愛よ、愛 |
メタローグ |
1999(平成11)年5月8日 |
1999(平成11)年5月8日第1刷 |
1999(平成11)年5月8日第1刷 |
西洋人は一体に女性尊重と見做されているが、一概にそうも言い切れない。欧州人の中でも一番女性尊重者は十指の指すところ英国人であるが、英国人の女性尊重は客間だけの女性尊重で、居間へ入ると正反対だという説がある。 事実、英国人ぐらい文筆上で女性に対し諷刺や皮肉を弄し、反感を示している国民は少い。バーナード・ショウの如きも「人と超人」で、女性は魅力に依って男から種の胚子を奪い取り、次の時代の超人を造ろうとする自然の意図を無意識で執行する盲目の使途であるというように書いている。 英国の倶楽部の発達というものが、家庭における主婦の形式的女権の窮屈から逃れようとする男性の自由の欲望から発達したものだという話もある。 そうかと思うと、それほどけばけばしく女性尊重を放送しないフランス人が、家庭は全く主婦の女王の傘下に従順に温まって易々諾々である。フランス人に言わせるとこの方が生活にも人生にも利口なやり方だと言う。 武士道と言えば、女は眼中にないような風に言われながら、正妻となるとなかなか格式を与えて十分な権利を主張せしめている。淀君にうつつを抜かした秀吉が、北の政所に対する態度などにみても相当彼女を立てているところがある。 フェミニストにもいろいろある。全然女性なるものを知らない理想主義風に尊敬するものもあれば、変態的の性格から女性にへりくだるものもある。また「英雄が女性の胸に額をつけるとき、遠き星の囁きを聴く」事業上の霊感の交媒者として女性に神秘を感じ、フェミニストたるものもある。ジョセフィンに対するナポレオンはそれであった。 兎に角真のフェミニストは質的のものだ。女性から言えば、弱々しくフェミニストたらざるを得ない男性より昂然としていても、女性に理解力ある男性の方が見込みがある。
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