気分の悪い時には近江の君と とこんなことを言って笑いぐさにしているのであるが、世間の人は内大臣が恥ずかしさをごまかす意味でそんな態度もとるのであると言っていた。 底本:「全訳源氏物語 中巻」角川文庫、角川書店 1971(昭和46)年11月30日改版初版発行 1994(平成6)年6月15日39版発行 ※このファイルは、古典総合研究所(http://www.genji.co.jp/)で入力されたものを、青空文庫形式にあらためて作成しました。 ※校正には2002(平成14)年1月15日44版発行を使用しました。 入力:上田英代 校正:伊藤時也 2003年9月8日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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