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三輪の麻糸(みわのあさいと)

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数238 更新时间:2006/9/2 5:58:01 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语

底本: 日本の諸国物語
出版社: 講談社学術文庫、講談社
初版発行日: 1983(昭和58)年4月10日
入力に使用: 1983(昭和58)年4月10日第1刷
校正に使用: 1983(昭和58)年4月10日第1刷

 

  一

 むかし神代かみよのころに、大国主命おおくにぬしのみこと幸魂さきみたま奇魂くしみたまかみさまとして、このくにわたっておいでになった大物主命おおものぬしのみことは、のち大和国やまとのくに三輪みわの山におまつられになりました。さて、その山を三輪山みわやまというについて、こういうおはなしつたわっています。
 あるとき大和国やまとのくにに、活玉依姫いくたまよりひめというたいそううつくしいおひめさまがありました。
 この活玉依姫いくたまよりひめところへ、ふとしたことから、毎晩まいばんのように、たいそう気高けだかいりっぱな若者わかものが、いつどこからるともなくたずねてました。そのうちに、とうとう若者わかものは、おひめさまのお婿むこさんになりました。
 もなくおひめさまには子供こどもまれそうになりました。ところで、そのお婿むこさんははじめから、よるおそくては、けないうちに、いつかえるともなくかえってしまうので、おひめさまのほかには、だれもそのかお見知みしったものもありませんし、どこのだれだということは、おひめさますらりませんでした。

     二

 おひめさまのおとうさまとおかあさまは、ふしぎにおもって、どうかしてそのお婿むこさんの正体しょうたい見届みとどけたいとおもいました。そこである日おひめさまにかって、
今夜こんや婿むこさんのまえに、部屋へやにいっぱい赤土あかつちをまいておき。それから麻糸あさいとはりにとおしておいて、お婿むこさんのかえるとき、そっと着物きもののすそにさしておき。」
 といいつけました。
 おひめさまはそのばんいいつけられたとおり、大きな麻糸あさいとたまをお婿むこさんの着物きもののすそにいつけておきました。
 あくるあさると、麻糸あさいとさきはりがついたまま鍵穴かぎあなけて、そとへ出ていました。そして麻糸あさいとかれるにつれて、糸巻いとまきはくるくるとほぐれて、もう部屋へやの中にはたったまわり、になっただけしか、いとのこっていませんでした。
 お婿むこさんが鍵穴かぎあなから出て行ったことが、これでかりましたから、おひめさまはそのいとをたぐりたぐり、どこまでもずんずん行ってみますと、いとはおしまいに三輪山みわやまのおやしろの中にはいって、そこでまっておりました。
 それではじめてお婿むこさんが大物主命おおものぬしのみことでいらっしゃったことがかりました。そしていと三輪みわあとにのこっていたので、その山をも三輪山みわやまぶようになりました。





底本:「日本の諸国物語」講談社学術文庫、講談社
   1983(昭和58)年4月10日第1刷発行
入力:鈴木厚司
校正:大久保ゆう
2003年9月29日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。




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