4
部屋を出ようとするときだった。 ブ、ブ、ブブー。 卓子の裏に取付けたブザーが鳴った。 「ほい。XB4が呼んでいるッ」 弦吾は室内に引返した。壁をポンと開くと嵌めこんだような超短波の電話機があった。 「QX30だ」 「こっちは、XB4だ」と電話機の彼方で小さい声がした「報告があったぞ、いよいよ動員指令が下ったそうだな」 「ウン」 「ところで注意を一つ餞別にする」 「ほほう。ありがとう」 「あの間諜座ね『魚眼レンズ』のついた撮影機で、観客一同の顔つきが何時でも自由自在にとれるんだそうだ。ぬかりはあるまいが、顔色を変えたり、変にキョロキョロしちゃいかん。皆の笑うところでは笑い、皆が澄ましているときには澄ましていなくちゃいかん。いいかね」 「魚眼レンズを使っているのか? よおし、油断はしないぞ」 「義眼を入れたレビュー・ガールの名前をつきとめるんだって、誰にも尋ねちゃ駄目だぞ。敵の密偵は巧妙に化けている。立ち処に殺されちまうぞ」 「ウン、誰にもきかんで、見付けちまおう」 「見付ける方策が立っているのか」 「うんにゃ、そういうわけでもないが、プログラムを探偵すれば、何々子という名前がきっと判るよ」 「それで安心した。じゃ別れるぞ。しっかりやれ、同志QX30!」 「親切有難うよ」 魚眼レンズで観客全部の顔色を覗いているッて――ちえッ、そんなものに引懸られて堪るものかい!
上一页 [1] [2] [3] [4] [5] [6] 下一页 尾页
|