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種山ヶ原(たねやまがはら)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-10-29 16:10:18 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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月は射そゝぐ 銀の矢なみ、 刀が青くぎらぎら光りました。打ぅつも果てるも 一つのいのち、 「ダー、ダー、スコ、ダーダー、ド、ドーン、ド、ドーン。太刀はいなづま すゝきのさやぎ、燃えて……」 組は二つに分れ、剣がカチカチ云ひます。 月が (先生の声がする。さうだ。もう学校が始まってゐるのだ。)と達二は思ひました。 そこは教室でした。先生が何だか少し 「みなさん。楽しい夏の休みももう過ぎました。これからは気持ちのいゝ秋です。一年中、一番、勉強にいゝ時です。みなさんはあしたから、又しっかり勉強をするのです。どなたも宿題はして来たでせうね。今日持って来た方は手をあげて。」 達二と 「明日は忘れないでみなさん持って来るのですよ。もし、ぜんたい、してしまはなかった人があっても、やはりその 誰も上げません。 「さうです。皆さんは立派な生徒です。休み中、みなさんは何をしましたか。そのうちで一番面白かったことは何ですか。達二さん。」 「おぢいさんと仔馬を集めに行ったときです。」 「よろしい。大へん結構です。楢夫さん。あなたはお休みの間に、何が一番楽しかったのですか。」 「 「剣舞をあなたは踊ったのですか。」 「さうです。」 「どこでですか。」 「 「さうですか。まあよろしい。お座りなさい。みなさん。外にも剣舞に出た人はありますか。」 「先生、私も出ました。」 「先生、私も出ました。」 「達二さんも、さうですか。よろしい。みなさん。剣舞は決して悪いことではありません。けれども、 「先生。私はお銭を貰ひません。」 「よろしい。さうです。それから……。」 達二は、眼を開きました。みんな夢でした。冷たい霧や そして達二は又うとうとしました。そこで霧が 「おいでなさい。いゝものをあげませう。そら。干した 「ありがど、あなたはどなた。」 「わたし誰でもないわ。一緒に向ふへ行って遊びませう。あなた 「驢馬は持ってません。 「只の仔馬は大きくて 「そんなら、あなたは小鳥は 「小鳥。わたし大好きよ。」 「あげませう。私はひはを有ってゐます。ひはを一 「えゝ。欲しいわ。」 「あげませう。私今持って来ます。」 「えゝ、早くよ。」 達二は、一生懸命、うちへ走りました。美しい緑色の野原や、小さな流れを、一心に走りました。野原は何だかもくもくして、ゴムのやうでした。 達二のうちは、いつか野原のまん中に建ってゐます。急いで 「達二、どこさ行く。」と達二のおっかさんが云ひました。 「すぐ来るがら。」と云ひながら達二は鳥を見ましたら、鳥はいつか、 風が吹き、空が暗くて銀色です。 「 それからしばらく空がミインミインと鳴りました。達二は又うとうとしました。 山男が (なに怖いことがあるもんか。) 「こりゃ、山男。出はって 山男がすっかり怖がって、草の上を四つん 「どうか 「うん。そんだら許してやる。 「ふう。蟹を百疋。それ 「それがら 「ふう。殺して来てもようがすか。」 「うんにゃ。わがん[#「ん」は小書き]なぃ。生ぎだのだ。」 「ふうふう。かしこまた。」 油断をしてゐるうちに、達二はいきなり山男に足を 「小僧。さあ、 「ばか。 「仲々づ太ぃやづだ。 「行がない。」 「ようし、そんだらさらって行ぐ。」 山男は達二を 急にまっ暗になって、雷が そして達二は又眼を開きました。 灰色の霧が速く速く飛んでゐます。そして、牛が、すぐ眼の前に、のっそりと立ってゐたのです。その 「あ、居だが。馬鹿だな。 雷と風の音との中から、 「おゝい。達二。居るが。達二。達二。」 達二はよろこんでとびあがりました。 「おゝい。居る、居る。 達二は、牛の手綱をその首から解いて、引きはじめました。 黒い路が又ひょっくり草の中にあらはれました。そして達二の兄さんが、とつぜん、眼の前に立ちました。達二はしがみ付きました。 「 「牛ぁ逃げだだも。」 「牛ぁ逃げだ。はあ、さうが。何にびっくりしたたがな。すっかりぬれだな。さあ、 「一向寒ぐなぃ。 「さうが。よしよし。まづ 緩い傾斜を、二つ程昇り降りしました。それから、黒い大きな路について、 稲光が二度ばかり、かすかに白くひらめきました。草を焼く 達二の兄さんが叫びました。 「おぢいさん。居だ、居だ。達二ぁ居だ。」 おぢいさんは霧の中に立ってゐて、 「あゝさうが。心配した、心配した。あゝ 半分に焼けた大きな栗の木の根もとに、草で作った小さな囲ひがあって、チョロチョロ赤い火が燃えてゐました。 兄さんは牛を 馬もひひんと鳴いてゐます。 「おゝむぞやな。な。何ぼが泣いだがな。さあさあ団子たべろ。食べろ。な。今こっちを焼ぐがらな。全体何処迄行ってだった。」 「 「危ぃがった。危ぃがった。向ふさ降りだらそれっ切りだったぞ。さあ達二。団子喰べろ。ふん。まるっきり馬こみだぃに食ってる。さあさあ、こいづも食べろ。」 「おぢいさん。今のうぢに草片附げで来るべが。」と達二の兄さんが云ひました。 「うんにゃ。も少し待で。又すぐ晴れる。おらも弁当食ふべ。あゝ心配した。 「今朝ほんとに天気 「うん。又 兄さんが出て行きました。天井がガサガサガサガサ云ひます。おぢいさんが、笑ひながらそれを見上げました。 兄さんが又はひって来ました。 「おぢいさん。明るぐなった。雨あ 「うんうん。さうが。さあ弁当食ってで草片附げべ。達二。弁当食べろ。」 霧がふっと切れました。陽の光がさっと流れて入りました。その太陽は、少し西の方に寄ってかかり、幾片かの 草からは はるかの北上の 底本:「新修宮沢賢治全集 第八巻」筑摩書房 1979(昭和54)年5月15日初版第1刷発行 1984(昭和59)年1月30日初版第7刷発行 入力:林 幸雄 校正:久保格 2002年11月10日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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