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骸骨の黒穂(がいこつのくろんぼ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-11-9 8:41:42  点击:  切换到繁體中文


       6

 署長は感慨深そうに腕を組んで眼を閉じた。
「成る程のう。それでわかったわい。ツイこの頃までこの筑豊地方に限って、小泥棒こぬすとが一つも居らんじゃった理由わけがわかったわい」
「……ハイ……藤六という奴は余程エライ奴じゃったと見えます」
「そうすると丹波小僧の銀次も、藤六のアトを慕うて来た仲間じゃな」
「いや、違います。丹波小僧は、藤六の処を出て、鍋墨の雁八とも別れてからのち、大阪地方専門の家尻切やじりきりになりましたが、或る処で居直って人を殺したお蔭で、手厳しく追いこくられましたので、チョット商売にオジ気が付きましたものか、飴売に化けてこっちへ流れて来ましたが、偶然に藤六の店に目を付けてみますと、思いがけない藤六が住んでいる。しかもスッカリ耄碌もうろくしている上に、相当の現金をシコ溜めていることがわかりましたので、それこそ悪魔の本性を現わしましてコッソリの一軒屋に忍び込み、藤六の夜食の飯の中へ鼠取薬ねずみとりぐすりか何かを交ぜて、毒殺して後を乗取った……」
「……エッ……そんなら親殺しじゃな」
「ハイ。知らずに殺しました訳で……」
「それでもしからん話じゃ。あの時に診察した医者は誰じゃったな」
「ハイ。この間坑夫と喧嘩して殺されました新入しんにゅうの炭坑医で」
「ウハッ。あの若い医師いしゃか……」
「ハイ。狃染なじみの芸者が風邪を引いているのを過って盛り殺した奴で……」
「……そうかそうか……あの医者にかかっちゃ堪まらん……フムフム。それからドウなった」
「それと知りました藤六の乾児こぶんどもが、皆この直方に集まって来て評議をしました。それが、あの乞食の赤潮で……それから皆で手分けをして、本四国を巡礼しておりました藤六の娘のお花を探し出して、相手が実の兄である事をかくいて、仇討をさせようとした……それを銀次が感付いて、裏を掻いて逃げようとしたのが今度の騒動の原因であったと雁八が申しますので……話の模様を考え合わせてみますと、どうやら雁八が黒幕らしう御座いますが……」
「ウムウム。ようよう経緯すじみちが、わかったようじゃ。彼奴等あいつどもは復讐心が強いでのう」
「道徳観念が普通人と全く違いますようで……」
「……それもある……が……しかし……」
 と云ううちに署長は何やら考え込んだ。いつもの癖で、椅子の中に深く身を沈めると、中禿ちゅうはげの頭を撫で上げながら、自慢の長いひげ自烈度じれったそうにヒネリ上げヒネリさげした。
「フム。それで……自殺の原因は……」
「ハイ。それがで御座います……ソノ……」
 巡査部長は困惑したらしく額の汗を拭いた。
「……わかりませんので……その……僅かの隙に致しました事で……全くその……私どもが狼狽致しましたので……縄を解けば白状すると申しましたので……その……」
「ウムウム。それは聞いちょる。……問題は自殺の原因じゃ。復讐を遂げると直ぐに自殺しよった原因じゃ」
「……………………」
「死に際に何も云わんじゃったか。巡査どもは何も聞かんと云いよったが」
「私は聞きました。皆の衆。すみません……と……」
「皆の衆……その皆の衆というのは山窩の連中に云うたことじゃろう……表の群集の中に怪しい者は居らんじゃったか。様子を見届けに来たような者は……」
「ハッ。それは居らなかった筈……と雁八が申しました。お花という女は、まだ生娘きむすめでは御座いましたが、ナカナカのシッカリ者で、わたし一人でキット親のかたきを討って見せるけに一人も加勢に来る事はならんと云うておりましたそうで……又、誰か仲間が見ておりますれば、警察までかつがれて参りまするうちに、途中でお花を助け出します筈……」
「ウムウム。それは理屈じゃが……しかしお花は、丹波小僧が実の兄という事を、どうかして察しておりはせんじゃったかな」
「イヤ。そんな模様には見受けませんでした。御承知の通りツイ夜明け方の一時間ばかりの間の出来事で御座いますけに……丹波小僧が何もかも先手を打って物を云う間もなく猿轡を噛まして、担いで来たと申しておりましたが……実地検査の結果もその通りのようで……」
「フーム」と署長は考え込んだ。
彼奴あやつどものする事は一から十までサッパリわからん。切支丹と似たり寄ったりじゃ」
「……………」
「ウム。まあえ。それ位のところで調書を作ってくれい。自殺の原因は発狂とでもしておけ。警察の中で人を殺したのじゃからナ……ハッハッ……」
 それから署長は椅子の中で伸び伸びと大欠伸あくびをした。両手を高々と天井に突き伸ばして顔を真赤にした。
「アア……アア……ッと……厄介な奴どもじゃ――」





底本:「夢野久作全集4」ちくま文庫、筑摩書房
   1992(平成4)年9月24日第1刷発行
初出:「オール読物」
   1934(昭和9)年12月号
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2005年9月17日作成
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