「今日はもう一日
と源氏は言って、車をそのほうへやった。桂の別荘のほうではにわかに客の
「今日は六日の謹慎日が済んだ日であるから、きっと源氏の
と仰せられた時に、嵯峨へ行っていることが奏されて、それで下された一人のお使いと同行者なのである。
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源氏物語(げんじものがたり)18 松風
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006/11/6 9:34:17 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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「今日はもう一日 と源氏は言って、車をそのほうへやった。桂の別荘のほうではにわかに客の 「今日は六日の謹慎日が済んだ日であるから、きっと源氏の と仰せられた時に、嵯峨へ行っていることが奏されて、それで下された一人のお使いと同行者なのである。 「月のすむ川の
うらやましいことだ」 これが 「たいそうでない纏頭の品があれば」 と言ってやった。 久方の光に近き名のみして朝夕霧も晴れぬ山ざと
というのが源氏の勅答の歌であった。帝の行幸を待ち奉る意があるのであろう。「中に めぐりきて手にとるばかりさやけきや淡路の島のあはと見し月
これは源氏の作である。 浮き雲にしばしまがひし月影のすみはつるよぞのどけかるべき
雲の上の住みかを捨てて
なおいろいろな人の作もあったが省略する。歌が出てからは、人々は感情のあふれてくるままに、こうした人間の愛し合う世界を千年も続けて見ていきたい気を起こしたが、二条の院を出て四日目の朝になった源氏は、今日はぜひ帰らねばならぬと急いだ。一行にいろいろな物をかついだ供の人が加わった列は、霧の間を行くのが秋草の園のようで美しかった。 二条の院に着いた源氏はしばらく休息をしながら夫人に 「あなたと約束した日が過ぎたから私は苦しみましたよ。風流男どもがあとを追って来てね、あまり留めるものだからそれに引かれていたのですよ。疲れてしまった」 と言って源氏は寝室へはいった。夫人が気むずかしいふうになっているのも気づかないように源氏は扱っていた。 「比較にならない人を競争者ででもあるように考えたりなどすることもよくないことですよ。あなたは自分は自分であると思い上がっていればいいのですよ」 と源氏は教えていた。日暮れ前に参内しようとして出かけぎわに、源氏は隠すように紙を持って手紙を書いているのは大井へやるものらしかった。こまごまと書かれている様子がうかがわれるのであった。侍を呼んで小声でささやきながら手紙を渡す源氏を女房たちは憎く思った。その晩は御所で 「これを破ってあなたの手で捨ててください。困るからね、こんな物が散らばっていたりすることはもう私に似合ったことではないのだからね」 と夫人のほうへそれを出した源氏は、 「見ないようにしていて、目のどこかであなたは見ているじゃありませんか」 と笑いながら夫人に言いかけた源氏の顔にはこぼれるような 「ほんとうはね、かわいい子を見て来たのですよ。そんな人を見るとやはり前生の縁の浅くないということが思われたのですがね、とにかく子供のことはどうすればいいのだろう。公然私の子供として扱うことも世間へ恥ずかしいことだし、私はそれで と源氏は言うのであった。 「私を意地悪な者のようにばかり決めておいでになって、これまでから私には大事なことを皆隠していらっしゃるものですもの、私だけがあなたを信頼していることも改めなければならないとこのごろは私思っています。けれども私は小さい姫君のお相手にはなれますよ。どんなにおかわいいでしょう、その方ね」 と言って、女王は少し 源氏が大井の山荘を訪うことは困難であった。 底本:「全訳源氏物語 上巻」角川文庫、角川書店 1971(昭和46)年8月10日改版初版発行 1994(平成6)年12月20日56版発行 ※このファイルは、古典総合研究所(http://www.genji.co.jp/)で入力されたものを、青空文庫形式にあらためて作成しました。 ※校正には、2002(平成14)年4月5日71版を使用しました。 入力:上田英代 校正:kumi 2003年6月9日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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