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すゞし(すずし)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-10-26 9:18:54 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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「すゞし」といふ語は「すが/\し」のつゞまりたるにやと覚ゆれど、意義 みな月つこもりの日よめる 躬恒
夏と秋とゆきかふ空のかよひちはかたへ涼しき風や吹くらん
秋立日うへのをのことも加茂の川原に川せうえうしけるともにまかりてよめる 貫之
川風の涼しくもあるかうちよする浪とともにや秋は立つらん 後撰集には にはかにも風の涼しくなりぬるか秋たつ日とはうへもいひけり 題しらす 安貴王
秋立ちていくかもあらねとこのねぬるあさけの風は袂涼しも などあり。此等は皆秋涼の意を詠みし者にて夏に詠みたる者無し。(秋立ちての歌は万葉にありやなしやたしかならねど若し安貴王にして万葉所載の安貴王と同人ならば万葉時代既に「すゞし」の語を用ゐたるなり) 後拾遺集に至れば 秋たつ日よめる 読人しらす
うちつけに袂すゞしくおぼゆるは衣に秋のきたるなりけり などいふ秋の歌の外に 宇治前太政大臣家に三十講の後歌合し侍りけるによみ侍りける 民部卿長家
夏の夜もすゞしかりけり月影は庭しろたへの霜と見えつゝ
夏の夜涼しき心をよみ侍りける 堀河右大臣
ほともなく夏のすゞしくなりぬるは人にしられて秋やきぬらん
くれの夏有明の月をよめる 内大臣
夏の夜の有明の月を見る程に秋をもまたて風そすゝしき
泉の声夜に入て涼しといふ心をよみ侍りける 源師賢朝臣
さ夜深き岩井の水の音きけはむすはぬ袖も涼しかりけり など夏に涼しといへる歌多く載せられぬ。霜といひ秋といひて「涼し」と結びたるは猶秋の意を離れねど「さ夜深き」の歌は秋とも霜ともいはで只「涼し」といひたるにて此語の稍夏に用ゐ初められたるを見るべし。 又同じ集に 題しらす 曾根好忠
とあり。此時既に「すゞむ」いふ動詞も出来たり。 金葉集にも みそきするみきはに風の涼しきは一夜をこめて秋やきぬらん
百首歌の中に秋立心をよめる 春宮大夫公実
とことはにふく夕くれの風なれと秋たつ日こそ涼しかりけれ の外に 水風暮涼といへる事をよめる 源俊頼朝臣
風ふけは といふ夏の歌を載せたり。此より後今日に至る迄歌には初秋にも涼しといひ又盛夏にも涼しといひ両様の意味に用うる事とはなりたり。 連歌及び俳句にては「涼し」「涼風」「涼み」などを夏季と定め、秋季には特に「秋涼」「初涼」「新涼」等の語を用うる事と定まりぬ、蓋し「すゞし」といふ語は初め 三伏の暑気退きて秋涼漸く至る の意に用ゐられたる者が、後には 三伏の暑気灼くが如き中に(風又は水等のために)特に涼しく感ず るの意に変じたるなり。 底本:「日本の名随筆37 風」作品社 1985(昭和60)年11月25日第1刷発行 1997(平成9)年2月20日第13刷発行 底本の親本:「子規全集 第一二巻」講談社 1975(昭和50)年10月発行 ※底本では「 入力:門田裕志 校正:土屋隆 2004年6月29日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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