シャープが、紙のように薄く、曲げたり筒状にしたりできる太陽電池を開発した。年内の量産開始を目指す。太陽光をどのくらい電気に変えるかを示す「変換効率」は28.5%。住宅に取りつける多結晶シリコンの太陽電池が14%程度とされるのに比べ、飛躍的に効率を上げた。携帯電話、衣類、自動車などに付け、移動しながら電化製品に電力を供給することが可能になるといい、太陽電池の普及を加速させそうだ。
シャープが開発した紙のように薄い「化合物フレキシブル太陽電池」
シャープは6月4日、この新技術をパリで開かれる国際会議で発表する。
同社は変換効率が高いため、人工衛星などに使われる「単結晶化合物」の太陽電池技術を応用した。この「単結晶」だと通常、厚みは約200マイクロメートル(マイクロメートルは1000分の1ミリ)。だがシャープは、半導体の配線部品や土台を組み込まなくても、いったん取りつけてはがすだけで半導体の働きをする基板技術を開発、厚みを1~3マイクロメートルに抑えた。重さも100分の1。「化合物フレキシブル太陽電池」と名づけている。
名刺を2枚合わせた大きさの重さは約1グラム、発電量は2.6ワット。1グラムあると自転車ライトの電力がまかなえる。電極をつなぎ、カーテンやテントの素材として日光を遮りながら発電したり、自動車の外面にはったり、円柱に巻き付けたりして使うことも可能。蓄電池と接続し、携帯電話などの充電に役立てることもできるようになる。
シャープは今後、針を刺すなどして穴があくと壊れやすい点を改善し、年内にもサンプル(見本)出荷を始める方針。価格は需要動向と生産規模を見極めたうえで決めるが、1~2年以内に名刺大で1000円程度を目指す。
薄型の太陽電池は、国内外のメーカーが開発中。主流のシリコンのほか、花などの色素を使う色素増感型があるが、変換効率の低さが課題だった。
同社の富田孝司・ソーラーシステム事業部長は「太陽電池の普及加速と、石油資源への依存度軽減に役立ちたい」と話している。 (05/28 16:21)
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