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山男の四月(やまおとこのしがつ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-10-29 17:00:34  点击:642  切换到繁體中文

 山男は、金いろのさらのようにし、せなかをかがめて、にしね山のひのき林のなかを、うさぎをねらってあるいていました。
 ところが、兎はとれないで、山鳥がとれたのです。
 それは山鳥が、びっくりして飛びあがるとこへ、山男が両手をちぢめて、鉄砲てっぽうだまのようにからだを投げつけたものですから、山鳥ははんぶんつぶれてしまいました。
 山男は顔をまっ赤にし、大きな口をにやにやまげてよろこんで、そのぐったり首を垂れた山鳥を、ぶらぶらりまわしながら森から出てきました。
 そして日あたりのいい南向きのかれしばの上に、いきなり獲物えものを投げだして、ばさばさの赤い髪毛かみけを指でかきまわしながら、かたを円くしてごろりところびました。
 どこかで小鳥もチッチッとき、かれ草のところどころにやさしく咲いたむらさきいろのかたくりの花もゆれました。
 山男は仰向あおむけになって、あおいああおい空をながめました。お日さまは赤と黄金きんでぶちぶちのやまなしのよう、かれくさのいいにおいがそこらを流れ、すぐうしろの山脈では、雪がこんこんと白い後光をだしているのでした。
あめというものはうまいものだ。天道てんとは飴をうんとこさえているが、なかなかおれにはくれない。)
 山男がこんなことをぼんやり考えていますと、そのみ切った碧いそらをふわふわうるんだ雲が、あてもなく東の方へ飛んで行きました。そこで山男は、のどの遠くの方を、ごろごろならしながら、また考えました。
(ぜんたい雲というものは、風のぐあいで、行ったり来たりぽかっと無くなってみたり、にわかにまたでてきたりするもんだ。そこで雲助とこういうのだ。)
 そのとき山男は、なんだかむやみに足とあたまが軽くなって、逆さまに空気のなかにうかぶような、へんな気もちになりました。もう山男こそ雲助のように、風にながされるのか、ひとりでに飛ぶのか、どこというあてもなく、ふらふらあるいていたのです。
(ところがここは七つ森だ。ちゃんと七っつ、森がある。まつのいっぱい生えてるのもある、坊主ぼうずで黄いろなのもある。そしてここまで来てみると、おれはまもなく町へ行く。町へはいって行くとすれば、化けないとなぐり殺される。)
 山男はひとりでこんなことを言いながら、どうやら一人ひとりまえの木樵きこりのかたちに化けました。そしたらもうすぐ、そこが町の入口だったのです。山男は、まだどうも頭があんまり軽くて、からだのつりあいがよくないとおもいながら、のそのそ町にはいりました。
 入口にはいつもの魚屋があって、塩鮭しおざけのきたないたわらだの、くしゃくしゃになったいわしのつらだのが台にのり、のきには赤ぐろいゆで章魚だこが、五つつるしてありました。その章魚を、もうつくづくと山男はながめたのです。
(あのいぼのある赤いあしのまがりぐあいは、ほんとうにりっぱだ。郡役所の技手ぎての、乗馬ずぼんをはいた足よりまだりっぱだ。こういうものが、海の底の青いくらいところを、大きく眼をあいてはっているのはじっさいえらい。)
 山男はおもわず指をくわえて立ちました。するとちょうどそこを、大きな荷物をしょった、きたない浅黄服あさぎふく支那しな人が、きょろきょろあたりを見まわしながら、通りかかって、いきなり山男の肩をたたいて言いました。
「あなた、支那反物たんものよろしいか。六神丸ろくしんがんたいさんやすい。」
 山男はびっくりしてふりむいて、
「よろしい。」とどなりましたが、あんまりじぶんの声がたかかったために、円いかぎをもち、髪をわけ下駄げたをはいた魚屋の主人や、けらを着た村の人たちが、みんなこっちを見ているのに気がついて、すっかりあわてて急いで手をふりながら、小声で言い直しました。
「いや、そうだない。買う、買う。」
 すると支那人は
「買わない、それ構わない、ちょっと見るだけよろしい。」
と言いながら、背中の荷物をみちのまんなかにおろしました。山男はどうもその支那人のぐちゃぐちゃした赤い眼が、とかげのようでへんにこわくてしかたありませんでした。
 そのうちに支那人は、手ばやく荷物へかけた黄いろの真田紐さなだひもをといてふろしきをひらき、行李こうりふたをとって反物のいちばん上にたくさんならんだ紙箱かみばこの間から、小さな赤い薬瓶くすりびんのようなものをつかみだしました。
(おやおや、あの手の指はずいぶん細いぞ。つめもあんまりとがっているしいよいよこわい。)山男はそっとこうおもいました。
 支那人はそのうちに、まるで小指ぐらいあるガラスのコップを二つ出して、ひとつを山男にわたしました。
「あなた、この薬のむよろしい。毒ない。決して毒ない。のむよろしい。わたしさきのむ。心配ない。わたしビールのむ、お茶のむ。毒のまない。これながいきの薬ある。のむよろしい。」支那人はもうひとりでかぷっとんでしまいました。
 山男はほんとうに呑んでいいだろうかとあたりを見ますと、じぶんはいつか町の中でなく、空のように碧いひろい野原のまんなかに、眼のふちの赤い支那人とたった二人、荷物を間に置いて向かいあって立っているのでした。二人のかげがまっ黒に草に落ちました。
「さあ、のむよろしい。ながいきのくすりある。のむよろしい。」支那人は尖った指をつき出して、しきりにすすめるのでした。山男はあんまり困ってしまって、もう呑んでげてしまおうとおもって、いきなりぷいっとその薬をのみました。するとふしぎなことには、山男はだんだんからだのでこぼこがなくなって、ちぢまって平らになってちいさくなって、よくしらべてみると、どうもいつかちいさな箱のようなものに変って草の上に落ちているらしいのでした。
(やられた、畜生ちくしょう、とうとうやられた、さっきからあんまり爪が尖ってあやしいとおもっていた。畜生、すっかりうまくだまされた。)山男は口惜くやしがってばたばたしようとしましたが、もうただ一箱の小さな六神丸ですからどうにもしかたありませんでした。
 ところが支那人のほうは大よろこびです。ひょいひょいと両脚をかわるがわるあげてとびあがり、ぽんぽんと手で足のうらをたたきました。その音はつづみのように、野原の遠くのほうまでひびきました。
 それから支那人の大きな手が、いきなり山男の眼の前にでてきたとおもうと、山男はふらふらと高いところにのぼり、まもなく荷物のあの紙箱の間におろされました。
 おやおやとおもっているうちに上からばたっと行李の蓋が落ちてきました。それでも日光は行李の目からうつくしくすきとおって見えました。
(とうとう※(「穴かんむり/牛」、第4水準2-83-13)ろうにおれははいった。それでもやっぱり、お日さまは外で照っている。)山男はひとりでこんなことをつぶやいて無理にかなしいのをごまかそうとしました。するとこんどは、急にもっとくらくなりました。
(ははあ、風呂敷ふろしきをかけたな。いよいよ情けないことになった。これから暗い旅になる。)山男はなるべく落ち着いてこう言いました。
 するとおどろいたことは山男のすぐ横でものを言うやつがあるのです。
「おまえさんはどこから来なすったね。」
 山男ははじめぎくっとしましたが、すぐ、
(ははあ、六神丸というものは、みんなおれのようなぐあいに人間が薬で改良されたもんだな。よしよし、)と考えて、
「おれは魚屋の前から来た。」と腹に力を入れて答えました。すると外から支那人がみつくようにどなりました。
「声あまり高い。しずかにするよろしい。」
 山男はさっきから、支那人がむやみにしゃくにさわっていましたので、このときはもう一ぺんにかっとしてしまいました。
「何だと。何をぬかしやがるんだ。どろぼうめ。きさまが町へはいったら、おれはすぐ、この支那人はあやしいやつだとどなってやる。さあどうだ。」

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