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青猫(あおねこ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-10-23 9:13:25  点击:  切换到繁體中文



 緑色の笛

この黄昏の野原のなかを
耳のながい象たちがぞろりぞろりと歩いてゐる。
黄色い夕月が風にゆらいで
あちこちに帽子のやうな草つぱがひらひらする。
さびしいですか お孃さん!
ここに小さな笛があつて その音色は澄んだ緑です。
やさしく歌口うたぐちをお吹きなさい
とうめいなる空にふるへて
あなたの蜃氣樓をよびよせなさい
思慕のはるかな海の方から
ひとつの幻像がしだいにちかづいてくるやうだ。
それはくびのない猫のやうで 墓場の草影にふらふらする
いつそこんな悲しい暮景の中で 私は死んでしまひたいのです。お孃さん!


 寄生蟹のうた

潮みづのつめたくながれて
貝の齒はいたみに齲ばみ酢のやうに溶けてしまつた
ああここにはもはや友だちもない 戀もない
渚にぬれて亡靈のやうな草を見てゐる
その草の根はけむりのなかに白くかすんで
春夜のなまぬるい戀びとの吐息のやうです。
おぼろにみえる沖の方から
船人はふしぎな航海の歌をうたつて 拍子も高く楫の音がきこえてくる。
あやしくもここの磯邊にむらがつて
むらむらとうづ高くもりあがり また影のやうに這ひまはる
それは雲のやうなひとつの心像 さびしい寄生蟹やどかりの幽靈ですよ。


 かなしい囚人

かれらは青ざめたしやつぽをかぶり
うすぐらい尻尾しつぽの先を曳きずつて歩きまはる
そしてみよ そいつの陰鬱なしやべるが泥土ねばつちを掘るではないか。
ああ草の根株は掘つくりかへされ
どこもかしこも曇暗な日ざしがかげつてゐる。
なんといふ退屈な人生だらう
ふしぎな葬式のやうに列をつくつて 大きな建物の影へ出這入りする
この幽靈のやうにさびしい影だ
硝子のぴかぴかするかなしい野外で
どれも青ざめた紙のしやつぽをかぶり
ぞろぞろと蛇の卵のやうにつながつてくる さびしい囚人の群ではないか。


 猫柳

つめたく青ざめた顏のうへに
け高くにほふ優美の月をうかべてゐます
月のはづかしい面影
やさしい言葉であなたの死骸に話しかける。
ああ 露しげく
しつとりとぬれた猫柳 夜風のなかに動いてゐます。
ここをさまよひきたりて
うれしいなさけのかずかずを歌ひつくす
そは人の知らないさびしい情慾 さうして情慾です。
ながれるごとき涙にぬれ
私はくちびるに血潮をぬる
ああ なにといふ戀しさなるぞ
この青ざめた死靈にすがりつきてもてあそぶ
夜風にふかれ
猫柳のかげを暗くさまよふよ そは墓場のやさしい歌ごゑです。


 憂鬱な風景

猫のやうに憂鬱な景色である
さびしい風船はまつすぐに昇つてゆき
りんねるを着た人物がちらちらと居るではないか。
もうとつくにながいあひだ
だれもこんな波止場を思つてみやしない。
さうして荷揚げ機械のばうぜんとしてゐる海角から
いろいろさまざまな生物意識が消えて行つた。
そのうへ帆船には綿が積まれて
それが沖の方でむくむくと考へこんでゐるではないか。
なんと言ひやうもない
身の毛もよだち ぞつとするやうな思ひ出ばかりだ。
ああ神よ もうとりかへすすべもない
さうしてこんなむしばんだ囘想から いつも幼な兒のやうに泣いて居よう。


 野鼠

どこに私らの幸福があるのだらう
泥土でいどの砂を掘れば掘るほど
悲しみはいよいよふかく湧いてくるではないか。
春は幔幕のかげにゆらゆらとして
遠く俥にゆすられながら行つてしまつた。
どこに私らの戀人があるのだらう
ばうばうとした野原に立つて口笛を吹いてみても
もう永遠に空想の娘らは來やしない。
なみだによごれためるとんのづぼんをはいて
私は日傭人ひようとりのやうに歩いてゐる
ああもう希望もない 名譽もない 未來もない。
さうしてとりかへしのつかない悔恨ばかりが
野鼠のやうに走つて行つた。


 五月の死びと

このいきづくりにされたからだは
きれいに しめやかに なまめかしくも彩色されてる
その胸も そのくちも その顏も その腕も
ああ みなどこもしつとりと膏油や刷毛で塗られてゐる。
やさしい五月の死びとよ
わたしは緑金の蛇のやうにのたうちながら
ねばりけのあるものを感觸し
さうして「死」の絨毯に肌身をこすりねりつけた。


 輪※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)と轉生

地獄の鬼がまはす車のやうに
冬の日はごろごろとさびしくまはつて
※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)りんねの小鳥は砂原のかげに死んでしまつた。
ああ こんな陰鬱な季節がつづくあひだ
私は幻の駱駝にのつて
ふらふらとかなしげな旅行にでようとする。
どこにこんな荒寥の地方があるのだらう
年をとつた乞食の群は
いくたりとなく隊列のあとをすぎさつてゆき
禿鷹の屍肉にむらがるやうに
きたない小蟲が燒地やけち穢土ゑどにむらがつてゐる。
なんといふいたましい風物だらう
どこにもくびのながい花が咲いて
それがゆらゆらと動いてゐるのだ
考へることもない かうして暮れがたがちかづくのだらう
戀や孤獨やの一生から
はりあひのない心像も消えてしまつて ほのかに幽靈のやうに見えるばかりだ。
どこを風見のとりが見てゐるのか
冬の日のごろごろと※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)る瘠地の丘で もろこしの葉が吹かれてゐる。


 さびしい來歴

むくむくと肥えふとつて
白くくびれてゐるふしぎな球形の幻像よ
それは耳もない 顏もない つるつるとして空にのぼる野蔦のやうだ
夏雲よ なんたるとりとめのない寂しさだらう
どこにこれといふ信仰もなく たよりに思ふ戀人もありはしない。
わたしは駱駝のやうによろめきながら
椰子の實の日にやけたたねを噛みくだいた。
ああ こんな乞食みたいな生活から
もうなにもかもなくしてしまつた
たうとう風の死んでる野道へきて
もろこしの葉うらにからびてしまつた。
なんといふさびしい自分の來歴だらう。
[#改丁]

閑雅な食慾
[#改ページ]

 怠惰の暦

いくつかの季節はすぎ
もう憂鬱の櫻も白つぽく腐れてしまつた
馬車はごろごろと遠くをはしり
海も 田舍も ひつそりとした空氣の中に眠つてゐる
なんといふ怠惰な日だらう
運命はあとからあとからとかげつてゆき
さびしい病鬱は柳の葉かげにけむつてゐる
もう暦もない 記憶もない
わたしは燕のやうに巣立ちをし さうしてふしぎな風景のはてを翔つてゆかう。
むかしの戀よ 愛する猫よ
わたしはひとつの歌を知つてる
さうして遠い海草の焚けてる空から 爛れるやうな接吻きすを投げよう
ああ このかなしい情熱の外 どんな言葉も知りはしない。


 閑雅な食慾

松林の中を歩いて
あかるい氣分の珈琲店かふえをみた。
遠く市街を離れたところで
だれも訪づれてくるひとさへなく
林間の かくされた 追憶の夢の中の珈琲店かふえである。
をとめは戀戀の羞をふくんで
あけぼののやうに爽快な 別製の皿を運んでくる仕組
私はゆつたりとふほふくを取つて
おむれつ ふらいの類を喰べた。
空には白い雲が浮んで
たいそう閑雅な食慾である。


 馬車の中で

馬車の中で
私はすやすやと眠つてしまつた。
きれいな婦人よ
私をゆり起してくださるな
明るい街燈のちまたをはしり
すずしい緑蔭の田舍をすぎ
いつしか海の匂ひも行手にちかくそよいでゐる。
ああひづめの音もかつかつとして
私はうつつにうつつを追ふ
きれいな婦人よ
旅館の花ざかりなる軒にくるまで
私をゆり起してくださるな。


 青空

    表現詩派

このながい烟筒えんとつ
をんなの圓い腕のやうで
空にによつきり
空は青明な弧球ですが
どこにも重心の支へがない
この全景は象のやうで
妙に膨大の夢をかんじさせる。


 最も原始的な情緒

この密林の奧ふかくに
おほきな護謨ごむ葉樹のしげれるさまは
ふしぎな象の耳のやうだ。
薄闇の濕地にかげをひいて
ぞくぞくと這へる羊齒しだ植物 爬蟲類
蛇 とかげ ゐもり 蛙 さんしようをの類。

白晝まひるのかなしい思慕から
なにをあだむが追憶したか
原始の情緒は雲のやうで
むげんにいとしい愛のやうで
はるかな記憶の彼岸にうかんで
とらへどころもありはしない。


 天候と思想

書生は陰氣な寢臺から
家畜のやうに這ひあがつた
書生は羽織をひつかけ
かれの見る自然へ出かけ突進した。
自然は明るく小綺麗でせいせいとして
そのうへにも匂ひがあつた
森にも 辻にも 賣店にも
どこにも青空がひるがへりて美麗であつた
そんな輕快な天氣に
美麗な自働車かあが 娘等がはしり※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)つた。

わたくし思ふに
思想はなほ天候のやうなものであるか
書生は書物を日向にして
ながく幸福のにほひを嗅いだ。


 笛の音のする里へ行かうよ

俥に乘つてはしつて行くとき
野も 山も ばうばうとして霞んでみえる
柳は風にふきながされ
燕も 歌も ひよ鳥も かすみの中に消えさる
ああ 俥のはしるわだちを透して
ふしぎな ばうばくたる景色を行手にみる
その風光は遠くひらいて
さびしく憂鬱な笛の音を吹き鳴らす
ひとのしのびて耐へがたい情緒である。

このへんてこなる方角をさして行け
春の朧げなる柳のかげで 歌も燕もふきながされ
わたしの俥やさんはいつしんですよ。
[#改丁]

意志と無明
    觀念いでやもしくは心像いめえぢの世界に就いて
[#改ページ]

だまつて道ばたの草を食つてる
みじめな 因果の 宿命の 蒼ざめた馬の影です。

[#改ページ]

 蒼ざめた馬

冬の曇天の 凍りついた天氣の下で
そんなに憂鬱な自然の中で
だまつて道ばたの草を食つてる
みじめな しよんぼりした 宿命の 因果の 蒼ざめた馬の影です
わたしは影の方へうごいて行き
馬の影はわたしを眺めてゐるやうす。

ああはやく動いてそこを去れ
わたしの生涯らいふ映畫幕すくりーんから
すぐに すぐにりさつてこんな幻像を消してしまへ
私の「意志」を信じたいのだ。馬よ!
因果の 宿命の 定法の みじめなる
絶望の凍りついた風景の乾板から
蒼ざめた影を逃走しろ。


 思想は一つの意匠であるか

鬱蒼としげつた森林の樹木のかげで
ひとつの思想を歩ませながら
佛は蒼明の自然を感じた
どんな瞑想をもいきいきとさせ
どんな涅槃にも溶け入るやうな
そんな美しい月夜をみた。

「思想は一つの意匠であるか」
佛は月影を踏み行きながら
かれのやさしい心にたづねた。


 厭やらしい景物

雨のふる間
眺めは白ぼけて
建物 建物 びたびたにぬれ
さみしい荒廢した田舍をみる
そこに感情をくさらして
かれらは馬のやうにくらしてゐた。

私は家の壁をめぐり
家の壁に生える苔をみた
かれらの食物は非常にわるく
精神さへも梅雨じみて居る。

雨のながくふる間
私は退屈な田舍に居て
退屈な自然に漂泊してゐる
薄ちやけた幽靈のやうな影をみた。

私は貧乏を見たのです
このびたびたする雨氣の中に
ずつくり濡れたる 孤獨の 非常に厭やらしいものを見たのです。


 囀鳥

軟風のふく日
暗鬱な思惟しゐにしづみながら
しづかな木立の奧で落葉する路を歩いてゐた。
天氣はさつぱりと晴れて
赤松の梢にたかく囀鳥の騷ぐをみた
愉快な小鳥は胸をはつて
ふたたび情緒の調子をかへた。
ああ 過去の私の鬱陶しい瞑想から 環境から
どうしてけふの情感をひるがへさう
かつてなにものすら失つてゐない
人生においてすら。
人生においてすら 私の失つたのは快適だけだ
ああしかし あまりにひさしく快適を失つてゐる。


 惡い季節

薄暮の疲勞した季節がきた
どこでも室房はうす暗く
慣習のながい疲れをかんずるやうだ
雨は往來にびしよびしよして
貧乏な長屋が竝びてゐる。
こんな季節のながいあひだ
ぼくの生活は落魄して
ひどく窮乏になつてしまつた
家具は一隅に投げ倒され
冬の 埃の 薄命の日ざしのなかで
蠅はぶむぶむと窓に飛んでる。

こんな季節のつづく間
ぼくのさびしい訪間者は
老年の よぼよぼした いつも白粉くさい貴婦人です。
ああ彼女こそ僕の昔の戀人
古ぼけた記憶の かあてんの影をさまよひあるく情慾の影の影だ。

こんな白雨のふつてる間
どこにも新しい信仰はありはしない
詩人はありきたりの思想をうたひ
民衆のふるい傳統は疊の上になやんでゐる
ああこの厭やな天氣
日ざしの鈍い季節。

ぼくの感情を燃え爛すやうな構想は
ああもう どこにだつてありはしない。

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