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行きついてみると、それなる祈祷所がすこぶる不審。比丘尼行者が祈祷を売り物にする住まいなら、玄関出入り口の構えなぞ、少しは
だのに、伝六というやつはおよそ
「辰ッ」
「えッ」
「兄貴ゃどこへもぐったッ」
「それがどうもおかしいんですよ。目色を変えながらふいッと今のさっき表のほうへ飛び出したんでね。だいじょうぶだ、へびはいねえよっていってやりましたら、おれさまともあろうものが、こまっけえやつの下風についてたまるけえと、こんなことをガミガミ言いのこしまして、どこかへずらかっちまいましたんですよ」
いっているところへ、どうもやることなすことが伝六流でした。
「ちくしょうッ、ざまあみろい! 日ごろはどじの血のめぐりがわりいのと、いっぺんだっておほめにあずかったこたあねえが、きょうばかりは伝六様のできが違うんだッ。ね、だんな、だんな! このとおり、おてがらあげてきたんだから、頭をなでておくんなせえよ!」
「それどころじゃねえや! 三人の小町が生きているかも死んでいるかもわからねえ
「ちぇッ、犬っころじゃあるめえし、のそのそほつき歩いているはねえでがしょう! あっしだっても、だんなにゃ一の子分です! 辰みていな豆公卿にお株とられてたまりますかい! たまさか気イきかして駕籠のしたくをしたぐれえで、小粒のさんしょうにヒリリとやられたもねえもんじゃござんせんか! 大張りの伝六太鼓だって、たたきようによっちゃいい音が出るんだッ。あんまり辰ばかりをおほめなすったんで、くやしまぎれに、ちょっといま小手先を動かしたら、こういうもっけもねえ品が手にへえったんですよ。早いところご覧なせえよ! あて名も、差し出し人も、字は一つもねえっていう白封の気味のわるい手紙じゃござんせんか!」
「どこからそんなものかっぱらってきたんだッ」
「ちぇッ。あっし[#「あっし」は底本では「あつし」]が手に入れてくりゃ、かっぱらってきたとおっしゃるんだからね。細工は粒々、隣ののり売りばばあから巻きあげてきたんですよ。なんでも、ばばあのいうにゃ、ゆんべ夜中すぎに、比丘尼の行者が式部小町らしいべっぴんをしょっぴいてきて、けさまたうろたえながら大きなつづら荷つくって人足に背負わしたあとを、こそこそとどっかへ出かけたというんですよ。その出かけたるすへ、この白封が入れ違いに届いたんで、のり売りばばあが預かっていたというんですがね。聞いただけでも、大きにくせえじゃござんせんか! 早いところあけてご覧なせえよ!」
まこと、伝六太鼓もたたきようによってはすてきもない音の出るときがあるとみえて、いかさまいぶかしい一通を目の前にさし出したものでしたから、中身やいかにと押し開いてみると、これがまたすこぶる奇怪でした。