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コドモのスケッチ帖(コドモのスケッチちょう)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-15 7:28:33  点击:  切换到繁體中文

底本: コドモのスケッチ帖
出版社: 洛陽堂
初版発行日: 1912(明治45)年2月24日
入力に使用: 1912(明治45)年2月24日
校正に使用: 1912(明治45)年2月24日
備考: ※近代デジタルライブラリー(http://kindai.ndl.go.jp/)で公開されている当該書籍画像に基づいて、作業しました。

 

つる

太郎「つるがカアカアつていてるの、あれいてるんですか、おぢさん」
おぢさん「ないてるんぢやない、うれしくてうたつてるんです。ほらあのをすつるがカアつていうとすぐめすつるがカアカアつていうだろう。そら、ね。カア、カアカア、カア、カアカアつてね」
太郎「おかしいなあ、それぢや二疋にひき合奏がつそうしてるんですねえ」
おぢさん「ほうら、またむかうでもはじめた」

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うさぎ

やまの おやまの 兎太郎うさたろさん
まへみヽは   なぜながい。
枇杷びは若葉わかばをたべたので
それゆへおみヽなごござる。

やまの おやまの 兎太郎うさたろさん
なにがそんなにこをござる。
びつくりぐさではないけれど
わたしかぜこをござる。
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へう

太郎「おまへはとら従兄いとこなのかへ」
へう「へ※(二の字点、1-2-22)、まあそんなもんです。これでもむかし兄弟きようだいだつたんですがね。加藤清正公かとうきよまさこう朝鮮征伐ちようせんせいばつにいらしたときわたくし先祖せんぞ道案内みちあんないをしたので、そのおれい清正公きよまさこう紋所もんどころをこうして身体からだへつけてくだすつて代々だい/\まあこうして宝物ほうもつにしてゐるやうなわけですよ」
太郎「なるほどそうかねえ、道理どうり清正きよまさもんとおんなじだとおもつたよ」

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ふくろう

ふくろうなにはぬ。
世界中せかいぢう子供こどもがみんなねむつたとき
月様つきさまなにしてる、お星様ほしさまなにしてる。
よる[#「江」のくずし字、コマ7-右-4]ふくろう
つてるくせになにはない。
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むかし、「う」のおかあさんが子供こどもとき近所きんじよ火事くわじがあつたんで、たべかけてゐたさかなを「うのみ」にしてにげだしたさうです。ほんとだかどうだかりません。うそだとおもつたら先生せんせいいてごらん。先生せんせい御存ごぞんじなかつたら「う」にいてごらんなさい。
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ねこ

黒猫「おまへさんなんざあ器量きりよういし、おとなしいからひと可愛かあいがられて幸福しあはせといふものさ」
斑猫「あらまあ、あんなことを、おなじねこでもをんなになんぞうまれてはつまりませんわ」
黒猫「どうしてなか/\、わたしなんざあ、自分じぶん自分じぶん糊口くちすぎをしなきやあならないんですからやりきれやせんや」
斑猫「それだから結構けつこうですわ。よるなんかでも、あなたは毛色けいろがおくろいからはなあたま御飯粒ごはんつぶをくつつけてくちをあいてゐればねづさんはくろところしろいものがあるのでよろこんでべにるとべられるつていふぢやございませんか。そんなことはとてもわたしたちには出来できませんわ」

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べにすヾめ

ゆき
べにす※[#濁点付きの二の字点、コマ10-右-2]
あか
たべたさに
そつと
いぢらしさ。
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きつね

太郎「おぢさんきつねばかしませんか」
動物園のおぢさん「わたしはまだばかされたことはない」
太郎「おぢさん、このきつねをすめすですか」
おぢさん「さうです」
太郎「それぢや、きつねのお嫁入よめいりときあめりましたか」
おぢさん「このきつねたちは動物園どうぶつゑんるまへにもうよめいりしたのです」

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ぞう

何時いつても
いてゐる。
なにかなしゆて
きやるぞ。
かなしいことはないけれど
うま故郷こけう
なつかしい。
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はと

………たべてもすぐにかへらずに
   ぽつぽぽつぽとないてあそべ………

………いつしよにあそぼとおもへども
   下駄げた足駄あしだぼつちやんに
   あしまれていたいゆへ
   屋根やねのうへからてゐましよ………
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さる

ぴき小猿こざるが「おれのお父様とつちあんはおまへえらいんだぜ、うさぎ喧嘩けんくわをしてつたよ」とひました。するとほか小猿こざるが「おれの父様ちやんはもつとえらいや、おにヶ島しま征伐せいばつにいつたんだもの」「うそだあ、ありやむかしことぢやないか」「うそぢやありませんよだ。それが証拠せうこにはおしりのとこにおほきな刀痕かたなきづがついてらあ」と威張ゐばりました。
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にはとり

にはとり神様かみさま夜明よあけらせること仰付おほせつかつたのがうれしさに、最初さいしよよる、まだお月様つきさまがゆつくりとそらあそびまはつてゐるのに、ときつくつてきました。それで朝日あさひはびつくらしてひがしやまからましたので、お月様つきさまはなごりしいけれどそれきりよるわかれました。それからといふもの、お月様つきさまおこつてれると、にはとりえぬやうにしてしまひました。それで「とりめ」になりました。
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ほつきよく ぐま

ほつきよくぐまの おかしさは
いつきてても  いや/\と
かぶりをつておりまする。
パンをやつても  いイや いや
にくをやつても   いイや いや
かぶりふり/\べました。
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たか

ばあさんの独言ひとりごと「おまへもならば、将軍様せうぐんさま御手おてにとまつて、むかしは、富士ふじ巻狩まきがりなぞしたものだが、いまぢやふくろう一所いつしよにこんなところへか※[#濁点付きの二の字点、コマ17-右-3]んでるのはつらいだろうの。したが、これも時代ときよとあきらめるがいぞ[#「ぞ」は底本では「濁点付き平仮名う」、コマ17-右-5]よ。これさ、うのたかのつて世間せけんくちにか※(二の字点、1-2-22)るではないか、そんなこははせぬものぢや」
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らくだ

太郎「らくだよ らくだ

なんておまへはなまけものなんだろう[#「なんだろう」は底本では「なんだろら」]
のらくら のらくらと一日いちにちなまけてゐるではないか」

らくだ「ぼつちやん。わたしせしめです。

あんまりなまけたのでむかしわたくし先祖せんぞ神様かみさまなぐられまして、ごらんのとほ身体中からだぢうこぶだらけになりました」

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あうむ

ある猟人かりうどが、やま[#ルビの「やま」は底本では「ま」]かりにゆきますと、何処どこからか鸚鵡あうむ啼声なきごゑきこえます。こゑはすれども姿すがたえぬ、猟人かりうど途方とはうにくれて「おまへはどこにゐる」とひますと「わたしはこ※(二の字点、1-2-22)にゐる」とこたへた。猟人かりうどは、その無邪気むじやき鸚鵡あうむ可憐かあいそうにおもつてうたないでつれてかへつて可愛かあいがつてかつてやりました。
するとそのへんんでゐた太郎たらうぢやない、次郎じらうといふ子供こどもが、その鸚鵡あうむぬすんでポツケツトへれました。
猟人かりうど[#ルビの「かりうど」は底本では「りうど」]鸚鵡あうむがゐないので「おまへはどこへいつた」とひますと、鸚鵡あうむ子供こどものポツケツトのなかで「わたしはこ※(二の字点、1-2-22)にゐる」とこたへました。
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しか

鹿しか小川をがはみづなかつて、自分じぶん姿すがたみづうつして
「おれのつのはなんてうつくしいんだらう。だが、このあしほそいことはどうだろう、もすこしふとかつたらなア」と独語ひとりごといつた。そこへ猟人かりうどた。おどろいて鹿しかげだした。ほそあしのおかげではしるわ、はしるわ、よつぽどとほくまでげのびたが、やぶのかげでそのうつくしいつのめがさヽ引掛ひつかかつてとう/\猟人かりうどにつかまつたとさ。
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ライオン

太郎たらうは、エソップのなかの、或時あるときライオンが一疋いつぴきねづみつたら、ねづみが「おぢさんわたいのやうないさなものをいぢめたつてあなたの手柄てがらにもなりますまい」つてつたらライオンは「ハヽヽヽなるほどさうだ」つてゆるしてやつた。するとあるとき、ライオンが猟人かりうどつかまつてしばられたとこへれいねづみて「おぢさん、つといで」とつてしばつたなわ噛切かみきつてやりました。つていふはなし思出おもひだして「おぢさん、ライオンはなれたらねづみでもひませんか」と動物園どうぶつゑんのおぢさんにきました。すると、おぢさんのこたへはこうでした「すぐつちまふ」
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だてう

太郎「だてふはいつもつてばかりゐますが、よるねるときでもたつてますか」
動物園のおぢさん「よるはやつぱりしやがんでねむります」
太郎「ざうつてるんでせう」
おぢさん「い※(二の字点、1-2-22)ざうもすわつてます」

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かば

太郎「おぢさん河馬かばきたないね※[#「江」のくずし字、コマ23-右-1]
おぢさん「なぜさ」
太郎「だつてかはあなからなんだかあかしるるんだもの」
おぢさん「でもあのしるがすきなとりがあるとさ。そのとりると河馬かばはじつとして、あの毛穴けあななか黴菌ばいきんとりがとつてくれるのをまつてゐるんだつてさ。それがそのとり食物しよくもつなのさ」
太郎「きたなとりだなあ、なんていふ
おぢさん「らない」

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キバタン

太郎「おまへは何処どこからたの」
キバタン「印度いんどからました」
太郎「印度いんど黒坊くろんぼばかりゐるのかとおもつたら、おまへのやうなしろとりもゐるのかい」
キバタン「なあに、むかしくろかつたんですが、あんまり太陽たいやうひかりがきついもんですからはげてしまつたんです」

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とら

動物園のおぢさん「あるときしろ夏服なつふく巡査じゆんさが、けんなんかでこのとらをおどかしたことがありました。それからといふものしろふく巡査じゆんさるとおこります」
太郎「おぢさん、とらはよくおぼえてゐますね」
おぢさん「一度いちどそんなことがあるとけつしてわすれません」
太郎「とらきやくむかつて放尿ほうねうしてもおまはりさんはしからないんですか」
おぢさん「とらがおまはりさんをしかります」

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はくてう

おどろきやすい白鳥はくてうよ。
なにをそんなにおどろいてくのだ。
あほんだそらにはなに[#「何」は底本では「河」]もないではないか。
しろよどんだぬまにはなにもゐはしないではないか。

いえ/\。あほそら
あれ、あんな化物雲ばけものくもがとびます。
ふかみづそこに、
あれ、あんなむしひまわつてゐます。
[#改ページ]

くま

太郎「おぢさんくまあはせておがんでるよ」
おぢさん「は※(二の字点、1-2-22)あ、可憐かあいいものだなあ。動物園どうぶつゑんなかでもよるなんかくま一番いちばんよくねむるつてね、嚊声いびきごゑ不忍池しのばずのいけまできこへるつてさ」[#「てさ」」は底本では「てさ」]

[#改ページ]

ペリカン

[#右ページにペリカンの絵と名前があり、本文はなし]





底本:「コドモのスケッチ帖 動物園にて」洛陽堂
   1912(明治45)年2月24日発行
※近代デジタルライブラリー(http://kindai.ndl.go.jp/)で公開されている当該書籍画像に基づいて、作業しました。
※この作品は、最後の「ペリカン」を除いて「見開き右のページに本文、左のページに動物の絵と名前」という構成になっています。このテキストでは左側に書かれている動物名を見出しとしました。
※歴史的仮名遣いから外れた表記、仮名表記の不統一も、底本通り入力しました。
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の旧字を新字にをあらためました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:土屋隆
校正:田中敬三
2005年10月1日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。




●表記について
  • このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。
  • [#…]は、入力者による注を表す記号です。
  • 「くの字点」は「/\」で表しました。
  • 「くの字点」をのぞくJIS X 0213にある文字は、画像化して埋め込みました。
  • この作品には、JIS X 0213にない、以下の文字が用いられています。(数字は、底本中の出現「ページ-行」数。)これらの文字は本文内では「※[#…]」の形で示しました。

    「江」のくずし字    コマ7-右-4、コマ23-右-1
    濁点付きの二の字点    コマ10-右-2、コマ17-右-3


 

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