小児が転んで泣くようだ、他愛がないじゃないか。さてそうなってから、急に我ながら、世にも怯えた声を出して、 (わっ。)と云ってな、三反ばかり山路の方へ宙を飛んで遁出したと思え。 はじめて夢が覚めた気になって、寒いぞ、今度は。がちがち震えながら、傍目も触らず、坊主が立ったと思う処は爪立足をして、それから、お前、前の峰を引掻くように駆上って、……ましぐらにまた摺落ちて、見霽しへ出ると、どうだ。夜が明けたように広々として、崖のはずれから高い処を、乗出して、城下を一人で、月の客と澄まして視めている物見の松の、ちょうど、赤い旗が飛移った、と、今見る処に、五日頃の月が出て蒼白い中に、松の樹はお前、大蟹が海松房を引被いて山へ這出た形に、しっとりと濡れて薄靄が絡っている。遥かに下だが、私の町内と思うあたりを……場末で遅廻りの豆腐屋の声が、幽に聞えようというのじゃないか。 話にならん。いやしくも小児を預って教育の手伝もしようというものが、まるで狐に魅まれたような気持で、……家内にさえ、話も出来ん。 帰って湯に入って、寝たが、綿のように疲れていながら、何か、それでも寝苦くって時々早鐘を撞くような音が聞えて、吃驚して目が覚める、と寝汗でぐっちょり、それも半分は夢心地さ。 明方からこの風さな。」 「正寅の刻からでござりました、海嘯のように、どっと一時に吹出しましたに因って存じておりまする。」と源助の言つき、あたかも口上。何か、恐入っている体がある。 「夜があけると、この砂煙。でも人間、雲霧を払った気持だ。そして、赤合羽の坊主の形もちらつかぬ。やがて忘れてな、八時、九時、十時と何事もなく課業を済まして、この十一時が読本の課目なんだ。 な、源助。 授業に掛って、読出した処が、怪訝い。消火器の説明がしてある、火事に対する種々の設備のな。しかしもうそれさえ気にならずに業をはじめて、ものの十分も経ったと思うと、入口の扉を開けて、ふらりと、あの児が入って来たんだ。」 「へい、嬢ちゃん坊ちゃんが。」 「そう。宮浜がな。おや、と思った。あの児は、それ、墨の中に雪だから一番目に着く。……朝、一二時間ともちゃんと席に着いて授業を受けたんだ。――この硝子窓の並びの、運動場のやっぱり窓際に席があって、……もっとも二人並んだ内側の方だが。さっぱり気が着かずにいた。……成程、その席が一ツ穴になっている。 また、箸の倒れた事でも、沸返って騒立つ連中が、一人それまで居なかったのを、誰もいッつけ口をしなかったも怪いよ。 ふらりと廊下から、時ならない授業中に入って来たので、さすがに、わっと動揺めいたが、その音も戸外の風に吹攫われて、どっと遠くへ、山へ打つかるように持って行かれる。口や目ばかり、ばらばらと、動いて、騒いで、小児等の声は幽に響いた。……」
六
「私も不意だから、変に気を抜かれたようになって、とぼんと、あの可愛らしい綺麗な児を見たよ。 密と椅子の傍へ来て、愛嬌づいた莞爾した顔をして、 (先生、姉さんが。) と云う。――姉さんが来て、今日は火が燃える、大火事があって危ないから、早仕舞にしてお帰りなさい。先生にそうお願いして、と言いますから……家へ帰らして下さい、と云うんです。含羞む児だから、小さな声して。 風はこれだ。 聞えないで僥倖。ちょっとでも生徒の耳に入ろうものなら、壁を打抜く騒動だろう。 もうな、火事と、聞くと頭から、ぐらぐらと胸へ響いた。 騒がぬ顔して、皆には、宮浜が急に病気になったから今手当をして来る。かねて言う通り静にしているように、と言聞かしておいて、精々落着いて、まず、あの児をこの控所へ連れ出して来たんだ。 処で、気を静めて、と思うが、何分、この風が、時々、かっと赤くなったり、黒くなったりする。な源助どうだ。こりゃ。」 と云う時、言葉が途切れた。二人とも目を据えて瞻るばかり、一時、屋根を取って挫ぐがごとく吹き撲る。 「気が騒いでならんが。」 と雑所は、しっかと腕組をして、椅子の凭りに、背中を摺着けるばかり、びたりと構えて、 「よく、宮浜に聞いた処が、本人にも何だか分らん、姉さんというのが見知らぬ女で、何も自分の姉という意味では無いとよ。 はじめて逢ったのかと、尋ねる、とそうではない。この七日ばかり前だそうだ。 授業が済んで帰るとなる、大勢列を造って、それな、門まで出る。足並を正さして、私が一二と送り出す…… すると、この頃塗直した、あの蒼い門の柱の裏に、袖口を口へ当てて、小児の事で形は知らん。頭髪の房々とあるのが、美しい水晶のような目を、こう、俯目ながら清しゅうって、列を一人一人見遁すまいとするようだっけ。 物見の松はここからも見える……雲のようなはそればかりで、よくよく晴れた暖い日だったと云う……この十四五日、お天気続きだ。 私も、毎日門外まで一同を連出すんだが、七日前にも二日こっちも、ついぞ、そんな娘を見掛けた事はない。しかもお前、その娘が、ちらちらと白い指でめんない千鳥をするように、手招きで引着けるから、うっかり列を抜けて、その傍へ寄ったそうよ。それを私は何も知らん。 (宮浜の浪ちゃんだねえ。) とこの国じゃない、本で読むような言で聞くとさ。頷くと、 (好いものを上げますから私と一所に、さあ、行きましょう、皆に構わないで。) と、私等を構わぬ分に扱ったは酷い! なあ、源助。 で、手を取られるから、ついて行くと、どこか、学校からさまで遠くはなかったそうだ。荒れには荒れたが、大きな背戸へ裏木戸から連込んで、茱萸の樹の林のような中へ連れて入った。目のも赤らむまで、ほかほかとしたと云う。で、自分にも取れば、あの児にも取らせて、そして言う事が妙ではないか。 (沢山お食んなさいよ。皆、貴下の阿母さんのような美しい血になるから。) と言ったんだそうだ。土産にもくれた。帰って誰が下すった、と父にそう言いましょうと、聞くと、 (貴下のお亡なんなすった阿母のお友だちです。) と言ったってな。あの児の母親はなくなった筈だ。 が、ここまではとにかく無事だ、源助。 その婦人が、今朝また、この学校へ来たんだとな。」 源助は、びくりとして退る。 「今度は運動場。で、十時の算術が済んだ放課の時だ。風にもめげずに皆駆出すが、ああいう児だから、一人で、それでも遊戯さな……石盤へこう姉様の顔を描いていると、硝子戸越に……夢にも忘れない……その美しい顔を見せて、外へ出るよう目で教える……一度逢ったばかりだけれども、小児は一目顔を見ると、もうその心が通じたそうよ。」
七
「宮浜はな、今日は、その婦人が紅い木の実の簪を挿していた、やっぱり茱萸だろうと云うが、果物の簪は無かろう……小児の目だもの、珊瑚かも知れん。 そんな事はとにかくだ。 直ぐに、嬉々と廊下から大廻りに、ちょうど自分の席の窓の外。その婦人の待っている処へ出ると、それ、散々に吹散らされながら、小児が一杯、ふらふらしているだろう。 源助、それ、近々に学校で――やがて暑さにはなるし――余り青苔が生えて、石垣も崩れたというので、井戸側を取替えるに、石の大輪が門の内にあったのを、小児だちが悪戯に庭へ転がし出したのがある。――あれだ。 大人なら知らず、円くて辷るにせい、小児が三人や五人ではちょっと動かぬ。そいつだが、婦人が、あの児を連れて、すっと通ると、むくりと脈を打ったように見えて、ころころと芝の上を斜違いに転がり出した。 (やあい、井戸側が風で飛ばい。)か、何か、哄と吶喊を上げて、小児が皆それを追懸けて、一団に黒くなって駆出すと、その反対の方へ、誰にも見着けられないで、澄まして、すっと行ったと云うが、どうだ、これも変だろう。 横手の土塀際の、あの棕櫚の樹の、ばらばらと葉が鳴る蔭へ入って、黙って背を撫でなぞしてな。 そこで言聞かされたと云うんだ。 (今に火事がありますから、早く家へお帰んなさい、先生にそう云って。でも学校の教師さん、そんな事がありますかッて肯きなさらないかも知れません。黙ってずんずん帰って可うござんす。怪我には替えられません。けれども、後で叱られると不可ませんから、なりたけお許しをうけてからになさいましよ。 時刻はまだ大丈夫だとは思いますが、そんな、こんなで帰りが遅れて、途中、もしもの事があったら、これをめしあがれよ。そうすると烟に捲かれませんから。) とそう云ってな。……そこで、袂から紙包みのを出して懐中へ入れて、圧えて、こう抱寄せるようにして、そして襟を掻合せてくれたのが、その茱萸なんだ。 (私がついていられると可いんだけれど、姉さんは、今日は大事な日ですから。) と云う中にも、風のなぐれで、すっと黒髪を吹いて、まるで顔が隠れるまで、むらむらと懸る、と黒雲が走るようで、はらりと吹分ける、と月が出たように白い頬が見えたと云う…… けれども、見えもせぬ火事があると、そんな事は先生には言憎い、と宮浜が頭を振ったそうだ。 (では、浪ちゃんは、教師さんのおっしゃる事と、私の言う事と、どっちをほんとうだと思います。――) こりゃ小児に返事が出来なかったそうだが、そうだろう……なあ、無理はない、源助。 (先生のお言に嘘はありません。けれども私の言う事はほんとうです……今度の火事も私の気でどうにもなる。――私があるものに身を任せれば、火は燃えません。そのものが、思の叶わない仇に、私が心一つから、沢山の家も、人も、なくなるように面当てにしますんだから。 まあ、これだって、浪ちゃんが先生にお聞きなされば、自分の身体はどうなってなりとも、人も家も焼けないようにするのが道だ、とおっしゃるでしょう。 殿方の生命は知らず、女の操というものは、人にも家にもかえられぬ。……と私はそう思うんです。そう私が思う上は、火事がなければなりません。今云う通り、私へ面当てに焼くのだから。 まだ私たち女の心は、貴下の年では得心が行かないで、やっぱり先生がおっしゃるように、我身を棄てても、人を救うが道理のように思うでしょう。 いいえ、違います……殿方の生命は知らず。) と繰返して、 (女の操というものは。)と熟と顔を凝視めながら、 (人にも家にも代えられない、と浪ちゃん忘れないでおいでなさい。今に分ります……紅い木の実を沢山食べて、血の美しく綺麗な児には、そのかわり、火の粉も桜の露となって、美しく降るばかりですよ。さ、いらっしゃい、早く。気を着けて、私の身体も大切な日ですから。) と云う中にも、裾も袂も取って、空へ頭髪ながら吹上げそうだったってな。これだ、源助、窓硝子が波を打つ、あれ見い。」
八
雑所先生は一息吐いて、 「私が問うのに答えてな、あの宮浜はかねて記憶の可い処を、母のない児だ。――優しい人の言う事は、よくよく身に染みて覚えたと見えて、まるで口移しに諳誦をするようにここで私に告げたんだ。が、一々、ぞくぞく膚に粟が立った。けれども、その婦人の言う、謎のような事は分らん。 そりゃ分らんが、しかし詮ずるに火事がある一条だ。 (まるで嘘とも思わんが、全く事実じゃなかろう、ともかく、小使溜へ行って落着いていなさい、ちっと熱もある。) 額を撫でて見ると熱いから、そこで、あの児をそららへ遣ってよ。 さあ、気になるのは昨夜の山道の一件だ。……赤い猿、赤い旗な、赤合羽を着た黒坊主よ。」 「緋、緋の法衣を着たでござります、赤合羽ではござりません。魔、魔の人でござりますが。」とガタガタ胴震いをしながら、躾めるように言う。 「さあ、何か分らぬが、あの、雪に折れる竹のように、バシリとした声して……何と云った。 (城下を焼きに参るのじゃ。) 源助、宮浜の児を遣ったあとで、天窓を引抱えて、こう、風の音を忘れるように沈と考えると、ひょい、と火を磨るばかりに、目に赤く映ったのが、これなんだ。」 と両手で控帳の端を取って、斜めに見せると、楷書で細字に認めたのが、輝くごとく、もそりと出した源助の顔に赫ッと照って見えたのは、朱で濃く、一面の文字である。 「へい。」 「な、何からはじまった事だか知らんが、ちょうど一週間前から、ふと朱でもって書き続けた、こりゃ学校での、私の日記だ。 昨日は日曜で抜けている。一週間。」 と颯と紙が刎ねて、小口をばらばらと繰返すと、戸外の風の渦巻に、一ちぎれの赤い雲が卓子を飛ぶ気勢する。 「この前の時間にも、(暴風)に書いて消して(烈風)をまた消して(颶風)なり、と書いた、やっぱり朱で、見な…… しかも変な事には、何を狼狽たか、一枚半だけ、罫紙で残して、明日の分を、ここへ、これ(火曜)としたぜ。」 と指す指が、ひッつりのように、びくりとした。 「読本が火の処……源助、どう思う。他の先生方は皆な私より偉いには偉いが年下だ。校長さんもずッとお少い。 こんな相談は、故老に限ると思って呼んだ。どうだろう。万一の事があるとなら、あえて宮浜の児一人でない。……どれも大事な小児たち――その過失で、私が学校を止めるまでも、地を踏んでなりと直ぐに生徒を帰したい。が、何でもない事のようで、これがまた一大事だ。いやしくも父兄が信頼して、子弟の教育を委ねる学校の分として、婦、小児や、茱萸ぐらいの事で、臨時休業は沙汰の限りだ。 私一人の間抜で済まん。 第一そような迷信は、任として、私等が破って棄ててやらなけりゃならんのだろう。そうかッてな、もしやの事があるとすると、何より恐ろしいのはこの風だよ。ジャンと来て見ろ、全市瓦は数えるほど、板葺屋根が半月の上も照込んで、焚附同様。――何と私等が高台の町では、時ならぬ水切がしていようという場合ではないか。土の底まで焼抜けるぞ。小児たちが無事に家へ帰るのは十人に一人もむずかしい。 思案に余った、源助。気が気でないのは、時が後れて驚破と言ったら、赤い実を吸え、と言ったは心細い――一時半時を争うんだ。もし、ひょんな事があるとすると――どう思う、どう思う、源助、考慮は。」 「尋常、尋常ごとではござりません。」と、かッと卓子に拳を掴んで、 「城下の家の、寿命が来たんでござりましょう、争われぬ、争われぬ。」 と半分目を眠って、盲目がするように、白眼で首を据えて、天井を恐ろしげに視めながら、 「ものはあるげにござりまして……旧藩頃の先主人が、夜学の端に承わります。昔その唐の都の大道を、一時、その何でござりまして、怪しげな道人が、髪を捌いて、何と、骨だらけな蒼い胸を岸破々々と開けました真中へ、人、人という字を書いたのを掻開けて往来中駆廻ったげでござります。いつかも同役にも話した事でござりまするが、何の事か分りません。唐の都でも、皆なが不思議がっておりますると、その日から三日目に、年代記にもないほどな大火事が起りまして。」 「源助、源助。」 と雑所大きに急いて、 「何だ、それは。胸へ人という字を書いたのは。」とかかる折から、自分で考えるのがまだるこしそうであった。 「へい、まあ、ちょいとした処、早いが可うございます。ここへ、人と書いて御覧じゃりまし。」 風の、その慌しい中でも、対手が教頭心得の先生だけ、もの問れた心の矜に、話を咲せたい源助が、薄汚れた襯衣の鈕をはずして、ひくひくとした胸を出す。 雑所も急心に、ものをも言わず有合わせた朱筆を取って、乳を分けて朱い人。と引かれて、カチカチと、何か、歯をくいしめて堪えたが、突込む筆の朱が刎ねて、勢で、ぱっと胸毛に懸ると、火を曳くように毛が動いた。 「あ熱々!」 と唐突に躍り上って、とんと尻餅を支くと、血声を絞って、 「火事だ! 同役、三右衛門、火事だ。」と喚く。 「何だ。」 と、雑所も棒立ちになったが、物狂わしげに、 「なぜ、投げる。なぜ茱萸を投附ける。宮浜。」 と声を揚げた。廊下をばらばらと赤く飛ぶのを、浪吉が茱萸を擲つと一目見たのは、矢を射るごとく窓硝子を映す火の粉であった。 途端に十二時、鈴を打つのが、ブンブンと風に響くや、一つずつ十二ヶ所、一時に起る摺半鉦、早鐘。 早や廊下にも烟が入って、暗い中から火の空を透かすと、学校の蒼い門が、真紫に物凄い。 この日の大火は、物見の松と差向う、市の高台の野にあった、本願寺末寺の巨刹の本堂床下から炎を上げた怪し火で、ただ三時が間に市の約全部を焼払った。 烟は風よりも疾く、火は鳥よりも迅く飛んだ。 人畜の死傷少からず。 火事の最中、雑所先生、袴の股立を、高く取ったは効々しいが、羽織も着ず……布子の片袖引断れたなりで、足袋跣足で、据眼の面藍のごとく、火と烟の走る大道を、蹌踉と歩行いていた。 屋根から屋根へ、――樹の梢から、二階三階が黒烟りに漾う上へ、飜々と千鳥に飛交う、真赤な猿の数を、行く行く幾度も見た。 足許には、人も車も倒れている。 とある十字街へ懸った時、横からひょこりと出て、斜に曲り角へ切れて行く、昨夜の坊主に逢った。同じ裸に、赤合羽を着たが、こればかりは風をも踏固めて通るように確とした足取であった。 が、赤旗を捲いて、袖へ抱くようにして、いささか逡巡の体して、 「焼け過ぎる、これは、焼け過ぎる。」 と口の裡で呟いた、と思うともう見えぬ。顔を見られたら、雑所は灰になろう。 垣も、隔ても、跡はないが、倒れた石燈籠の大なのがある。何某の邸の庭らしい中へ、烟に追われて入ると、枯木に夕焼のしたような、火の幹、火の枝になった大樹の下に、小さな足を投出して、横坐りになった、浪吉の無事な姿を見た。 学校は、便宜に隊を組んで避難したが、皆ちりちりになったのである。 と見ると、恍惚した美しい顔を仰向けて、枝からばらばらと降懸る火の粉を、霰は五合と掬うように、綺麗な袂で受けながら、 「先生、沢山に茱萸が。」 と云って、長けるまで莞爾した。 雑所は諸膝を折って、倒れるように、その傍で息を吐いた。が、そこではもう、火の粉は雪のように、袖へ掛っても、払えば濡れもしないで消えるのであった。
明治四十四(一九一一)年一月
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