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羅生門(らしょうもん)

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-9-2 6:01:51 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语


     二

七日なのかあいだうであずけておくぞ。」
 こういいのこしたおに言葉ことばつなわすれずにいました。それで万一まんいちかえされない用心ようじんに、つなうで丈夫じょうぶはこの中にれて、もんそとに、
「ものいみ」
 といてして、ぴったりもんめて、おきょうをよんでいました。
 六日むいかあいだ何事なにごともありませんでした。七日なのかめの夕方ゆうがたにことことともんをたたくものがありました。つな家来けらいもんのすきまからのぞいてみますと、白髪しらがのおばあさんが、つえをついて、かさをもって、もんそとっていました。家来けらいが、
「あなたはどなたです。」
 ときますと、おばあさんは、
つなのおばが、摂津せっつくに渡辺わたなべからわざわざたずねてました。」
 といいました。
 家来けらいは どくそうに、
「それはあいにくでございました。主人しゅじんはものいみでございまして、今晩こんばん一晩ひとばんつまでは、どなたにもおいになりません。」
 といいました。するとおばあさんはかなしそうなこえで、
つなちいさいときははわかれたので、母親ははおやわりにわたしがあの子をそだててやったのです。それがいまはえらいさむらいになったといって、せっかく遠方えんぽうからたずねててもってはくれない。このごろはめっきりとしをとって、こんどまたおうといっても、それまできていられるかおぼつかない。ああ、ざんねんなことだ。」
 といいながら、とぼとぼかえって行こうとしました。
 つなおくでおばさんのいうことをすっかりいていました。いているうちにどくになって、どうしてももんけてやらずにはいられないようながしました。それで自分じぶんが出て行って、もんけてやって、
「よくいらっしゃいました。」
 といって、おくとおしました。
 おばさんはうれしそうにはいってて、ひさりのあいさつがすむと、
「さっき、ものいみでもんをあけないといったが、あれはどういうわけなのだね。」
 ときました。
 つなおにのことをくわしくはなしました。おばさんはだんだんひざをしながらいていましたが、
「まあ、不思議ふしぎなこともあるものだね。だがわたしのそだてた子がそんなえらい手柄てがらをしたかとおもうと、わたしまでうれしいとおもうよ。ついでにそのおにうでというのをたいものだね。」
 といいました。
 つなどくそうなかおをして、おにのいいのこした言葉ことばがあるので、今日きょう七日なのかのものいみがけるまでは、だれにもせることができないというわけを、ていねいにいってことわりました。するとおばさんはかなしそうなかおをして、
「まあ、よくよくえんがないのだね。なにしろとしってさきみじかからだだからね。しかたがない、あきらめましょう。」
 と、しおれかえっていいました。
 その様子ようすをみると、つなはまたどうしてもおにうでしてせなければならないようなになって、
「ではせっかくだから、ちょっとお目にかけましょう。」
 といって、はこをおばさんのまえして、ふたをあけました。
「どれ、どれ。」
 とおばさんはいって、つとそばによりました。そしてしばらくじっとはこの中をのぞきみながら、
「まあ、これがおにうでかい。」
 といって、いきなりひだりうでばして、うでりました。
 つながはっとおもに、おばさんはみるみるおに姿すがたになって、そらがりました。そしてつなかたなっていかけるひまに、破風はふをけやぶって、はるかのくもの中にげて行きました。
 つなはくやしがって、いつまでもそらをにらめつけていました。
 でもおにはそれなりもうふっつりと姿すがたあらわしませんでした。みやこの中でもおにのうわさはぱったりみました。





底本:「日本の英雄伝説」講談社学術文庫、講談社
   1983(昭和58)年6月10日第1刷発行
※「家来は 気の毒そうに」の空白と、「おばあさん」「おばさん」の混用は底本のままです。
入力:鈴木厚司
校正:大久保ゆう
2003年9月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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