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若菜集(わかなしゅう)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-11 9:21:08  点击:  切换到繁體中文


   四 高楼たかどの

わかれゆくひとををしむとこよひより
    とほきゆめちにわれやまとはん


   妹

とほきわかれに
    たへかねて
このたかどのに
    のぼるかな

かなしむなかれ
    わがあねよ
たびのころもを
    とゝのへよ

   姉

わかれといへば
    むかしより
このひとのよの
    つねなるを

ながるゝみづを
    ながむれば
ゆめはづかしき
    なみだかな

   妹

したへるひとの
    もとにゆく
きみのうへこそ
    たのしけれ

ふゆやまこえて
    きみゆかば
なにをひかりの
    わがみぞや

   姉

あゝはなとりの
    いろにつけ
ねにつけわれを
    おもへかし

けふわかれては
    いつかまた
あひみるまでの
    いのちかも

   妹

きみがさやけき
    めのいろも
きみくれなゐの
    くちびるも

きみがみどりの
    くろかみも
またいつかみん
    このわかれ

   姉

なれがやさしき
    なぐさめも
なれがたのしき
    うたごゑも

なれがこゝろの
    ことのねも
またいつきかん
    このわかれ

   妹

きみのゆくべき
    やまかはは
おつるなみだに
    みえわかず

そでのしぐれの
    ふゆのひに
きみにおくらん
    はなもがな

   姉

そでにおほへる
    うるはしき
ながかほばせを
    あげよかし

ながくれなゐの
    かほばせに
ながるゝなみだ
    われはぬぐはん

  をさ

梭の音を聞くべき人は今いづこ
心を糸によりめて
涙ににじむ木綿もめん
やぶれし※(「窗/心」、第3水準1-89-54)まどに身をなげて
暮れ行く空をながむれば
ねぐらに急ぐ村鴉むらがらす
つれにはなれて飛ぶ一羽
あとを慕ふてかあ/\と

  かもめ

波に生れて波に死ぬ
なさけの海のかもめどり
恋の激浪おほなみたちさわぎ
夢むすぶべきひまもなし

くらうしほの驚きて
流れて帰るわだつみの
鳥の行衛ゆくへも見えわかぬ
波にうきねのかもめどり

  流星

かどにたちでたゞひとり
人待ち顔のさみしさに
ゆふべの空をながむれば
雲の宿りも捨てはてて
何かこひしき人の世に
流れて落つる星一つ

  君と遊ばん

君と遊ばん夏の夜の
青葉の影の下すゞみ
短かき夢は結ばずも
せめてこよひは歌へかし

雲となりまた雨となる
昼のうれひはたえずとも
星の光をかぞへ見よ
たのしみのかずは尽きじ

夢かうつゝかあまがは
星に仮寝の織姫の
ひゞきもすみてこひわたる
をさ遠音とほねを聞かめやも

  昼の夢

花橘はなたちばなそで
みめうるはしきをとめごは
真昼まひるに夢を見てしより
さめて忘るゝ夜のならひ
白日まひるの夢のなぞもかく
忘れがたくはありけるものか

ゆめと知りせばなまなかに
さめざらましを世にでて
うらわかぐさのうらわかみ
何をか夢の名残ぞと
問はゞ答へん目さめては
熱き涙のかわく間もなし

  東西南北

男ごころをたとふれば
つよくもくさをふくかぜか
もとよりかぜのみにしあれば
きのふは東けふは西

女ごころをたとふれば
かぜにふかるゝくさなれや
もとよりくさのみにしあれば
きのふは南けふは北

  懐古

あま河原かはらにやほよろづ
ちよろづ神のかんつどひ
つどひいませしあめつちの
はじめのときをたれか知る

それ大神おほがみ天雲あまぐも
八重かきわけて行くごとく
野の鳥ぞ東路あづまぢ
碓氷うすひの山にのぼりゆき

日は照らせども影ぞなき
吾妻あがつまはやとこひなきて
熱き涙をそゝぎてし
みことの夢は跡も無し

大和やまとの国の高市たかいち
雷山いかづちやま御幸みゆきして
天雲あまぐものへにいほりせる
御輦くるまのひゞき今いづこ

目をめぐらせばさゞ波や
志賀の都は荒れにしと
むかしを思ふ歌人うたひと
澄めるうらみをなにかせん

春はかすめる高台たかどの
のぼりて見ればけぶり立つ
民のかまどのながめさへ
消えてあとなき雲に入る

冬はしぐるゝ九重ここのへ
大宮内のともしびや
さむさは雪に凍る夜の
たつのころもはいろもなし

むかしは遠き船いくさ
人の血潮ちしほの流るとも
今はむなしきわだつみの
まん/\としてきはみなし

むかしはひろき関が原
つるぎに夢を争へど
今はさびしき草のみぞ
ばう/\としてはてもなき

われいま秋の野にいでて
奥山おくやま高くのぼり行き
都のかたを眺むれば
あゝあゝ熱きなみだかな

  白壁しらかべ

たれかしるらん花ちかき
高楼たかどのわれはのぼりゆき
みだれて熱きくるしみを
うつしいでけり白壁に

つばにしるせし文字なれば
ひとしれずこそ乾きけれ
あゝあゝ白き白壁に
わがうれひありなみだあり

  四つのそで

をとこの気息いきのやはらかき
お夏の髪にかゝるとき
をとこの早きためいきの
あられのごとくはしるとき

をとこの熱き手のひら
お夏の手にも触るゝとき
をとこの涙ながれいで
お夏の袖にかゝるとき

をとこの黒き目のいろの
お夏の胸に映るとき
をとこのあか口唇くちびる
お夏の口にもゆるとき

人こそしらね嗚呼ああ恋の
ふたりの身より流れいで
げにこがるれど慕へども
やむときもなき清十郎

  天馬

   序

おいわかきしかたに
ふみに照らせどまれらなる
しきためしは箱根山
弥生やよひの末のゆふまぐれ
南のあまをいでて
よな/\北の宿に行く
血の深紅くれなゐの星の影
かたくななりし男さへ
星の光を眼に見ては
身にふりかゝる凶禍まがごと
天のしるしとうたがへり
総鳴そうなきに鳴くうぐひす
にほひいでたる声をあげ
さへづり狂ふをきけば
げにめづらしき春の歌
春を得知らぬ処女をとめさへ
かのうぐひすのひとこゑに
枕の紙のしめりきて
人なつかしきおもひあり
まだ時ならぬ白百合の
まがきの陰にさける見て
九十九つくもおきなうつし世の
こゝろの慾の夢を恋ひ
をだにきかぬ雛鶴ひなづる
のき榎樹えのきに来て鳴けば
寝覚ねざめ老嫗おうな後の世の
花のうてなに泣きまどふ
空にかゝれる星のいろ
春さきかへる夏花なつはな
これわざはひにあらずして
よしやしるしといへるあり
なにを酔ひ鳴く春鳥はるどり
なにを告げくる鶴の声
それ鳥のうらなひて
よろこびありと祝ふあり
高きひじりのこの村に
声をあげさせたまふらん
世を傾けむ麗人よきひと
茂れるしづ春草はるぐさ
いでたまふかとのゝしれど
誰かしるらん新星にひぼし
まことの北をさししめし
さみしきあしみづうみ
沈める水につるとき
名もなき賤の片びさし
春の夜風の音を絶え
村の南のかたほとり
その夜生れしの馬は
流るゝ水の藍染あゐぞめ
青毛あをげやさしき姿なり
北に生れしの馬の
栗毛にまじる紫は
色あけぼのの春霞
光をまとふ風情ふぜいあり
星のひかりもをさまりて
うはさに残る鶴の音や
啼く鶯に花ちれば
嗚呼この村に生れてし
馬のありとや問ふ人もなし

   雄馬をうま

あな天雲あまぐもにともなはれ
緑の髪をうちふるひ
雄馬は人にしたがひて
箱根のみねくだりけり
胸はをどりて八百潮やほじほ
かの蒼溟わだつみに湧くごとく
のどはよせくる春濤はるなみ
飲めどもかわく風情あり
目はひさかたの朝の星
睫毛まつげは草の浅緑あさみどり
うるほひ光る眼瞳ひとみには
千里ちさとほかもほがらにて
東に照らし西に入る
天つみそらを渡る日の
朝日夕日の行衛ゆくへさへ
雲の絶間に極むらん
二つの耳をたとふれば
いとかすかなる朝風に
そよげる草の葉のごとく
ひづめの音をたとふれば
紫金しこんの色のやきがねを
高くもたたく響あり
狂へば長きたてがみ
うちふりうちふる乱れ髪
燃えてはめぐる血のしほ
流れてをどる春の海
くれなゐの光には
火炎ほのほ気息いきもあらだちて
深くも遠き嘶声いななき
大神おほがみの住むうつばり
ちりを動かす力あり
あゝ朝鳥あさとりの音をきゝて
富士の高根の雪に鳴き
夕つげわたる鳥の音に
木曽の御嶽みたけいはを越え
かの青雲あをぐもいななきて
そらよりそら電影いなづま
光の末に隠るべき
雄馬の身にてありながら
なさけもあつくなつかしき
主人あるじのあとをとめくれば
箱根も遠し三井寺や
日もあたたかに花深く
さゝなみ青き湖の
岸の此彼こちごち草を行く
天の雄馬のすがたをば
誰かは思ひ誰か知る
しらずや人の天雲あまぐも
歩むためしはあるものを
天馬のりて大土おほつち
歩むためしのなからめや
見よ藤の葉の影深く
岸の若草にいでて
春花に酔ふちょうの夢
そのかげをむ雄馬には
一つのあか春花はるはな
見えざる神の宿やどりあり
一つうつろふ野の色に
つきせぬ天のうれひあり
嗚呼鷲鷹わしたかの飛ぶ道に
高くかかれる大空の
無限むげんつるに触れて鳴り
男神をがみ女神めがみたはむれて
照る日の影の雲に鳴き
空に流るゝ満潮みちしほ
飲みつくすともかわくべき
天馬よなれが身を持ちて
鳥のきてにほの海
花橘はなたちばなの蔭を
その姿こそ雄々しけれ

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