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コーカサスの禿鷹(コーカサスのはげたか)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-10-13 7:01:17 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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一 コーカサスに、一匹の大きな 「自分は仲間の誰よりも、体が大きく、力が強く、知恵もあるので、みんなから尊敬されている。そこで一つ そして彼はいろいろ考えた末、国中の一番高い山の頂に、立派な岩屋を探して、そこに住居を定めようとしました。 ところがいよいよとなると、どれが国中で一番高い山か、さらに見当がつきませんでした。一番高そうな山の上に立って、四方を見渡しますと、向こうの山の方がもっと高そうに思われますし、その山の上へ飛んでゆくと、また向こうにもっと高そうな山が見えます。そしてあちらこちらと、山から山へ飛び移ってるうちに、体が疲れてくるし、気持ちはいらいらしてくるし、どれが一番高い山だかさっぱりわからなくなりました。 「こんなじゃとてもわかりっこない。誰かに聞かなくちゃ そう思いついて彼は、ある山のうえに飛んでいって、大きな岩の上にとまって、山の 「もしもし、ちょっとおたずねしますが、国中で一番高い山はどの山でしょうか」 すると、岩の中の方から大きな声がしました。 「俺だ」 禿鷹はびっくりしました。これが国中で一番高い山だったのかしら、と思ってあたりを見渡しますと、どうも向こうの山の方が高そうな気がします。それでなおも一つの山の霊に聞いてみたくなって、向こうの山へ飛んでゆきました。 「もしもし、国中で一番高い山はどの山でしょうか」 すると、その山の霊が岩の中から答えました。 「俺だ」 禿鷹はまたびっくりしました。そして、も一つ他の山にたずねてみようと思って、その方へ飛んでゆきました。 「もしもし、国中で一番高い山はどの山でしょうか」 「 そこで さあ禿鷹は困ってしまいました。山自身に聞いてもわからないとすれば……。その時ふと彼は、山の神のことを思いつきました。国中の山の 彼は一人うなずいてから、 「いつも御機嫌よろしゅうて、結構でございます」 禿鷹が 「うむ そして[#「うむ そして」はママ]お前のような者がわしの所へ来たのは、何の用か」 「はい、私共は山の上に住んでおりますので、山については何一つ知らないことはありません。がただ一つ、国中でどれが一番高い山だか、それがわからないで困っております。私共にとっては、山は言わば自分の家でありまして、国中で一番高い山は、自分の家の一番 「ああそのことで来たのか」と山の神は言いました。「山の 「はい、どうぞお願いいたします。そして……」 「いやもうよい。山の霊達にはすぐわしが言いきかしてやるから」 二 翌日になると、禿鷹は高い山の上へ飛んでいって、その山の霊にたずねました。 「もしもし、国中で一番高い山はどれですか」 岩の中から山の霊が答えました。 「向こうのだ」 禿鷹は向こうの山に飛んでゆきました。 「もしもし、国中で一番高い山はどれですか」 「向こうのだ」 禿鷹は向こうの山に飛んでゆきました。しかしその山の霊も一番高い山は向こうのだと答えます。そんなふうにして、 「これは困った。山の神に言われたとみえて、どの山もへりくだってばかりいて、向こうのだ。向こうのだ……と言うんじゃあ、いくら聞いてもわかりっこない。そうだ、も一度山の神の所に行ってみよう」 そこで禿鷹は、山の神の所へ飛んで行きました。 「昨日はありがとうございました。おかげで山の 「よろしい」と山の神は言いました。「お前の言う通りに言いきかしておいてやろう。どの山が一番高いか、わしから教えてやってもよいが、今まで山の霊達にたずねたのだから、やはり山の霊達に聞くがよい。山の霊達には、お前の望み通りわしが言いきかしておいてやる」 「どうぞお願いします」 そして禿鷹は喜んで帰ってゆきました。 三 さて翌日になると 「もしもし、国中で一番高い山はどれですか」 するとその山の 「どれだか知らない」 禿鷹は そうなると禿鷹も、山の霊達から聞き出すことはあきらめるほかはありません。それかって、山の神へまた何とか頼みに行くのもしゃくです。はて何かよい 「雷の神なら一番高い山を知っているはずだ。がただ聞いたんでは、 四 禿鷹は翌日、 「今日はよいお天気のようですが、お休みになるのですか」 「そんなことを聞いてどうするのだ」と 「いえ、どうもいたしませんが いつも[#「いたしませんが いつも」はママ]あなたが低い所でばかり雷を鳴らしていらっしゃるので、お疲れになったのじゃないかとおもいまして、へへへ」と 「何だ、低い所でばかり雷を鳴らしてるから疲れる……」 「私共から見ますと、あなたが低い平地の上にばかり雷を鳴らしていらっしゃるのが、 気の短い雷の神は、それを聞いてもうむかっ腹を立てて、いきなり立ち上がりました。 「よし、それではこれから、国中で一番高い山の上に、大空の上から雷を落としてみせるぞ」 「それは結構でございますな。 雷の神がうまく 五 そこで 谷間から遠く低く平地へかけて、ぼーっともやがかかっていまして、その間から方々に、高い山の頂がそびえ立って、きらきらと日に照らされています。 するうちに、いつのまにか、日の光が隠れてしまって、今まで低い 「 そう思って 夕立雲はますます大きく濃くなって、見る見る内に空を隠してゆき大粒の雨がぽつりぽつり落ちてきて、天地がまっ暗な闇に包まれてしまいました。 「さあもうじきだぞ」 そして禿鷹はさらに眼を見張りましたが 岩の[#「見張りましたが 岩の」はママ]影からではよく見えないので、その山の頂の一番高い岩の上に飛び上がって、雨に濡れながら一生懸命になって、どこに雷が落ちるかを見張りました。 雨はもう大降りになり、天地はなお一層暗くものすごくなり、高い雲の中には雷が鳴り始めました。と思うまに、ぴかっと矢のような光がつっ走って 同時に[#「つっ走って 同時に」はママ]天地もくずるるばかりの音がして……とまでは覚えていましたが、それきり 禿鷹が上っていた山こそ国中で一番高い山で、そこに 底本:「豊島与志雄童話集」海鳥社 1990(平成2)年11月27日第1刷発行 入力:kompass 校正:門田裕志、小林繁雄 2006年4月28日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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