携帯電話機の国内加入者数が8000万を上回り、新規加入者の大幅増が見込めにくくなってきた。今後、携帯電話機の国内生産台数を伸ばし続けるには、国内市場にとどまっているわけにはいかない。国内メーカーも世界市場に打って出ることが求められている。
幸い、国内メーカーは海外メーカーにない利点がある。「iモード」に代表されるコンテンツ・サービスや3Gなど、新サービスに向けた端末の豊富な開発実績だ。Samsung社は日本メーカーと同様に、韓国国内でコンテンツ・サービス対応端末や3G端末を手掛けた実績がある。しかし、それ以外のメーカーは、ようやくカメラ付き携帯電話機を多機種展開し始めた段階だ。技術面では日本メーカーに分がある。
大手メーカーはこの商機を逃すまいと、海外事業の比率を高めるべく躍起になっている。先行するのは三洋電機だ。同社は携帯電話機の総出荷台数こそNECやパナソニック モバイルコミュニケーションズに劣るが、海外市場向け端末の出荷台数ではNECを上回り、パナソニック モバイルに次ぐ地位を確保している。
三洋電機が目指すのは米国市場だ。KDDI向けの端末供給で培ったCDMA端末の開発経験を生かし、同方式を採用する米Sprint Corp.に対応端末を供給している。
三洋電機の携帯電話機の輸出比率は、2001年度は約3割だったが、その後輸出比率を順調に伸ばし、2003年度には生産した976万台のうち、半数以上が海外市場向けとなった。同社では「2004年度の携帯電話機生産目標は1350万台。主に海外での販路拡大を図り、海外向け比率を6割に高めたい」と積極策を採る。
中国で設計、中国で販売
NECは、海外市場開拓の重点を中国に置く。中国は13億人の人口を抱える一方で、現在の携帯電話加入数は約2億8000万契約。日本や欧米などに比べれば開拓の余地は大きい。2005年には3Gの商用サービスが始まり、新規加入、買い替え需要の両方が見込める。
NECは地元企業と共同で、北京に携帯電話機の設計会社を設立。さらに、基礎研究から商品企画、ソフトウエア開発まで、設計から製造、販売に至る作業のほとんどを現地で進める体制を整えた。当面は2GのGSM方式で市場開拓を積極的に進め、3Gのサービス開始までに一定の地位を確保することを目指す。同社の海外市場向け携帯電話機出荷台数は、2002年度には90万台だったが、2003年度は5倍の450万台に達した。さらに2004年度は、950万台の海外向け出荷を計画している。海外での生産分は国内の生産実績に反映されないとはいえ、日本メーカーの競争力向上につながる可能性を秘める。
パナソニック モバイルも、積極的に中国市場を攻める姿勢を見せる。小型の端末が好まれる中国市場に向けて、2003年に筐体を小型化した新機種を開発、中国国内の合弁工場などで生産する。女性ユーザーをターゲットに想定し、個性的なデザインと色遣いを施した。
さらにパナソニック モバイルは、3Gの本格展開に備え、中国市場向けPHS端末の販売で最大手の米UT Starcom、 Inc.と提携した。共同出資で3Gの基地局設備などを開発する会社を設立した。中国の通信事業者と密接な関係にある同社と組むことで、中国の3Gサービスに向けた布石とする考えだ。 |