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青水仙、赤水仙(あおずいせん、あかずいせん)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数2808 更新时间:2006/11/8 13:59:16 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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うた子さんは友達に教わって、水仙の根を切り割って、赤い絵の具と青い絵の具を入れて、お庭の隅に埋めておきました。早く芽が出て、赤と青の水仙の花が咲けばいいと、毎日水をやっておりましたが、いつまでも芽が出ません。 ある日、学校から帰ってすぐにお庭に来てみると、大変です。お父様がお庭中をすっかり掘り返して、畠にしておいでになります。そうしてうた子さんを見ると、 「やあ、うた子か。お父さんはうっかりして悪い事をした。お前の大切な水仙を二つとも とおあやまりになりました。 うた子さんは泣きたいのをやっと我慢して、裏の あくる日、学校から帰る時にうた子さんは、「もううちへ帰っても、水仙に水をやる事が出来ないからつまらないなあ」とシクシク泣きながら帰って来ますと、途中で二人の綺麗なお嬢さんが出て来て、なれなれしくそばへ寄って、 「あなた、なぜ泣いていらっしゃるの」 とたずねました。うた子さんがわけを話すと、それでは私たちと遊んで下さいましなと親切に云いながら、連れ立っておうちへ帰りました。 二人はほんとに静かな音なしい児でした。顔色は二人共雪のように白く、おさげに黄金の稲飾りを付けて、一人は赤の、一人は青のリボンを結んでおりました。うた子さんはすこし不思議に思って尋ねました。 「あなたたちはそんな薄い緑色の着物を着て、寒くはありませんか」 「いいえ、ちっとも」 「お名前は何とおっしゃるの」 「花子、玉子と申します」 「どこにいらっしゃるのですか」 二人は顔を見合わせてにっこり笑いました。 「この頃御近所に来たのです。どうぞ遊んで下さいましね」 うた子さんはそれから毎日、三人で 「さようなら」 と帰って行きました。お母さんは、 「ほんとに とお父さんと話し合って喜んでおいでになりました。 そのうちにお正月になりました。 うた子さんは初夢を見ようと思って寝ますと、いつも来るお嬢さんが二人揃って枕元に来て、さもうれしそうに、 「今日はおわかれに来ました」 と云いました。 うた子さんはびっくりしましたが、これはきっと夢だと思いましたから安心して、 「まあ、どこへいらっしゃるの」 と尋ねました。二人は 「今から裏の と云ううちに、二人の姿は消えてしまいました。うた子さんはハッと眼をさましましたが、この時やっと気がつきまして、 「それじゃ、水仙の精が遊びに来てくれたのか」 と、夜の明けるのを待ちかねて 底本:「夢野久作全集1」ちくま文庫、筑摩書房 1992(平成4)年5月22日第1刷発行 ※この作品は初出時に署名「 入力:柴田卓治 校正:もりみつじゅんじ 2000年1月19日公開 2003年10月24日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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