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貝殻追放(かいがらついほう)003
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-10-27 8:53:29 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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大正元年の秋海外の旅に 「三田の文人中近く海外より歸來せしもの文明を一覽して甚しく余が藝術家としての態度の不眞面目なるを攻撃したりと聞く」といふ一事より出發して先生の「文明一周年の辭」は起草せられしものなりとぞ。 三田の文人中近く海外より歸來せしものとは余の事なりと聞く。果して然らば余の迷惑之に過ぎず、捏造は新聞記者の仕事なりと思ひゐたるに、 余は曾て永井先生の藝術家としての態度を不眞面目なりと思ひたる事なければ從つて甚しく攻撃したる事あるべき理無し。先生は「攻撃するもの憚る處なく大に攻撃して可なり。吾人僅に破顏一笑せんのみ。」と云はるれど、曾て新聞記者の捏造記事に對しては破顏一笑したる余も、この度の捏造を基礎とする一文は、日頃我が尊敬する永井先生の草せられしものなるを以て如何に努力するも破顏一笑する事能はず、眞面目に申開きに及ばざれば心濟まず、 余が永井先生の御作を愛讀する事年を越えて變らず、「文明」創刊以來月の初は特に待たるる心地して、矢筈草、けふこのごろ、文反古、雨聲會の記、色なき花、支那人、腕くらべ等何れも三讀三誦し、人にむかつてこれを推稱したる事あれども不眞面目なる作品なりとて攻撃したる覺えなし。 頃日先生の所謂三田の文人、雜誌編輯の用件にて集りし席上、井川久米兩氏の間に「永井荷風論」あり、兩氏見解を異にして論爭せられし時、座に在りし余さし出口して「永井先生は自身に不眞面目がる興味をよろこべど遂に不眞面目になり得ざる事文明載する所の文章之を證して餘あり」と云へり。これ余の僞らざる感想にして、先生に此の特徴あるが爲、好んで戲文と呼ばるる文章のかへつて沈痛悲壯の調を帶べる事具眼の士の到底否み難き事實ならずや。世上先生の態度を不眞面目なりと攻撃する者はもとより多からん、然れども余は ――「文明」大正六年四月號 底本:「水上瀧太郎全集 九卷」岩波書店 1940(昭和15)年12月15日発行 入力:柳田節 校正:門田裕志 2004年12月5日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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