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もくねじ(もくねじ)

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数494 更新时间:2006/8/26 6:40:24 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语



   流転るてん


 それから先の話は、あまりしたくない。
 ぼくは二十日、壊れた木箱の下にいた。
 やがて工事場の取片づけが始まって、木箱は部屋から外へはこばれていった。そのあとに、ぼくは、コンクリートのかたまり縄片なわぎれなどと一緒に残っていた。ぼくの身体はもうほこりにまみれて、かつて倉庫番からめちぎられたときのような金色きんいろ光沢こうたくは、もう見ようとしたって見られなかった。全身ぜんしんつやをうしない、変に黄色くなっていた。
 埃と一緒に、ぼくは掃き出された。そして放送所の後庭あとにわに掘ってあるごみ捨て場の方へ持っていかれた。いろんなきたないものと一緒に、じめじめした穴の中に、ぼくは悲惨ひさんな日を送るようになった。身体はだんだんとさびて来た。青い緑青ろくしょうがふきだした。ぼくは自分の身体を見るのがもういやになった。
 思えば、ぼくほど不幸な者はない。こんな不幸に生れついた者が、またとこの世にあるだろうか。ぼくを生んだ人間がうらめしい。もっと気をつけて旋盤せんばんを使ってくれればよかったんだ。
 しかしぼくも途中でちょっぴり幸福を味わったことがあった。それはあの若い職工さんが、くだらない話に夢中になって、僕を放送機のあなに取付けてくれたからだ。あれから、この放送所へ来て、試験が行われている間までは、ぼくはたしかに幸福であったといえる。
 だが、今から考えてみると、それは間違った幸福だった。元々あの若い職工さんが、あやまってぼくを放送機にとりつけたのであった。だからぼくは当然今のようなみじめな境界きょうかい顛落てんらくすることは、始めから分り切っていたのである。間違った幸福をよろこんでいたぼくは、何というばかだったろうか。
 或る日、このごみ捨て場に、舎宅しゃたくの子供たちが三四人で遊びに来た。汚いところだが、子供たちには、たいへん興味のある遊び場であるらしい。子供たちは、みんな女の子であった。ごみの山の上を、あがったりりたりして遊んでいるうちに、一人の鼻たらしの七つ位の子供が、ふとぼくを見つけて、小さなてのひらの上へ拾い上げた。
「いいものがあったわ。これは、きたないけれど、ねじくぎでしょう。お家へ持ってかえって、お母さんにあげるわ。がくをかけるのに釘が欲しいってお母さんいっていたのよ」
 ぼくは、その子供の小さい手に握られていた。そして身体がぽかぽかと温くなった。
「どれ、見せてごらん」
 別の子供がやって来た。ぼくの主人は、小さな掌をひらいた。すると相手が大きな声を出した。
「まあ、きたないねじ釘ね。その青いものは毒なのよ。そんなものを持っていると手がくさるから捨てちゃいなさい」
「まあ……」
 ぼくは、ぽいと捨てられてしまった。そこは所内の通路の上で、雨ふりの日のために、舗装道路ほそうどうろになっていた。ぼくは赤面せきめんした。もう何も考えまい。
 ぼくは目をつぶって死んだようになっていた。が、最後にりっぱな人に拾い上げられた。それはこの放送所の所長さんであった。どうしてこの小さいぼくが見付かったんであろうか。所長さんは、日向ひなたどまって、ぼくをつまみあげ、つくづくと見ていた。
「やれやれ可哀想に、このもくねじは……。生まれながらの出来損できそこないじゃな。ここへ捨てられるまでは、さぞ悲しい目に会ったことじゃろう。おい、もくねじさん。お前はこのままじゃ、どうにもうだつが上らないよ。だからもう一度生れ変ってくることだね。真鍮しんちゅう屑金くずがねとして、もう一度製錬所せいれんじょへ帰って坩堝るつぼの中でお仲間と一緒に身体をかすのだよ。そしてこの次は、りっぱなもくねじになって生れておいで」
 所長さんのやさしい言葉に、ぼくは胸がつまって、泣けて泣けて仕方しかたがなかった。さすがに技術で苦労した所長さんだ。ぼくのような出来損いのもくねじの人生を考えてくださる、この情け深い所長さんの言葉によって、ぼくはこれまでの身を切られるようなつらいことを、一遍いっぺんに忘れてしまった。ああよかった。やがて所長さんは建物の中に入って、ぼくを木箱きばこの中にぽとんと入れた。その箱には「屑金くずがね入れ」と札がかかっていた。





底本:底本:「海野十三全集 第10巻 宇宙戦隊」三一書房
   1991(平成3)年5月31日第1版第1刷発行
初出:「譚海」
   1943(昭和18)年1月
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年11月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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