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青空はブルーブラツク 三日月は死の唄を書く ペン先かいな
大理石の伽藍の如き頭蓋骨が 荘厳に微笑む 南極の海
ほの暗く はるかな国離れ来て 桐の若葉に さゆらぐ悪魔
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わが罪の思ひ出に似た 貨物車が犇きよぎる 白の陽の下
ぬかるみは果てしもあらず 微笑して 彼女の文を千切り棄てゆく
ニヤ/\と微笑しながら跟いて来る もう一人の我を 振返る夕暮
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日も出でず 月も入らざる地平線が 心の涯にいつも横たはる
うなだれて 小暗き町へ迷ひ入り 獣の如く呻吟してみる
社長室の片隅に 黒く凋れ行く 赤いタイピストの形見のチユーリツプ
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体温器窓に透かして眺め入る 死に度いと思ふ 心を透かし見る
タツタ一つ 罪悪を知らぬ瞳があつた 残虐不倫な狂女の瞳だつた
冬空が絶壁の様に屹立してゐる そのコチラ側に 罪悪が在る
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無限に利く望遠鏡を 覗いてみた 自分の背中に蠅が止まつてゐた
真鍮製の向日葵の花を 庭に植ゑた 彼の太陽を停止させる為
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おしろいの夜の香よりも 真黒なる夜の血の香を 恋し初めしか
失恋した男の心が 剃刀でタンポヽの花を 刻んで居るも
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世の中の坊主が 足りなくなつてゆく 医学博士がアンマリ殖えるので
郊外の野山は 都会より残忍だ 静かに美しく微笑してゐるから
深海の盲目の魚が 恋しいと歌つた牧水も 死んでしまつた
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非常汽笛 汽車が止まると犯人が ニツコリ笑つて麦畑を去る
汽缶車が だん/\大きくなつて来る 菜種畑の白昼の恐怖
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毒薬と花束と 美人の死骸を積んだ フルスピードの探偵小説
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木の芽草の芽伸び上る中に 吾心伸び上りかねて 首を縊るも
波際の猫の死骸が 乾燥して薄目を開いて 夕日を見てゐる
自殺しに吾が来かゝれば 白い猫が線路の闇を ソツと横切る
春風が 先づ探偵を吹き送り アトから悠々と犯人を吹き送る
涯てしなく並ぶ土管が 人間の死骸を 一つ喰べ度いと云ふ
冬空にヂン/\と鳴る電線が 死報の時だけ ヒツソリとなる
犯人の帽子を 巡査が拾ひ上げて 又棄てゝ行く 春の夕暮
血のやうに黒いダリヤを 凝視して少女が ホツとため息をする
山の奥で仇讐同志がめぐり合つた 誰も居ないので 仲直りした
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殺人狂が 針の無い時計を持つてゐた 殺すたんびにネヂをかけてゐた
脳髄が二つ在つたらばと思ふ 考へてはならぬ 事を考へるため
日の光り 腹の底まで吸ひ込んで 骨となりゆく行路病人
何もかも性に帰結するフロイドが 天体鏡で 女湯を覗く
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風に散る木の葉の中の 悪党が 池の向側に高飛びをする
囚人が アハハと笑つてなぐられた アハハと笑つて囚人が死んだ
中風の姑は何でも知つてゐる 死に度いと思ふ 妾の心まで
北極に行つて帰らぬ人々が 誰よりもノンキに 欠伸してゐる
石コロが広い往来の中央で 歯噛みして居る ポンと蹴つて遣る
一里ばかり撫でまはして来た なつかしい石コロを フト池に投げ込む
●表記について
- このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。
- 「くの字点」は「/\」で、「濁点付きくの字点」は「/″\」で表しました。
- 「くの字点」をのぞくJIS X 0213にある文字は、画像化して埋め込みました。
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