他人のあくびにつられてあくびをするのは人に限りません。チンパンジーも一緒です――。こんな研究を、京都大霊長類研究所などのチームが英王立科学アカデミー紀要電子版の最新号に報告した。しかも子どもではあくびが「伝染」しないことも人と同じ。自分と他人の識別や、他人への共感といった感情の進化を探るのに役立ちそうだ。
霊長類研の松沢哲郎教授や、英スターリング大のジェームズ・アンダーソン教授らが、霊長類研のアイやマリなど19歳以上のメスのチンパンジー6頭を対象に調べた。
6頭のうちの1頭と野生のチンパンジーがあくびを約10回するビデオと、単に口を大きく開けただけのビデオをそれぞれ3分間ずつ見せ、その後も3分間様子を観察した。
その結果、口を開けただけのビデオを見てあくびをした回数は平均4.7回だったのに、あくびのビデオを見たときは同10回あくびが出て「伝染」しているのがわかった。とくにアイは2回だったのが24回に、マリも9回が25回に増えた。
3歳の子ども3頭は、どのビデオを見ても一度もあくびをしなかった。
アンダーソン教授らが人で同様の実験をしたところ、大人ではあくびのビデオでほぼ半数に伝染した。4歳以下の子どもには伝染しなかった。
松沢教授は「あくびの伝染は、自己と他者を区別する能力はもちろん、他者の行動にある種の共感を覚えないと起こらないなど、かなりの知性を必要とする。類人猿のチンパンジーにもそれが備わっている新たな証拠だろう」と話す。 (07/24 09:14) |