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昭和二年の二科会と美術院(しょうわにねんのにかかいとびじゅついん)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006/10/3 8:53:17 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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二科会(カタログ順) ビッシエール。 この人の絵には落ち着いた渋みの奥にエロティックに近い甘さがある。ことしのは少し 新しい人にもおもしろい絵があったが人と画題を忘却した。なんと言っても私には津田、安井二氏の絵を見るのが毎年の秋の楽しみの一つである。 美術院 近ごろの展覧会の日本画にはほとんど興味をなくしてしまった。すべてがただ紙の表面へたんねんに墨と絵の具をすりつけ盛り上げたものとしか感じられない。先日の朝日新聞社の大展覧会でみた ![]() あれだけおおぜいの専門的な研究家が集まってよくもあれほどまでに無意味な これに反して二科会では、まだあまり名の知られてないようなたぶん若い人たちでも、中には西洋人のまねをしている人はあるとしても――ともかくも何かしら魂のはいった絵をかく人が多い。一つは材料の差異によるにしても。 最後に一個の希望として、来年あたりから二科会で日本画も募集する事にしたらおもしろいだろうと思う。ただし従来いわゆる日本画の教養を受けた人は出品の資格がないという事にして――これはコントロールがむつかしいかもしれないが――そうして新しい日本画を募集してみたらどうであろう。その結果はおそらく沈滞した日本画界に画時代的の影響を及ぼすようなものになりはしないか。そうなったら自分も一つやってみようかなどとこのようなたわいもない夢のような事を思うのもやはり美術シーズンの空気に酔わされた影響かもしれない。 勝手なことを書いて礼を失したところが多いと思う。しかし私の悪口は絵に対しての悪口である。名前をあげた限りの「人」に対しては好意と敬愛のほか何物も持っていない事をこの機会に明らかにしておきたい。悪言多罪。 (昭和二年十一月、霊山美術) 底本:「寺田寅彦全集 第四巻」岩波書店 1961(昭和36)年1月7日第1刷発行 初出:「霊山美術」 1927(昭和2)年11月 入力:Cyobirin 校正:浅原庸子 2005年9月21日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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