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氷島(ひょうとう)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-10-23 9:28:28 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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――朗吟のために―― 品川沖觀艦式 低き灰色の空の下に 軍艦の列は横はれり。 暗憺として錨をおろし みな重砲の城の如く 無言に沈鬱して見ゆるかな。 曇天暗く 埠頭に觀衆の群も散りたり。 しだいに暮れゆく海波の上 既に分列の任務を終へて 冬の日沖に荒れむとして 浪は舷側に凍り泣き 錆は鐵板に食ひつけども 軍艦の列は動かんとせず 蒼茫たる海洋の上 彼等の叫び、渇き、熱意するものを強く持せり。 火 赤く燃える火を見たり 汝は沈默して言はざるかな。 夕べの靜かなる都會の空に 炎は美しく燃え出づる たちまち流れはひろがり行き 瞬時に一切を亡ぼし盡せり。 資産も、工場も、大建築も 希望も、榮譽も、富貴も、野心も すべての一切を燒き盡せり。 火よ いかなれば 汝は沈默して言はざるかな。 さびしき憂愁に閉されつつ かくも靜かなる薄暮の空に 汝は熱情を思ひ盡せり。 ひとり來りて 青き 君待ちかねて悲しめど 君が夢には無きものを なに 壁に映りて消え行けり。 壁に映りて過ぎ行けり。 「なに
小出新道 ここに道路の新開せるは 直として市街に通ずるならん。 われこの新道の交路に立てど さびしき 暗鬱なる日かな 天日家竝の軒に低くして 林の雜木まばらに伐られたり。 いかんぞ いかんぞ思惟をかへさん われの叛きて行かざる道に 新しき樹木みな伐られたり。 ――郷土望景詩―― 告別 汽車は出發せんと欲し いま遠き 汽車は國境を越え行かんとす。 人のいかなる愛着もて かくも機關車の火力されたる 烈しき熱情をなだめ得んや。 驛路に見送る人人よ 悲しみの底に齒がみしつつ 告別の傷みに破る勿れ。 汽車は出發せんと欲して すさまじく蒸氣を噴き出し 裂けたる如くに吠え叫び 汽笛を鳴らし吹き鳴らせり。 動物園にて 灼きつく如く寂しさ迫り ひとり來りて園内の木立を行けば 枯葉みな地に落ち 猛獸は檻の中に憂ひ眠れり。 彼等みな忍從して 人の投げあたへる肉を食らひ 本能の蒼き 鐵鎖のつながれたる惱みをたへたり。 暗鬱なる日かな! わがこの園内に來れることは 彼等の動物を見るに非ず われは心の檻に閉ぢられたる 飢餓の苦しみを忍び怒れり。 百たびも牙を鳴らして われの欲情するものを噛みつきつつ さびしき復讐を戰ひしかな! いま秋の日は暮れ行かむとし 風は人氣なき小徑に散らばひ吹けど ああ我れは尚鳥の如く 無限の寂寥をも飛ばざるべし。 中學の校庭 われの中學にありたる日は 艶めく情熱になやみたり。 怒りて書物を投げすて ひとり校庭の草に寢ころび居しが なにものの哀傷ぞ はるかに 天日直射して 熱く帽子の ――郷土望景詩―― 國定忠治の墓 わがこの村に來りし時 上州の蠶すでに終りて 農家みな冬の 太陽は埃に暗く 人生の貧しき慘苦を感ずるなり。 見よ 此處に無用の石 路傍の笹の風に吹かれて ああ我れ故郷に低徊して 此所に思へることは寂しきかな。 久遠に輪を斷絶するも ああかの荒寥たる平野の中 日月我れを投げうつて去り 意志するものを亡び盡せり。 いかんぞ殘生を新たにするも 冬の蕭條たる墓石の下に 汝はその認識をも無用とせむ。 ――上州國定村にて―― 廣瀬川 廣瀬川白く流れたり 時されば皆幻想は消え行かむ。 われの 過去の日川邊に糸をたれしが ああかの幸福は遠きにすぎさり ――郷土望景詩――
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