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非人道的な講和条件(ひじんどうてきなこうわじょうけん)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-11-22 10:41:58 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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政治家や実業家は便宜主義を重んじる習慣の中に生きています。便宜主義は一時的のものです。それが必ずしも正義と一致して永久の価値を持っているとは限りません。否、むしろ正義に 現代では、便宜主義の習慣から解放されていると否とで、真の政治家であるか、真の実業家であるか否かが判断されます。目前の功利さえ挙げれば、その行為が道理に合っても合わないでも構わないという態度は時代遅れです。 政界や実業界には、こういう時代遅れの態度を持った人たちがまだ全く勢力を占めています。彼らは個人的にも国家的にも、唯だ利己主義的な欲望さえ満足すれば好いので、それ以上の高遠な理想を持っていませんから、正義は要するに鬼の 昔から便宜主義に反対する者は学者と芸術家です。世を挙げて目前の利害を追うに急であっても、せめて学者と芸術家だけは便宜主義の習慣から超越して、常に正義人道の主張者であり擁護者であって欲しいと思います。それでこそ思想家や詩人は人類の指導者たることも出来、進化して止まない人文生活の冒険者たることも出来るのです。 私は今日まで人道平和の理想を基礎としかつ国際連盟を前提とする講和会議を期待していました。かつてウィルソンの十四カ条を読んだ時から、今度の講和は従来のそれとは全く異って、――戦勝的国家と戦敗的国家との間に、一方は強圧を以て望み、一方は屈辱を以て対するという関係でなく、――連合国側の人民と独墺側の人民とが互に敵味方の国境的、階級的、差別的、尊卑的の感情を忘れ、戦勝者の持つ しかるに何という怖ろしい事でしょう。連合国に依って提示された講和条件は、世界に文字があって以来どの国の書物にも書かれたことのない、人間の持っている極度の復讐心と、極度の 敵を愛せよという かつて戦争中に公にされたウィルソンのいくつかの宣言の中には、連合国は専ら独逸の軍閥政府と軍国主義とを敵とし、それを これが果して正義人道の実現でしょうか。世界を民主主義化する公平な方法でしょうか。 この事は独逸人の事として考えてはなりません。全く人間の問題です。個人的の利己主義を排し、刑法上の報復主義を 世界の感情は今病的に極端から極端へ それにつけても、日本の道徳論者はなぜ沈黙しているのでしょうか。彼らが平生よく国民に向って教える所のいわゆる日本固有の道徳は、欧米の 論壇には (『横浜貿易新報』一九一九年五月二十五日) 底本:「与謝野晶子評論集」岩波文庫、岩波書店 1985(昭和60)年8月16日初版発行 1994(平成6年)年6月6日10刷発行 底本の親本:「激動の中を行く」アルス 1919(大正8)年8月初版発行 入力:Nana ohbe 校正:門田裕志 2002年5月14日作成 青空文庫ファイル: このファイルはインターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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