一
一席申し上げます、是は寛政十一年に、
又「どうも実に
と思って
若「えへ……」
又「
若「
又「何だい貴公は」
若「えへ……御冗談ばかり、遊女屋の
又「遊女屋の若者、成程これは何だね大分左右に遊女屋が見えるが、全盛の所は承知して
若「へえ、只今へえ…御縁の深いことで、あれは手前方のお
又「はア貴公の
若「へえ……楼名、えゝ
又「成程根津で増田屋と申すは大分名高いと聞くが、左様かえ増田屋で今の婦人は」
若「小増と申します」
又「成程増田屋で
若「いえ左様な大した訳でもござりませんが」
又「国から出たてゞ何も知らぬが、何かえ
若「へい/\大概五拾
又「拾匁、随分値は高いが、拾匁出して彼のくらいな美人を寝かそうと起そうと自由にするのだから、実に金銀は大切な物だのう」
若「えへ、まず兎も角もお
又「だが
若「えへ……御存じ様でございましょう、おとぼけなすって、お小さい台は五拾疋でございます、大きい方は百疋で、中には六百文ぐらいのお
又「ふう百疋、成程よい遊女を揚げれば
若「へい召上りませんでも
又「百疋で肴は何のくらいなのが付くな」
若「へ……おとぼけでは困りますな、大概遊女屋の台の物は
又「それは高いじゃアないか、越後の
若「御冗談ばかり仰しゃいます」
又「厄介になろう」
若「有難う存じます、お
「あいー」
とん/\/\と二階へ
婆「おやお
又「初めて、
婆「何でございますねお前さん、
又「左様か、お前は当家の家内かな」
婆「おや厭ですよ、私は二階を廻す者です」
又「なに二階を廻す、この二階を」
婆「あれさ力持じゃアございません、本当に小増さんをお
又「何が苛い、買いたいと思ったから
婆「本当に外で見染めて揚るのは一ばん縁が深いと申します、本当にお堅過ぎますよ、お袴をお取りなさいよ」
と云ううちに小増が出て参りまして、