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お山の爺さん(おやまのじいさん)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-10-13 6:30:01 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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一 おうさむこさむ やまからこぞうがないてきた なーんとてないてきた さむいとてないてきた。 こういう歌を皆さんはご ある 村から少し離れた山のふもとに、松や おうさむこさむ やまからこぞうがないてきた なーんとてないてきた さむいとてないてきた。 歌っているうちにますますおもしろくなって、しまいに皆は踊り始めました。 ところが、やがてたき火の火が燃えきってゆき、皆は歌うのに声が疲れ、踊るのに けれど、一度では 二 ある日もまた、皆でその遊びに夢中になっていますと、山の方からさっと風が吹いてきて、青い空にゆるく立ち昇っていたたき火の煙が、ゆらゆらと乱れかけるとたんに、高い所で、アハハハ……と大きな笑い声がしました。子供達はびっくりして、歌も踊りも止めて見上げますと、髪の毛のまっ白な 皆は夢でもみたような気がしました。けれども、とにかくお爺さんの姿が煙の中に実際見えたのです。一寸法師の子僧ではなくて人の何倍もある大きな 子供達はそれに元気づきました。そしてやはり毎日のようにそこへ来て、たき火をして遊びました。すると、必ず一度は煙の中に、お爺さんの笑い声が聞こえて姿が見えました。けれどそれはいつも、ほんのちょっとの間だけでした。 「あのお爺さんを煙の中から呼び出して、一緒に遊んでみたいなあ!」と皆は思いました。 そしていろいろ知恵をしぼって、お爺さんを呼び出す そこで、その日はいつもよりたくさんに 「お爺さんはどこから来たの?」 もう消えかけていたお爺さんの姿が、またにわかにはっきりしてきて、やさしい声で返事をしました。 「わしは山から来たのだ」 すると、待ち構えた次の子供が言いました。 「お爺さん、煙の中から出て来てくれない? 一緒に遊ぼうよ」 「そうさね」とお爺さんはちょっと考えるようなきつい顔つきをしました。「いや、まあ止そうよ。わしは山の爺さんで、お前たちと一緒に遊ぶと、お前達が すると今度は、三番目の子供が言いました。 「お爺さん、僕達が火を燃やしてる間は煙の中に残っていてくれない? それともお爺さんは僕達が恐いの?」 「アハハハハハ」とお爺さんは笑いました。「何とかかとか言って、わしを引きとめるつもりだな。だがわしは、いつまでも一つの所にじっとして居れないのだ。そんなにわしを引きとめておきたいなら、わしを そう言うかと思うと、お爺さんの姿はもう消えてしまいました。 子供達は それは容易なことではありませんでした。煙の中にいる姿の見えない人を捕まえるのですから、それこそまったく雲をつかむようなものでした。皆でいろいろ相談したが、よい 三 翌日になって、村の人達がたんぼの仕事に出て行った後で、子供達は皆集まって、大変大きな紙の袋をこしらえました。それを持って、山のふもとの林の所へまいりました。 それで、いつもの通りたき火をしました。けれど、あまりたくさん煙が出ないようにと、 「お爺さんを捕まえた、捕まえた」と言って皆は踊り上がって喜びました。 ところが、袋は大きくふくらんでそこに 皆集まって、大きな お爺さんは、あっけにとられてる子供達を見下ろしながら、笑顔をして言いました。 「お前達はえらいことを考えついた。わしを袋の中へ入れてしまったな。だが、袋の そして、お爺さんの姿は消えてしまいました。 四 子供達は、お爺さんを 翌日になると、子供達は朝早くから起き上がって、皆誘い合わして、胸をどきつかせながら、林の所へやって来ました。するとどうでしょう。林の中一面に 「やあ、たくさんはえてる!」 皆は我を忘れて、林の中に駆け込んで、きのこを取り始めました。ところが不思議なことには、その一つを取ってしまうと、今まではえてたのはもちろんのこと、手に取ったきのこまでが、煙のように消えてなくなりました。 子供達はびっくりして、 「あ、しまった! ありがとうを忘れたからなくなったんだ」 なるほど、きのこを一つ取るごとにありがとうと言わなければならなかったのです。 子僕達は相談しました。お 子供達は悲しくなって、中にはもう涙ぐんでる者さえありました。すると、ある一人が言い出しました。 「お爺さんは怒ってるに違いないや。だけど、お爺さんはおもしろいことが好きだから、皆で何かおもしろいことをして遊ぼうよ。そしたらお爺さんも笑い出して、出て来るかも知れないぜ」 皆はそれに賛成しました。そしておもしろいことを考えつきました。 めいめい、木の枝を切り取って、それを頭に巻きつけました。帯の所にも巻きつけました。手には、美しく きいのこきのこ きんたけぎんたけどこいった おやまのじいさんどこいった きのこのじいさんどこいった でーてこ でーてこう 踊りながら アハハハハハという笑い声がしました。そらッ! と皆振り返って見ると、向こうの茂みの中に、お 「とうとうわしの方が敗けてしまった。お前達はほんとにおもしろい そして 子供達はにわかに悲しくなって、しくしく泣き出しました。すると、どこからか非常に美しい小鳥の声が聞こえてきました。その声が、「きいのこきのこ……」と歌ってるようでした。それを聞いてるうちに、子供達はまた心が楽しくなりました。山の 翌日の朝、皆で、「おうさむこさむ……」や「きいのこきのこ……」などを歌いながら、その林にやって来ますと、一面にきのこがはえていました。けれどもうお爺さんは、歌っても踊っても、決して出て来ませんでした。 ただきのこだけは、その 底本:「豊島与志雄童話集」海鳥社 1990(平成2)年11月27日第1刷発行 入力:kompass 校正:門田裕志、小林繁雄 2006年4月29日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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