您现在的位置: 贯通日本 >> 作家 >> 幸田 露伴 >> 正文

風流仏(ふうりゅうぶつ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-4 10:06:46  点击:  切换到繁體中文

底本: 日本の文学3 五重塔・運命
出版社: ほるぷ出版
初版発行日: 1985(昭和60)年2月1日
入力に使用: 1985(昭和60)年2月1日初版第1刷
校正に使用: 1985(昭和60)年2月1日初版第1刷


底本の親本: 風流仏
出版社: 吉岡書籍店
初版発行日: 1889(明治22)年9月

 

  発端ほったん 如是我聞にょぜがもん

      上 一向いっこう専念の修業幾年いくねん

 三尊さんぞん四天王十二童子十六羅漢らかんさては五百羅漢、までを胸中におさめてなた小刀こがたなに彫り浮かべる腕前に、運慶うんけいらぬひと讃歎さんだんすれども鳥仏師とりぶっし知る身の心はずかしく、其道そのみちに志すこと深きにつけておのがわざの足らざるを恨み、ここ日本美術国に生れながら今の世に飛騨ひだ工匠たくみなしとわせん事残念なり、珠運しゅうん命の有らん限りは及ばぬ力の及ぶケを尽してせめては我がすきの心に満足さすべく、かつ石膏せっこう細工の鼻高き唐人とうじんめに下目しためで見られし鬱憤うっぷんの幾分をらすべしと、可愛かわいや一向専念の誓を嵯峨さが釈迦しゃかたてし男、とし何歳いくつぞ二十一の春これより風は嵐山らんざんかすみをなぐってはらわた断つ俳諧師はいかいしが、ちょうになれ/\と祈る落花のおもしろきをもながむる事なくて、見ぬ天竺てんじくの何の花、彫りかけて永き日の入相いりあいの鐘にかなしむ程かたまっては、白雨ゆうだち三条四条の塵埃ほこりを洗って小石のおもてはまだ乾かぬに、空さりげなく澄める月の影宿す清水しみずに、うり浸して食いつゝ歯牙香しがこうと詩人の洒落しゃれる川原の夕涼み快きをも余所よそになし、いたずらにかきをからみし夕顔の暮れ残るを見ながら白檀びゃくだんの切りくず蚊遣かやりにきて是も余徳とありがたかるこそおかしけれ。顔の色を林間の紅葉もみじに争いて酒に暖めらるゝ風流の仲間にもらず、硝子ガラス越しの雪見に昆布こんぶ蒲団ふとんにしての湯豆腐をすいがる徒党にも加わらねば、まして島原しまばら祇園ぎおん艶色えんしょくには横眼よこめつかトつせず、おのが手作りの弁天様によだれ流して余念なくれ込み、こと三味線しゃみせんのあじな小歌こうたききもせねど、夢のうちには緊那羅神きんならじんの声を耳にするまでの熱心、あわれ毘首竭摩びしゅかつま魂魄こんぱくも乗り移らでやあるべき。かくて三年みとせばかり浮世を驀直まっすぐに渡りゆかれければ、勤むるに追付く悪魔は無き道理、殊さら幼少よりそなわっての稟賦うまれつき、雪をまろめて達摩だるまつくり大根をりてうそどりの形を写しゝにさえ、しばしば人を驚かせしに、修業の功をつみし上、憤発ふんぱつの勇を加えしなればさえし腕は愈々いよいよえ鋭きとういよいよ鋭く、七歳の初発心しょほっしん二十四の暁に成道じょうどうして師匠もこれまでなりと許すに珠運はたちまち思い立ち独身者ひとりものの気楽さ親譲りの家財を売ってのけ、いざや奈良鎌倉日光に昔の工匠たくみが跡わんと少しばかりの道具を肩にし、草鞋わらじひもの結いなれで度々解くるを笑われながら、物のあわれも是よりぞ知る旅。

      下 苦労は知らず勉強の徳

 汽車もある世に、さりとては修業する身の痛ましや、菅笠すげがさは街道のほこりに赤うなって肌着はだぎ風呂場ふろばしらみを避け得ず、春の日永きなわてに疲れてはちょううら/\と飛ぶに翼うらやましく、秋の夜はさびしき床に寝覚ねざめて、隣りの歯ぎしみに魂を驚かす。旅路のなさけなき事、風吹きすさみ熱砂顔にぶつかる時ふさぎてあゆめば、邪見じゃけん喇叭らっぱけろがら/\の馬車にきもちゞみあがり、雨降りしきりては新道しんどうのさくれ石足をむに生爪なまづめはがし悩むを胴慾どうよくの車夫法外のむさぼり、なおも並木で五割酒銭さかては天下の法だとゆする、あだもなさけも一日限りの、人情は薄き掛け蒲団ぶとん襟首えりくびさむく、待遇もてなしひややかひらうち蒟蒻こんにゃく黒し。珠運しゅうんもとよりまずしきにはれても、加茂川かもがわの水柔らかなる所に生長おいたちはじめて野越え山越えのつらきを覚えし草枕くさまくら、露に湿しめりて心細き夢おぼつかなくも馴れし都の空をめぐるに無残や郭公ほととぎすまちもせぬ耳に眠りを切って罅隙すきまに、我はがおの明星光りきらめくうら悲しさ、あるは柳散りきりおちて無常身にしみる野寺の鐘、つく/″\命は森林もりを縫う稲妻のいと続き難き者と観ずるにつけても志願を遂ぐる道遠しと意馬いばむち打ち励ましつ、ようやく東海道の名刹めいさつ古社に神像木仏はり欄間らんまの彫りまで見巡みめぐりて鎌倉東京日光も見たり、是より最後のたのしみは奈良じゃと急ぎ登り行く碓氷峠うすいとうげの冬最中もなか、雪たけありてすそ寒き浅間あさま下ろしのはげしきにめげずおくせず、名に高き和田わだ塩尻しおじり藁沓わらぐつの底に踏みにじり、木曾路きそじに入りて日照山ひでりやま桟橋かけはし寝覚ねざめ後になし須原すはら宿しゅくつきにけり。


[#改ページ]


[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] 下一页  尾页


 

作家录入:贯通日本语    责任编辑:贯通日本语 

  • 上一篇作家:

  • 下一篇作家:
  •  
     
     
    网友评论:(只显示最新10条。评论内容只代表网友观点,与本站立场无关!)
     

    没有任何图片作家

    广告

    广告