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春の枯葉(はるのかれは)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-9-22 9:22:25 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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人物。 しづ 節子の生母、五十四歳。 その他 学童数名。 所。 津軽半島、海岸の僻村。 時。 昭和二十一年、四月。 [#改ページ] 第一場 舞台は、村の国民学校の一教室。放課後、午後四時頃。正面は教壇、その前方に生徒の机、椅子二、三十。 全校生徒、百五十人くらいの学校の気持。 正面の黒板には、次のような文字が乱雑に、秩序無く書き散らされ、ぐいと消したところなどもあるが、だいたい読める。授業中に教師野中が書いて、そのままになっているという気持。 その文字とは、 「四等国。北海道、本州、四国、九州。四島国。春が来た。滅亡か独立か。光は東北から。東北の保守性。保守と封建。インフレーション。政治と経済。闇。国民相互の信頼。道徳。文化。デモクラシー。議会。選挙権。愛。師弟。ヨイコ。良心。学問。勉強と農耕。海の幸。」 等である。 幕あく。 舞台しばらく空虚。 突然、荒い足音がして、「 (野中)(
(学童)(素直にタオルで涙を拭く)
(野中)(そのタオルを学童から取って、また自分の腰にさげ)よし、さあ歌ってごらん。叱りやしない。決して叱らないから、いまお前たちが、あの、外のグランドで一緒に歌っていた唱歌を、ここで歌ってごらん。低い声でかまわないから、歌ってごらん。叱るんじゃないんだよ。先生は、あの歌を、ところどころ忘れたのでね、お前からいま教えてもらおうと思っているのだ。それだけなんだから、安心して、さあ、ひとつ男らしく、歌って聞かせてくれ。(言いながら、最前列の学童用の椅子に腰をおろす。つまり観客に対しては、うしろ向きになる) 学童は、観客に対して正面を向き、気を附けの姿勢を執り、眼をつぶって、低く歌う。
はる、こうろうの花のえん、 めぐるさかずき、影さして、 ちよの松がえ、わけいでし、 むかしの光、いまいずこ。 (学童)(歌い終ってうつむく)
(野中)(机に
(学童)(首を振る)
(野中) 誰も教えてくれなくても、自然に覚えたの?
(学童)(だまっている)
(野中) この歌の意味が、よくわかって歌っているの? いや、この歌が、お前たちのいまの気持に一ばんぴったりするから、それだから歌っているの?
(学童)(うなだれたまま、だまっている)
(野中) 決して叱りやしないから、思っている事をそのまま言ってごらん。先生もね、いまいろいろ考えているんだ。さっきもあんな工合に、(と、ちょっと正面の黒板を指差し)さまざま黒板に書いて、新しい日本の姿というものをお前たちに教えたつもりだが、しかし、どうも、教えたあとで何だか、たまらなく不安で、
(学童)(だまっている)
(野中) なんとか 学童、無言で野中教師にお辞儀をし、 消しながら、やがて小声で、はる、こうろうの花のえん、めぐるさかずき、影さして、と歌う。 舞台すこし暗くなる。斜陽が薄れて来たのである。 くすくす忍び笑いして、奥田菊代、上手の出入口より登場。 (菊代) なかなかお
(野中)(おどろき、振りかえって菊代を見つけ、苦笑して)なんだ、あなたか。(黒板を拭き終って正面を向き)ひやかしちゃいけません。
(菊代) あら、本当よ。本当に、お上手よ。すばらしいバリトン。
(野中)(いよいよ口をゆがめて苦笑し)よして下さい、ばかばかしい。僕んところは親の
(菊代) いいえ、兄さんに逢いに来たんじゃないんです。(たわむれに、わざと取り澄ました態度で)本日は、野中弥一先生にお目にかかりたくてまいりました。
(野中) なあんだ、うちで毎日、お目にかかってるじゃないか。
(菊代) ええ、でも、同じうちにいても、なかなか二人きりで話す機会は無いものだわ。あら、ごめん。誘惑するんじゃないわよ。
(野中) かまいませんよ。いや、よそう。兄さんに怒られる。あなたの兄さんは、まじめじゃからのう。
(菊代) あなたの奥さんだって、まじめじゃからのう。
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