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白い鳥(しろいとり)

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-9-1 12:15:20 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语


     二

 そうこうするうちに三ねんたちました。
 ある日伊香刀美いかとみは、いつものようにあさはやくりょうに出かけました。少女おとめ伊香刀美いかとみのおかあさんといろいろはなしをしているついでに、ふとおかあさんが、
「まあ、おまえがここへなすってからもう三ねんになるよ。月日つきひのたつのははやいものだね。」
 といいました。少女おとめはそっとためいきをつきながら、
「ほんとうにはようございますこと。」
 といいました。
「おまえいまでもてんかえりたいだろうね。」
「ええ、それははじめのうちはずいぶんかえりとうございましたが、いまでは人間にんげんらしにれて、この世界せかいきになりました。」
 とこたえながら、何気なにげなく、
「そういえば、おかあさん、あのとき羽衣はごろもはどうなったでしょうね。あれなり伊香刀美いかとみさんにおあずけしたままになっておりますが、ながあいだにいたみはしないかと、にかかります。おかあさん、あの、ちょいとでよろしゅうございますから、せてくださいませんか。おねがいです。」
 といいました。
 おかあさんは伊香刀美いかとみから、どんなことがあっても少女おとめ羽衣はごろもせてはならないと、かたくいいつけられていましたから、つよくびふるって、
「それはいけませんよ。」
 といいました。
「なぜ、いけないのでしょう。」
 と少女おとめ子供こどもらしい目をくりくりとさせて、さもふしぎそうにたずねました。
「だって羽衣はごろもせると、それをて、またてんかえってしまうでしょう。」
「まあ、わたくし、人間にんげん世界せかいがすっかりきになったともうげたではございませんか。おかあさん、おねがいです、ほんの一目ひとめればいいのですから。」
 と、少女おとめはしきりとおかあさんにあまえるようにたのんでいました。そのかわいらしい様子ようすていると、おかあさんは、なんでもそのいうとおりにしてやらなければならないようながしてきました。
「ではほんのちょいとですよ、伊香刀美いかとみにはないしょでね。」
 とおかあさんはいいながら、戸棚とだなおくにしまってあるはこしました。少女おとめむねをどきつかせながらのぞきみますと、おかあさんはそっとはこのふたをあけました。中からはぷんといいかおりがたって、羽衣はごろもはそっくりもとのままで、きれいにたたんでれてありました。
「まあ、そっくりしておりますのね。」
 と少女おとめは目をかがやかしながらていましたが、
「でも、もしどこかいたんでいやしないかしら。」
 というなり、はこの中の羽衣はごろもを手にりました。そしておかあさんが「おや。」とめるひまもないうちに、手ばやく羽衣はごろもると、そのまますうっと上へがりました。
「ああ、あれあれ。」
 と、おかあさんは両手りょうてをひろげてつかまえようとしました。その少女おとめ姿すがたは、もうたかたかそらの上へがっていって、やがてえなくなりました。
 かえって伊香刀美いかとみはどんなにがっかりしたでしょう。三年前ねんまえみずうみのそばで少女おとめがしたように、あしずりをしてくやしがりましたが、かわいらしい白いとり姿すがたは、てしれない大空おおぞらのどこかにかくれてしまって、てんあいだには、いくえにもいくえにも、ふかかすみめたままはるれていきました。





底本:「日本の諸国物語」講談社学術文庫、講談社
   1983(昭和58)年4月10日第1刷発行
入力:鈴木厚司
校正:大久保ゆう
2003年9月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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