『
滿が云ふのに続いて皆が
『
『さう。ぢやあいいや。』
と滿は云つた。
『つまらないなあ。』
と健は云ふ。好きでない気質の交つた子だと、鏡子は昔からの感情の
『お湯が沸きましたよ。滿。』
お照が甥を
『あら、叔母さんがもう起きていらしやる。』
鏡子が枕から
『まあ、お休みなさいよ。』
と云つた。滿と健はばたばたと
『どうせ寝られないのだから。』
『昨晩はよくお休みなさいましたか。』
『ちつとも。』
寝くたれ髪が長く垂れて
『
健の泣き出したのを聞いてお照は洗面
鏡子は鏡の
『お照さん、こんな結ひ
と云つて、
『さつぱりとして軽さうですね。』
『けれど
『さう云へばさうですね。
『でもいいわ。今は尼様だわ。』
男の子二人が、
『行つて参ります。』
と云つて
『英さんのおみおつけが別にしてあつた。』
『さうですね。』
お照が立つと、わあつと榮子が泣き出した。
『どうしました。どうしました。お
と云つて襟をくつろげた。榮子は
『まあ
と鏡子は云つたが、心は老いたる処女の心持の方が不可思議でならないのであつた。
『ええ。』
お照はまた
『
と云つた。
『いやだわ。』
と鏡子は反撥的に云つた。そして、
『
かう云ひながら末の出す赤い盆にてつせんの花の
『さあ御飯を食べませう。』
お照は
『ばつたりおだまり。』
と叔母に云はれるのと一緒に声を飲んだ子がをかしくて鏡子は笑ひ出したく思つた。
『あら、叔母さん嘘、お芋のおみおつけだと云つたのに。』
と云つて汁椀の中を箸で掻き廻して居る。
『八つ頭と云つてこれもお芋ですよ。』
と母親が云つた。
『叔母さんは嘘つきですとも。』
と云つたお照は目に涙を溜めて居た。鏡子は京都者の軽い意味で云ふ横着と云ふ言葉が、東京者に悪い感じを与へるのと、東京の人が軽い意でちよくちよく嘘と云ふ言葉を遣ふのが京の人に不快を覚えさすのとは、
『私を見るのが
『ふ、ふ。』
とお照は笑つて、
『榮ちやん、
と云つて居た。
書斎へ来て新聞を見ようとして、自身の事の出て居るのに気が附いた鏡子は、三四種の新聞を
『お早う。』
瑞木が挨拶に来た。花木も晨も来た。
『
お照の声が不意に書斎の隣で起つて、続いてぴしやり、ぴしやりと子の
『いやだあ、しない、しない。』
『これでもか、これでもですか。』
『しないのだ。いやだあ。』
『をばあさん。をばあさん。』
榮子は有らん限りの泣声を立てゝ居る。鏡子は涙を
『瑞木さんと花木さんの幼稚園へ行くのを、母さんは
鏡子は身を起してかう云つた。
『二人で
端木が云つた。
『ぢやあ裏門まで。』
末が赤いめりんすで包んだ
『瑞木さん、花木さん、おはんけちの
お照は二人のクリイム色の帯に白いはんけちを下げて遣つた。
『ありがたう。叔母さん。』
瑞木が云ふと叔母は満足らしい
『いつていらつしやい。』
と云つた。
『叔母さん、行つてまゐります。』
二人は一緒にかう云つて
『さよなら。』
と二人は一緒に云つた。
『もう少し
二人はまた手を取つて歩き出したが、二三
『さよなら。』
と云つた。
帰つてから(かえってから)
作家录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
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