小熊(7)それを夢みる
君の夢を私がみる、
私の夢を君がみたまへ、
現実の毒素的な寝台の上でも
われわれの肉体は腐らない、
われわれの真理はカビない、
愚劣な堪へ難い夜よ、
早く明け放れてしまへ、
ひきちぎれ
消極的なにがにがしい、
苦悶のヒダ飾りの
灰色のカーテンを、
他人の手を待つ必要はない
我々のすぐ手のとどくところから
我々の手をもつてそれを行動しよう
雷(8) 心配しねえ
心配しねえ
夢みよ
その真実な夢を。
いや、それのみならず
又、夢からメザマし
大胆で
飛びかかつて来る
虎狼の耳朶を掴んで
そいつの背にまたがつて
腹までにしつかりと挾む。
それから、拳固で
そいつの頭を打ちつぶす、
山山に 野原に
我々のコルホーズを
ひろげよう
大地の涯までに。
小熊(9)幸福な土地への強烈なあこがれよ、
堪へ難い日常生活を
行動への魅力で
救済しようとする
単なる魅力として終るか、
新しい前進の現実を
具体的に土の上に建てるか、
直接クワをふるふか
クワをながめてゐるか、
暗い朝を紫の帯をひいて
雲が走つてゆく、
そして農夫のコーラスは
どこからともなくきこえてくる
作品第二番 三十一日夜
雷(1) 我々は
不同の血液で
共同の敵を爆炸する
炸弾をつくる
不同の言葉で
あらゆる民族の城池を
吹きつぶす颱風を
呼び起さう
統一的なイデオロギーを
もつて自衛し
最も妙な戦術を
もつて攻襲する
我々は世界矛盾
白熱化の焦点に
総爆発する火力を
強く準備する
まるで火事後に
新しい建設を準備するやうに。
小熊(2)同じからざる敵を
同じからざる味方をもつて迎へ撃つ、
炸弾は個性的に
跳ねとぶだらう、
確固不動の
精神に前進を命じよう、
濶達な青年として
たたかふ場所は広い、
撃たれるものも
撃つものも豊富である。
豊富とは美である。
そして地球は丸い
敵味方で充実してゐる、
そこに混迷も暗黒も漂泊も待つてゐる
雷(3) 私はルンペン詩人になりたい
鉄砲のやうなペンを背負つて
到る処へ狩猟し游撃する
弾丸の痕――字の跡で
悪魔を駆立つ符を綴り
自覚せる人間の眼をめざまして
暗夜の悪夢から
真昼の憧れへと
一歩/\に正しい現実の途を
踏みしめて
生きるための闘ひをさせなければならん、
私もいづれかの隊の中に
前に立てば
旗手になり
後に守れば
ラッパになる
戦後に私の屍を見えなければ
毎度慶祝記念会の台上に
私の歌を聞えるだらう。
小熊(4)鼓膜よ、
われわれの耳よ、
さわがしい人生に
答へてくれるお前よ、
砲弾の中の歌は
どんなにお前をふるはすか、
感動をもつてわれらの耳は
ウサギ馬のやうに敏感だ、
やさしい暁の憧憬者は
たつたいま暗夜の叢の中から
とびだしたばかりだ、
そして友よ、君の弾に
私のウサギ馬は撃たる
君の真実に――、
そして倒れる、
そして蘇生する、
そして君を乗せて共同の路を走りだす、
雷(5) 私と君
いや、私達と
無数の勤労大衆に
無条件的に
そして必然的に
親善と合作をする事は出来る
しかし強盗は
ある家の主との犬に
親善と合作をするといふのは
匕首を出す前に
屈服せるうまい訂約だ、
我々は 見よ
外の強盗らは
この強盗をにらみながら、
ピストルを持ち上げて
その家の窓へか
門へかと
忍び込まうとするのだ。
小熊(6)解放されたところ
そこには何の
戸締りもない、
自由よ
門よ、
柔軟な開閉よ
そこへの侵入者は呪はれる
そこからの進発者は
にぎやかに送別される、
雷(7) 静かに 静かに
豚のやうに
馴良であれ
こんな教訓を
頷づく者が多い
だけど我々は
聴かない、そして
抗議する
更に反対な行動がする
我々は四足の獣でもなければ
両足の禽でもないだから
又、我々は
時代の尖端に
最も強い闘ひと
最も大きな創造を
自任する者を
示さねばならぬ。
小熊(8)人間の行ひ為すことの
一切を肯定しようとする
恐ろしい考へ方のために
われわれは敵に
奇襲される
そして時には敗北する
ただそれを悔いないだけだ、
幾度も襲はれ
幾度も敗れ、幾度も勝つ、
この繰り返しの敢行よ、
なぜ後悔しないか、
それは新しい道徳のために
奉仕することができるためだ、
古い道徳に
新しい道徳を対比せよ。
作品第三番 九月二日
雷(1) 精神の圧迫されることは
肉体の笞撻されるよりも
苦しみを私はよく感ずる
だが、私は屈服の奴隷ではない
若し異郷に客死せねば
或ひは旅嚢を背負つて
どこへも渡つて行かれるならば
行動の自由によつて
種種の太鼓を敲く、
その太鼓の音に
数知れず群衆の
吶喊を昂揚させる。
若しも行動の自由を
奪はれたなら
歯切に拳固で
最後の決闘をやる。
小熊(2)太鼓の打撃の快感よ、
打ち、打つ、
我々のありあはせの心臓へ、
我々のもちあはせの
イデオロギーといふ鞭を加へる、
尊大ではなく自信をもつて卑俗ではなく
普遍化された
真実の打楽器さ、
とほく歴史の空間をかけまはる
われわれの行動の時間化よ、
たたかひの速度よ
雷(3) 生命のレールをはかつてはしない
だけど一秒の生命力を
流線型以上のスピードで
人間の広幅にひろげて発揮したい
君よ 君の馬を
絶えず飛び駈けつつ
私も飛行機を駕御しようとするのだ。
しかし忘れてはいけぬ
君の大刀と
私の機関銃を
用意することをこそ!
小熊(4)客死か旅かといふ
君の決意のために祝盃をあげる
異邦人たちの精神は
寄り集まつて策謀してゐる、
もつとも夢多い東洋の
樹木の下にあつて
現実的な花を論じ
はげしい結実を論ずる
反逆の旅嚢は肥える許りだ、
転々山をのぼり、谷を下る
村落の上と、都会の上と
軌道を行く太陽と同様に
はげしい旅愁を味つてゐる
精神や肉体の笞刑は
歴史と共に若者達の
貧しい生活の上に加へられてた、
雷(5) 神よ鬼よ
お前達の実体の存在を
われわれは否定する
我々は無神論者であり
又唯物論者である
然るにおまへ達が
人間の霊魂を統制する
一種の工具になされることを
歴史的な怪物として知られる、
そして科学によつて、
それにひかれる観念を打破しようと
人間の霊魂を
迷信的幻想から
引き出して
現実的理想へ
押し進ませようと
保証がある手段で努力する。
小熊(6)人間の思惟の世界での
可能なことは
すべて人間の手で
可能化されなければならない、
真理を信奉するものに栄誉あれ、
現実を愛する現実主義者よ、
土壌のために春は訪れた、
春のために河は、水は、流れた
理想の船の弛ゆみなく
海へ至る路よ、
喧騒をも擾騒をも怖れない
雷(7) サイレンを吹け
唾沫を飛ばせ
勇しくて
整然たる歩伐で出発し
驚かす行動のシグナルを示す、
又、あらゆる同伴者を動員して
戦線を固める
プロレタリア詩人よ
わが詩の行路を
ひらかせ!
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