春雨の山しづけさよ重なりて小牛まろぶも寝てあれと思ふ
秋の人
うつら病む春くれがたやわが母は薬に琴を
やはらかにぬる夜ねぬ夜を雨しらず鶯まぜてそぼふる三日
夕顔やこよと祈りしみくるまをたそがれに見る夢ごこちかな
薬草の芽をふく伯父の
ふたたびは
牡丹うゑ君まつ家と
冬の日の
春の水船に
君が妻いとまたまはば京に
ほととぎす海に月てりしろがねのちひさき波に手洗ひをれば
夕ぐれの玉の
冬川は千鳥ぞ
春の雨高野の山におん
うすものや
しら樺の
春の潮遠音ひびきて
御胸にと心はおきぬ運命の何すと更に怖れぬきはに
玉ひかるべにさし指の
夕月夜さくらがなかのそよ風に天女さびたる
いづら行かむ君の
舞ごろも五たり
百とせをかはらぬことは必らずと誓はぬ人を今日も見るかな
秋の路
牡丹いひぬ近うはべらじ身じろぎにうごかばかしこ王冠の珠
わがこころ君を恋ふると高ゆくや親もちひさし道もちひさし
春の雨
秋霧や林のおくのひとつ
よう聞きぬ夢なる人の夢がたりするにも似たる御言葉なれど
君とわれ
召されては
来世とやすててこし日の母の泣く夢を見る子の何をののかむ
みづからは隙なく君を恋ふる間に老いてし髪と誇りも
すそ
人
冬はきぬ
いとかすけく曳くは
七つより
六月の氷まゐりぬ
世に君の
春のかぜ加茂川こえてうたたねの
五六人をなごばかりのはらからの馬車してかへる山ざくら花
森ゆけば
磯松の幹のあひだに大海のいさり船見ゆ
絽の蚊帳の波の色する
月の夜の
春くれては花にとぼしき家ながら恋しき人を見ぬ日しもなき
十余人縁にならびぬ春の月八阪の塔の
水を出でて白蓮さきぬ曙のうすら赤地の世界の中に
わが家や
森かげにならぶ
われひとり見まく
さくら貝遠つ島辺の花ひとつ得つと
みだれ髪君を
かきつばた扇つかへる手のしろき人に夕の歌かかせまし
富士の山浜名の海の
水こえて薄月させる花畑にあやめ
責めますな心にやすきひと時のあらば思はむ
載せてくる玉うつくしき声あると夏の日すみぬわれ
山かげを出しや五人がむらさきの日傘あけたる船のうへかな
春の夜の夢のみたまとわが
傘ふかうさして君ゆくをちかたはうすむらさきにつつじ花さく
わが知らぬ花も咲かむと雑草に春雨まてる
大机
円山や
釣鐘にむら雨ふりぬ
あづまやの水は闇ゆくおとながらひけば柱にほのしろき藤
戸に隠れわと啼く声の
舞ごろも祇園の君と春の夜や自主権現に絵馬うたす人
くれなゐの
美くしき御足のあとに貝よせてやさしき風よ海より来るか
いつの世かまたは相見む知らねどもただごと言ひて別るる君よ
二日ありて百二十里は遠からぬ障子のうちに君を見るかな
蝶のやうにものに口あて
春の月ときは木かこむ山門とさくらのつつむ御塔のなかに
遠浅に
塔見えて橋の
宿乞ひぬ川のあなたは傘さしし雨の
三本木千鳥きくとてひそめきてわれ
橋の下尺をあまさぬひたひたの
石まろぶ音にまじりて
裾野雨負へる石かと児をまどひ
みづうみに濁流おつる夜の音をおそれて寝ねぬ山の雨かな
わが通ひ路
くれなゐの牡丹おちたる
丸木橋おりてゆけなと野がへりの馬に乗る子にものいひにけり
さざなみにゆふだち雲の山のぼる影して暮れぬみづうみの上
草に寝てひるがほ摘みて牧の子がほとゝぎす聴くみちのくの夏
みじろがず
舞姫(まいひめ)
作家录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
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