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火傷した神様(やけどしたかみさま)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-9-26 15:43:29 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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一 その時 伝説にもその神様がどんな その来宮様は、 「ああ 来宮様の眼には、 「こんな、佳い日に、人間どもは、何をあくせくしているのだ」 来宮様はそうそうろうろうとして歩いた。それを見て土地の者は土地の者で、 「今日も来宮様は佳い気もちになって、歩いてらっしゃるが、此の寒いのに、あんな と云う者もあれば、 「そこが酒だよ、酒をめしあがりゃ、寒いも暑いもないさ。酒は天の と云うようなことを云って笑う者もあった。さて来宮様は、土地の人間どもの寒そうな顔をして、あくせくしているのを憐みながら 「ああ、眠い、眠い、眠くてしかたがないぞ」 夢心地になって華表の下まで来たところで、もう一歩も歩かれなくなったので、そのまま其処へころりと寝てしまった。 ちょうどその時、二人の旅人が華表の近くへ来て休んでいたが、あまり寒いので、一方の旅人が、 「どうだ、火を と云うと、一方の旅人も、 「いいだろう」 と云って、さっそく二人で枯枝を集め、腰の 「こりゃ、いかん」 「燃えひろがっては、たいへんだ」 と云って、二人で火を踏み消そうとしたが、火は消えないでみるみる傍の枯草に燃え移り、それから立木に燃え移った。旅人はますますあわてて、木の枝を折って来て叩き消そうとしたが、火はますます燃えひろがるばかりで、手のつけようがなかった。 「こりゃ、いかん、村の者に見つかったら、たいへんだ」 「そうだ、たいへんだ、逃げよう」 二人はしかたなしに逃げて往った。その時来宮様に使われている 「たいへんです、たいへんです、神様、火事です、たいへんです」 と云って 「たいへんです、たいへんです、起きてください、起きてください、神様、火事です、火が燃えつきます、神様」 雉の声がやっと通じたのか、来宮様はううと云うような 「起きてください、火事です、火が燃えつきます、たいへんです」 と叫ぶと、来宮様はやっと眠りからさめかけた。 「うう、うう、ううん」 「ううんじゃありません、火事です、たいへんです、起きてください」 「やかましい、たれだ」 「たれもかれもありません、そんなことを云ってる場合じゃありません、起きてください、たいへんです」 「雉か」 「雉ですから、早く起きてください、たいへんです」 「なにがたいへんだ、そうぞうしい。それより、 「だめです、そんな暢気なことを云ってちゃ、焼け死にます、早く起きてください」 「酒を飲んで焼け死ぬる奴があるか、水を持って来い」 火はもうその時 「早く、早く、早く起きないと、焼け死にます、早く、早く」 「なにを、そんなにあわてるのだ」 来宮様がやっと正気になって、顔をむっつりあげた時には、もう華表は一面の火になっていた。それにはさすがの来宮様も驚いて逃げようとしたが、 そこへ土地の者がかけつけて来て火を消し、来宮様を御殿へ伴れて往っていろいろ介抱したが、 二 その来宮様のいた処は、今の 谷津には温泉があった。私は下田からの乗合自動車に乗った。その途中には共産村として有名な 河津川の口で自動車をおりて、川土手をすこし往くとすぐ谷津であった。その付近は昔の河津の ちょうど 「もし、もし」 と云って呼びとめ、 「このあたりで、何という家がいいのでしょう」 と云うと、女は、 「さあ、何処がいいでしょうね」 と云った。私は女が 「 と云うと、女は、 「 と云った。私はさっそく中津屋へ往くことにして女に 私は中津屋へ入って、まず温泉に入り、それから二階へあがって雑記帳を 「御飯はどういたしましょう」 と云った。私は飯の注文をして、 「ついでに一本持って来てもらおうか」 と云った。 すると女はにやりと笑った。 「お気のどくですが、来宮様のお祭でございますから、旦那は御存じでしょう」 と云った。私は何も知らないので、 「何も知らないが、来宮様のお祭って、なんだい」 と云うと、女はまたにやりと笑って、 「御存じでしょう、旦那は」 と云って、私がしらばくれているような云い方をするので、 「知るものか。なんだい、来宮様がなんだい」 と云うと、女ははじめて私が何も知らないことを知ったのか、 「御存じないですか。来宮様は、お酒が好きで、酒を飲んで、寝ておりますと、火事になって、火が と笑い笑い云った。 「そうかい、そいつはいかんな」 「お気のどくですが、それで、来宮様のお祭には、この土地では、一切酒を飲まないことになっておりますから」 「それじゃ、酒がなくてはいられない者は、どうするのだ」 「その方は、他の村へ往くのですよ」 「そうか、それじゃだめだね、今日は」 「お気のどくですが」 一ぱいやろうと思って楽しみにしていた私も、あきらめるより他にしかたがなかった。 「それじゃ、しかたがない、飯だけ」と云ってから、「しかし、これが 酒ぬきの飯を 底本:「怪奇・伝奇時代小説選集3 新怪談集」春陽文庫、春陽堂書店 1999(平成11)年12月20日第1刷発行 底本の親本:「新怪談集 物語篇」改造社 1938(昭和13)年 入力:Hiroshi_O 校正:noriko saito 2004年9月25日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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